漆黒の結晶Ⅲ
一階の食堂で、夕食を食べた。夜にご飯を食べるのは本当に久しぶりだった。暖かいオムライスはとても美味しかった。食べ終わったら、二人に誘われ鳩羽さんの部屋に集まり一緒に出された宿題をしていた。柚木さんの部屋はすごくシンプルで綺麗にかたずけられていた。
「鳩羽さんの部屋、きれいだね」
「いつもなずなが来るから、マメに片付けてる。なずなの部屋・・・散らかし放題だから行くの
「なにそれっ、二人が座れるぐらいのスペースはあるもん・・・たぶん」
自信な下げに言う遠坂さんを見て笑った。
そんなたわいもない会話をしていると、遠坂さんがわたしの顔をじっと見て
「ねぇ藤咲さん、理架って呼んでいい?あたしのことも、なずなって呼び捨てで呼んで。これからも仲良くしよう、もうすぐ聖黎祭だし盛り上がる仲間は多い方が楽しいから。いつも柚と二人っきりだったし」
「わたしもお願い。あなたとは仲良くなれる気がする、柚で構わない。わたしもこれからはあなたのこと理架って呼ばせてもらう。競う仲間は多い方がやりがいがある。なずなだけだと調子わかないし、つまらないから」
「え・・・ありがとう。なずな、柚」
わたしは二人の言葉に頬を赤らめて頷いた。
それを見て二人はかわいいと笑いだし、結局全員で笑っていた。三人で仲良く大浴場に入り、別れの挨拶をし終わって部屋に戻ろうとすると琴音ちゃんが階段から上がってきた。
「あれ、もうお風呂上り早いね。私も早く済ませないと、もしかして部屋・・・となり?」
「うん、そうみたい」
部屋が隣同しだとわかると、琴音ちゃんは
「奇遇ね、あぁそうだ明日の放課後授業が終わったらシュヴァリエの塔に来てくれないかな」
「えっ、明日?わかった」
そう会話し終わると、琴音ちゃんはおやすみと言って部屋の中に入っていった。
わたしも部屋の中に戻ると、窓の外をじっと見つめた。時間はすでに9時になっていて外は真っ暗だった、空には星と月が輝いていた。わたしはベッドの中に入り、目を閉じた。
今日一日に起きたいろんなことを思い返して、眠ろうとしたとき思い出して布団から飛び起きた。
「あ、結晶のこと忘れてた・・・」
頭が真っ白になり、慌てて探し出した。どうして忘れていたのだろうと考えていると全然わからなかった。あの後、教室に入ってからどうしたのかを思い出せなかった。
目を閉じ、じっと思い出そうとすると頭に中にある風景がに
そうしてうろ覚えの中で、電灯の明かりの中植物園に向かって歩き出した。
校舎が見えるところまで来ると、後はすぐにわかった。植物園だけ何故かまだいつくか電球が明るくついていた。わたしはそっとビニールテラスの植物園の扉を開け、中に入った。中を見てわたしは驚いた。目の前には一面に月下美人の花が咲いていた。夜に咲く花。わたしは見惚れてしまっていた。そしてまたあの声を聴いた。
「どうだい、この世界は・・・キミは気に入ってくれたかい?」
気が緩んだときにふと聞こえた言葉にわたしは体をビクッとして驚いた。そして振り向くと、初めて会った時と同じ姿のシーシャが花壇の上に立っていた。
わたしはシーシャを見つめ
「うん、そうだね」
穏やかな声でわたしは肯定した。
その瞬間、わたしの周りにスッとあの黒い欠片が現れ周回を始めた。
「えっ、どこから・・・さっきまで無かったのに」
驚きながら、結晶を掴まえようとするわたしを見てシーシャは笑って
「何をしているの、それはキミ自身なんだ。どこへもいかないよ、ただ見えなくなっていただけさ」
「どういう・・・」
そう問いかけると、シーシャは花壇を降りわたしの方へ歩いてきてわたしとすれ違いそうになると同時に耳元で呟いた。
「本当のキミは一体どこにいるんだい?」
わたしは鳥肌が立ち、振り向くとそこにはもう誰もいなかった。
ただ立ちすくんでいると、奥に何かが光っているのに気が付いて近づいていった。
そして気が付くと植物園の奥の方まで来てしまっていた。光っていたのはガラスが月の光に反射しているのだと気づいて、戻ろうとするとわたしはアヤメの花を見つけた。
「メッセージ」
アヤメの花言葉を言い、わたしはその場でしゃがみこんだ。
わたしの近くに浮いている黒い結晶を見て何もすることがないわたしはふと、
「あなたに名前を付けようか」
そうじっと見て感じるままに考えた。
そして立ち上がり、じっと結晶を見て
「漆黒の十字架 ロザリス」
月明かりの下、わたしは名前を与えた。
その瞬間結晶は黒く輝きだし、眩しいぐらい輝きだしてしまってわたしは目をつぶった。そして目を開けると足元には大きな魔法陣が描かれ動いていた。そして結晶は小さな指輪に変わっていた。指輪の真ん中には小さな花型の結晶。わたしは指輪を右手の手のひらで受け取ると指輪の結晶から光の粉末が溢れ出てきてわたしの目の前に長い杖が現れた。黒色に光り輝く、漆黒の杖。わたしは左手でそっと杖を掴んだ。そうしたら輝きは止まり、わたしのは杖を見つめた。
ぼーっと杖を見つめていると、後ろから枝の折れる音がして振り返った。そうしたら驚いた顔で制服を着た城乃くんがわたしを見つめていた。
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