一人目、依存者

 今日のカウンター席は、一人の女性に占領されている状態だった。

「彼氏から全然連絡ないの。なにかあったのかな、どうしよう。」

女性は長方形の物体、四角い光の中を真剣に見ている。これを見ていないと落ち着かないらしい。そこで聞いてみた。

「毎日連絡取らないと不安ですか」

すると、女性は目の色を変え怒りだした。「今日は1回も連絡がないから心配をしているの!!もう何回も電話もしてるのに!!」

「相手も忙しいのでしょう」と言ったところで聞くわけがないなと思い、黙って見ていた。

突然、長方形の物体が『鳴き出した』。

「や、やだ、充電しなきゃ!」

焦る女性、鞄を漁っている。その姿を見て昨日の男性客を思い出す。確か恋人のことで悩んでいたな、と話を思い返してみる。

「依存しているっていうのかな、彼女は……僕には重いんですよ。マスターは、そういった人に、どう言いますか?僕、考えるのも疲れてしまって」

昨日の男性がこの女性の恋人なら、これに見覚えがあるかもしれない。

 彼の持ち物であった長方形の物体を女性の前に置いた。

依存者は鞄を漁る手を止めた。「これは彼の?」そう言って凝視する。

理解していないようだったので、説明をした。

「昨日ここで、この席で貴女のことを話していました。体調も良くないみたいだったので、少し店の空き部屋で休ませてたのですが、閉店間際に様子を見に行ったらぐちゃぐちゃに潰れましてね。……きっと、あなたの愛の重さで圧死したのでしょう」

女性はまだ、わからないという顔をしている。なので『彼』を提供した。

赤い飲み物を、長方形の物体の横に置き、再び説明する。

「これはあなたの愛で圧死した彼で出来たものです。果肉に見えますけど、あなたの愛していた彼氏さんです。とても綺麗でしょう?」

―─こちらを見て、依存者は青ざめていた。


「それは何とも言えないが、私には少なくとも病気に見えている」

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