第4話

中では厳しい表情をした隆にぃのお母さん・・・つまり私のおばあちゃんが上座で腕組みをしていた。

「とりあえず色々話したいことはあるのだけれど、まずはいただきましょうか。」

おばあちゃんの一言から献杯をし、ご飯を食べる。

精進落としとは、もっと賑やかになるものではなかっただろうか?

まあ、無理もない。子供を残してこの世から消えてしまった親戚の集まりなのだから。

お腹が満たされ始めたころ、静かだったおばあちゃんが口を開いた。

「皆、今日はすまなかったね。ところで俊樹が施設に入るまでの一ヶ月間、俊樹を預かってくれる場所を探しているんだ。」

ざわめきが広がる。

確かにおばあちゃんの家はかなり遠く、俊樹君がこちらの施設に入るとなればこちらにいる親戚を頼るのが妥当だろう。

天才小学生の印税に集る大人たちは自分が預かると言って譲らない。

しかし、当の本人は私と目を合わせて動かさない。

「僕は琴音お姉ちゃんのところがいいな。」

俊樹君の一言はその場を凍らせるには充分なものだった。

断らなければならない。私にそんな甲斐性はない。

私のもとに視線が集まる。喉が詰まったような錯覚を覚える。

「・・・わかりました。一ヶ月ならば私のもとでお預かりします。」

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