第18話 サキコ、このトリックに気づいたか?
もし家に辿り着くことができたら、オレはこの原稿を完成させ、コンペに出すのだろうか。
オレはこの物語の中にサキコにしかわからないメッセージを、あるトリックの元に仕掛けた。もしこの物語を君が演じる時が来たら、オレの代わりにそいつをみんなに伝えてやってくれ。きっと真実だ。
家に帰って、「最後の出演作はド派手にやるぜ」、そんなことを言ったら怒られるだろうな。
AV女優サキコを愛したオレもまたAV男優だった・・・、そんなチープなオチにするつもりはない。オレが愛したAV女優サキコこそオレの妻だった・・・、そんなのもありきたりだ。
もしオレが男優だったとしても、これを最後の出演作にするだろう。AV男優なんて食えない仕事はするもんじゃない。
朝帰りをした言い訳を考えながら、オレは自分だけが実在しているのだと少しだけ笑った。
「なにもかもチープだ」
自分が書いたストーリーの中でしか生きられないオレは、フィクションという名の道の上を、今でも歩き続けている。
そのフィクションを乗り越える日が来たら、やっと母の遺影に手を合わせられるかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます