確かな否定論Ⅱ
三階に上がると一気に
ほとんどの教室が施錠され、教室の中は暗く誰もいない教室がほとんどだった。
そんな中、耳を澄ますと奥の方から微かなピアノの旋律が聞こえてきた。途切れることのない永遠に響いていそうな綺麗な音色。わたしは一直線に奥にある音楽室に向かって進みだした。音楽室の近くまでくるとかなり広い教室だった。窓の中からチラリと中を見ると席やイスは綺麗にかたずけられていて前の方に大きなグランドピアノがあった。そして音楽室の前の方に近づいていくと、ピアノに誰かが座っていた。きちっとした少しグラデーションのかかった水色のブレザータイプの制服を着た、灰色の髪を三つ編みに編んでいる少女だった。見た目はまるで氷のような透明感のある綺麗な感じだった。扉を開けようとした途端、ピアノの音色が勢いある旋律に変わって彼女の指先は鍵盤を必死に弾いていた。その様子にわたしは手を止めてしまい、扉から少し離れ曲が終わるのを壁にもたれながら静かに待っていた。
なんとなく終わるころかなと思い、わたしは再び扉に近づいた。そうすると音は止み、静かになった。そしてわたしは静かに扉を開いた。微かに音楽室内に扉を開けた音が響いた。そして目の前の少女はビクッと驚いて、手に取っていた楽譜を床に落としてしまった。床にしゃがみこみ慌てて楽譜を拾うのを見て手伝おうと思い、近づくと声をあげて叫んだ。
「来ないでっ!近づいたらわたしの氷であなたに穴をあけるんだから」
と目をウルウルさせながら涙をこらえてわたしに向かって言ってきた。
「え、いや・・・手伝おうかと思って」
そういうと彼女は楽譜を床の上でまとめだし、一気に抱きしめた。
「いらない、とっととここから出て行って」
「あっわたし、あなたに渡さなきゃいけないものがあって」
焦りながら声をかけ続け、鞄から琴音ちゃんにもらったプリントを出そうとした途端
「そんなの・・・ないっ!」
涙を流しながら、勢いよく彼女はわたしを睨み付けながら大きく叫んだ。
そして彼女の制服がボゥっと光り輝いてきて、導着に変わりだし、耳に付けているピアスが微かに一瞬光るとともに魔法を発動させた。
「アイシクルっ」
その瞬間、彼女の周りに小さな魔法陣が五つ発生し冷気のようなものが集まりだした。音楽室は急にひんやりと冷え始めた。そして魔法陣の前に鋭くとがった氷の結晶・・・まるで氷柱のようなものが出来上がった。
そしてわたしに向かって発射された。わたしはまたっと心の中で困り、さっきの結界のことを思い出してしまい足がすくんでしまった。
そして当たるっと思った瞬間、わたしの隣を紫色に光る細長い何かが横切った。そして勢いよく氷に衝突し粉砕された。わたしはその場の衝撃に地面に座りこけてしまった。
「うわっ・・・いた」
そして足元を見ると、見たことのある靴が目に入りわたしは顔を上げた。
そこにはため息を深くついた琴音ちゃんが呆れた顔をして目の前にいる彼女を見ていた。
「氷柱、何してるの・・・?」
「うぇ・・・琴音、なんでいるの」
琴音ちゃんとのいきなりの衝突で目の前の彼女は驚き、魔法陣が消え制服も元に戻った。そして目をそらした。
その姿に琴音ちゃんは近づき、おでこにでこピンをして言った。
「どうして攻撃したの、理架に謝りなさい」
わたしを見て琴音ちゃんはそう言った。その言葉に少し不機嫌そうな顔をしてわたしに近づいてきた。
「ごめんなさい」
小さな謝罪だけど、気持ちは伝わった。なので、わたしは笑顔で挨拶をした。
「こちらこそさっきはごめんね。わたし藤咲 理架って言います、よろしくね」
その言葉に少し驚いた顔をして、恥ずかしそうにしながら琴音ちゃんの後ろに隠れてしまい顔を少しのぞかせて、わたしの目をじっと見て少し照れくさそうに
「その・・・プランセース一年の倉科 氷柱・・・です。よろしく」
と、少しだけ頭を下げて言ってくれた。
可愛らしい態度にわたしはつい、にやけてしまった。その後わたしたちは他愛もない会話を少しして、寮に向かった。
氷柱ちゃんは話してみると、凄く口下手で人見知りの激しい子だった。誰かとすれ違うときは常に下を向き、存在感を消しているような感じだった。だけど、わたしが琴音ちゃんと仲がいいことを知ると良い人?と思ってくれたのか、先輩と言って少しだけ慕ってくれるようになった。
「藤咲先輩、部屋隣同士なんですかっうれしいです。是非、今度ちゃんとわたしのピアノの演奏聴きに来てください」
手をぎゅっとして、笑顔でわたしに微笑みかけてくる姿は最初見た時とはまるで印象が違った。
「うん。わかった」
わたしも微笑み返し、歩いていた。
その様子に横にいた琴音ちゃんが、小さな声で
「氷柱・・・もぅ」
と誰にも聞こえないように囁いていた。
寮に入り、部屋に戻るとわたしはベッドに横になった。
「ほんとに今日は色々ありすぎ・・・」
誰も聞いていないのを良いことに思っていることを全部言い切った。
魔法を使えたこと、魔法が当たったこと、氷柱ちゃんと仲良くなったこと・・・
今までとは違う充実した毎日にわたしは正直すごく疲れていた。
「駄目・・・なんか色々パンクしそぅ・・・」
そうベッドで仰向けになりながら呟いていた。
そう思いながらわたしは氷柱ちゃんが弾いていたフレーズを思い出しながら鼻歌を歌っていた。
「この曲・・・やっぱり好きだな」
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