第2話

苦手なバックで駐車を終え、着崩れた着物を直すと、列のできている受付に並んだ。

親戚が一同に集う所を見ると不謹慎ではあるが壮観だ。元を正せばDNAが同じであることが簡単に把握できる。

受付で香典を渡し、20分後には葬儀が始まった。

亡くなったのは従兄弟の斉田 隆敏とその妻の文子だ。交通事故だと聞いている。

しかし参列者の注目は32歳でこの世から去ってしまった哀れな2人ではなく、その子供の俊樹君に集まっていた。

俊樹君は小学五年生頃に小説すばるの新人賞を獲得して以来、メディアでも騒がれている天才キッズ・・・つまりは神童である。

そんな彼を育てた両親が一度に消えてしまったとあれば、彼の様子を伺いに興味本位で参列する者も少なくないだろう。

しかし私の興味は全く別の場所にあった。

家を出たこと。そしてまがりなりにも画家になることを心から応援してくれていたのは隆にぃだけであった。

そんな隆にぃは

どんな思いで

どんな顔で

亡くなっていったのだろうか。

それ以前にあんなに真面目な隆にぃが本当に交通事故なんか起こすのだろうか。

涙の代わりにそんな疑問と興味が脳内に流れ込んできたのだった。

俊樹君による別れの言葉が始まるようだ。参列者はホラー映画を見るような目つきでそちらを見ている。

見てはいけない

でも、見たい

後ろめたさを感じているからそんな目つきになる。

小学校高学年くらいの背丈に似つかわしくない大人びた顔つきの男の子がマイクの前に立つ。

「お買い物から帰ってきたお父さん、お母さんはすごく冷たかった。

雨が降れば、長靴で水たまりを蹴飛ばしにお父さんが連れていってくれる。晴れた日にはお母さんが森の美しさに触れさせてくれる。

そんな二人がもういない。

でも、心配いらない。今度からは僕が自分で外に出て歩く。

安らかに眠って下さい。」

やはり、大人びた言葉を並べ、唇をきつく結んでいる。

多少ひっかかるところはあったものの・・・。

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