二人目、死願者
思い詰めた様子の青年が、珈琲を注文した。
「この前、自殺しようとビルから飛び降りたんです。」
死願者が珈琲を飲み、一呼吸置いて話し始めた。
「地面に着いたら、死んでいなかったんですよ」
「…痛みはなかったのですか?」
最初はよくわからず、死願者の額の傷を見て、そう返答した。
「いや、痛みはなかったかな。でも、どうやっても死ねなくて」
死願者はどうも不死身になった事が気に食わないようだ。
「あの、砂糖足してもらえます?」
「はい、何個がよろしいですか?」
死願者は甘党なのかブラックコーヒーに角砂糖を5個も入れ、満足げだった。
その満足げな表情で、不死身になってどうやって死のうか考え何度も実行したらしいが何も出来なかった、と今までの事を話してくれた。まぁ、何とも言えず苦笑するばかりでしたが。
「僕は嫌でも生きるしかないんですかね。」
「そんなに、死にたいのですか?これから先は考えてませんか」
「とりあえず、そうですね、また、失敗したら来ますね。」
自殺を考えている青年には、どうもこれからの事を考える余裕はないようで。
そしてよく見ると青年は整った顔立ちで、人当たりが良さそうな、何ら人間関係の悩みもなさそうな印象を受けたのだが。
「ご馳走様でした」と死願者が席を立つ。
私が凝視しているのに気づいたのか、死願者は怪訝な表情を浮かべていた。死願者の左耳のピアスがきらっと光った気がして、我に返り「また、来てくださいね?」と声をかけた。
「ええ、はい、そのうちに」と死願者は苦笑を浮かべ、背を向けた。
その背中を見送って、珈琲が入っていた白いカップを覗き込む。
「あれほどの劇薬を全部飲んだのに、駄目でしたね……砂糖も多かったし、異変にも気づかない味音痴かな」
死願者はこんな物を飲み干して、顔色を変えず帰ったことは少し不安はありましたが、その後もいつものように来店されています。
なかなか私の作った罠にかかっても死にません。
この前は斬首されたのに生き返りました。
この話は後ほどにしますね、長くなりそうですから。
「不死身で寿命がない、これも良し悪しだ。」
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