漆黒の結晶Ⅰ
「黒色・・・」
わたしは再び、手の中にある丸い物体を見て言った。
それを覗き込んでいた城乃くんは怪訝そうな顔をして
「俺たちより重いものを背負っているのかもな・・・お前は」
と下を向いて呟いた。
琴音ちゃんは少し微笑み私に教えてくれた。
「魔法にはそれぞれ色があるの、会長は心の色と言っているわ。わたしは青よりの紫色だから、横の凜夜は真っ赤だし」
そう城乃くんを指差して言った。
「はぁ・・・まぁ気にするな、手にした魔力の色ってだけだ」
そういって城乃くんは腕につけているシルバーのブレスレット見せてくれた。真ん中には赤く輝く宝石のような結晶が埋め込まれていた。
「これが俺のデバイス、剣だ。今はこんな状態だけどまぁ見てろ。カーレット起動しろ」
そうすると、ブレスレットの赤い部分が小さく光りだし城乃くんの制服の左腰の部分に長い鞘と剣が実体化を始めた。
わたしは信じられないような顔でそれを見つめ続けていると城乃くんは鞘から剣をゆっくり取り出した。剣の刃は研ぎたてのように光り輝いていた。
その様子を見て琴音ちゃんは
「まったくもぅ」
と呆れ顔をしていた。
そうしていると会長がわたしの方へ来て歩いてきて
「君は面白いね、生徒会に入る?」
と、冗談交じりに笑った。
わたしは訳が分からず混乱していると、琴音ちゃんがうなずき
「賛成です。わたしも同級生の女の子の役員がほしーなーって思ってたんです。常に一緒にいるのが、乱暴な男ですから。まぁ後輩には先輩らしくって思っちゃっていますから気兼ねなくできる人、希望しちゃいます」
とわたしの方をチラッと見て会長に進言し出した。
「おい、誰が乱暴だ」
城乃くんは反論しながら、否定はしなかった。そして後ろにいた一年生たちもうれしそうな顔で話しだしていた。
「まぁとりあえず、お試しってことで入ってみない生徒会」
わたしは少し戸惑いながら承諾した。
上に戻ると、昼食をみんなで食べた。たわいもない会話や伝達などを混じらせながら話をしているとあっという間に時間は過ぎていた。昼食のかたずけをし終わると、一年生たちは図書館塔に行くと言って生徒会室からいなくなった。生徒会長も用事があると言って、再び上の階に行ってしまった。
少し静まり返ると、さっき手にした漆黒の結晶を見つめていたわたしに琴音ちゃんが声をかけた。
「そんなに不安そうな顔をしなくても、そのうち答えてくれるわよ」
「え・・・答えて?」
反応すると、城乃くんは立ち上がり扉に向かって歩き出した。
「その結晶は、お前の心の欠片だ。お前の望みに応じた力に必ずなってくれる」
そうわたしの後ろで言い、生徒会室から出て行ってしまった。
わたしはぎゅっと握りしめ
「こころの・・・結晶」
と小さな声で呟いた。
そんな様子を見て、琴音ちゃんもすっと立ち上がりわたしを見下ろした。
「そろそろ休み時間も終わるし、教室に戻るわ。職員室の場所まで案内してあげる、プランセースの担任は多分・・・
「・・・花菱先生」
そうして二人は校舎の方へ向かった。
その様子を、二階の窓越しのカーテンの隙間から生徒会長が見つめていた。
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