第2話 始まりの街ローディエル
一瞬、まばゆい光に視界が奪われたあと。
人々の五感に飛び込んできたのは、木製の床の質感と、かいだことのない薬品の匂いだった。
修司は、自分の手をまじまじと見つめた。革手袋に、籠手。背には大剣。腰からぶら下げているのは、薬草やら傷薬が入った革袋だ。
驚いて、修司は座っていたベッドからずり落ちたらしい。お尻をさすりながら、修司は立ち上がる。目をぱちくりしていると、斧を背負った大男と目が合った。愛嬌のある顔立ちは、誰かの面影を強く残している。装備そのものは軽装だが、並の女性の腿ほどもありそうな腕は、半端な傷など受けそうにない。
「修司は剣士にしたんだな。俺はまあ、見ての通り、斧戦士だ。沙姫は、ほれ」
矢木だった。にやっと笑って、彼はもう一人を指す。
「あの……その……似合ってますか?」
もう一人。沙姫は、白い法衣に身を包んだ聖職者だった。大きな太陽のアクセサリーを帽子につけている。全体的に、白と金でまとめられていた。
「聖職者にしたのか。いいんじゃない? 俺たちが接近戦だから、回復は頼むよ」
修司が言って、沙姫は「うん!」と力強くうなずいた。
その瞬間。
「はじめまして、冒険者のみなさん」
空間がゆがんで、一人の青年が映し出された。
「エルナルド……だよね、この人」
彼らの目の前に登場したのは、エルナルド=フォン=ハウゼンその人だった。
栗色の髪はいつも通り。淡い空色の瞳もいつも通りだが、黒い外套に身を包んでいる。腰には剣を吊っており、機能性を優先させたのだろう、黒い革のブーツだった。快活な笑みを見せながら、彼はすべての冒険者に語り掛ける。
「僕の名はエルナルド。みなさんにとっては、ゲームマスターと言ったほうがいいかな。いまから、世界の説明をするが、用意はいいかい?」
だれもが息をのんで、彼の言葉を待っていた。
「この世界の名は、サイナスト。DIVEすると、DIVEしている間のみ、君たちの街の風景に様々なものが上書きされる。もちろん、現実世界に影響はない。たとえば信号を渡ったり、買い物をしたり……その都度、君たちの脳内では、ゲームとは異なる場所が反応する。それを感知して、自動的に一時停止を行うから安心してほしい。ただし、年中DIVEしていると、機械の方がオーバーワークになるので、眠りにつく段階で必ずOUTしてほしい。ここまでは大丈夫かい?」
反応を待つ動きをしてから、エルナルドは朗々と語る。
「この世界でできることはたくさんある。最強の冒険者を目指すのも良いし、友達を作るのも良い。途中で、モンスターなどを飼育することも可能だ。けれど、わかりやすい目標は一つ。僕を倒し、サイナストに一つだけの称号『魔剣士』を得ることだ。名実ともに最強の称号さ」
「魔剣士か……」
カッコいいな、と修司がつぶやく。
「パーティはふたつ作れる。レギュラーメンバーで固める、4人までの『レギュラー』。固定のメンバーで、チーム名も作ることができる。また、その場で適当にメンバーを入れてしまう、人数固定なしの『ボックス』がある。『ボックス』は、クエストの間だけ作れる。報酬は全員で均等に割るから、人数を増やせばラクだが、その分得るものは少ないよ。……さて、せっかちな冒険者は、そろそろ飽きてきただろう? ようこそ、サイナストへ。僕は、君たちの位置から半径20キロ以内にある最も高い建物にいる設定をさせてもらっている。便宜上『鷹の巣』と呼び、そこで君たちの挑戦を待っている」
そこで、エルナルドは剣を抜き放ち、天に向け、大きく右横に振るうと胸の前で構える。その後、高い音を立てて剣を鞘に収めた。剣を振るう様が流麗で、咲姫も思わず見とれていた。儀礼ののち、エルナルドの姿がすっと消え去る。彼のいた場所をなんとなく指で掴もうとして、修司は苦笑した。それが無駄な行為であると、いまさら気づいたかのように。
「まずはレベル上げとかかな。もしかしたら知り合いとかもやってるだろうから、しばらくは仲間と協力者集めだ。まずは、ここらで最強になろうぜ?」
オンラインゲームに精通している修司が指示を出す。おのずとリーダーは決まっているようであった。
「これを設定してくれてるってことは、僕のことを覚えてくれてるってことかな、友香」
設定を終えてDIVEした友香を出迎えたのは、エルナルドだった。よくできた3Dだと思ったが、どうも違うらしい。全員に向けた3Dで、名前なんて呼ばないだろう。
「ようこそ、サイナストへ。歓迎するよ」
友香は、己の指をエルナルドに伸ばす。今の彼女は『魔女』だ。紺色の法衣に身を包んでおり、ロッドを持っている。とんがり帽子に、月を模したアクセサリーが目だっていた。
「……今わたしと話しているあなたは、映像なの? それとも、本物?」
「正確には、映像はほかのユーザーがみているものと同じだ。君にのみ、初回ログイン段階で話せるようにプログラムを組んだから――通話は、本物だと思ってくれていい」
にっこりと微笑んで、魔剣士エルナルドは告げた。
「10年前の約束、果たそうと思って。せっかくだから、今の僕が出来ることをすげべてつぎ込んで、こんなものを作ったんだ。言っただろう、いつか見ていた遠い世界を、君にも見せてあげたいって」
宝物を見せびらかす少年の顔をして、エルナルドは言った。本当に、そのためだけにこんな大掛かりなものを作ったのだとすれば、エルナルドは相当に暇人なのではないだろうか。友香は思わず、そう思ってしまったが。
「……会いたいな、友香。今度、東京を案内してくれる?」
「ええ。東京に来るときに教えてくれれば、予定は合わせるわ」
我ながら、驚くくらい親切だ。英会話の予定など、ずらせば良い。
「君にも普通のルールを説明しておく?」
「いらないわ。初めてのゲームだし――あなたが作った世界だもの。じっくり楽しんでみる。異世界旅行みたいな気分で、ね」
ふるふると首を振って、友香は立ち上がった。さらりと、紺色のローブがついてきた。
始まりの街ローディエル。地図には、そう書かれていた。
世界の中心に位置していて、属性としては『光』。回復魔法などがある程度強化されるとのことだった。各サーバーエリア上、最も人口の多い街がローディエルとして設定されるらしい。
ふだん見慣れている交差点は、美しい石畳に覆われている。面白いもので、右目だけ開けると、なんといつもの交差点で、トラックで、バイクが走る西国分寺だ。左目で見れば、そこは異世界だった。修司などは、何度も何度もぱちくりと目を開けては閉めたものだった。
修司の家――プレイヤーはそれぞれが駆け出しの冒険者となり、自宅など任意で設定できる特定の場所を拠点にできる。そこにいる限りは攻撃もできないし、されることがない――その拠点を飛び出て、3人は歩き出した。
まばゆい二つの太陽。月も二つあるらしい。石畳の脇、道の脇には小川が流れており、白い壁の家々の窓枠は、深い緑色だった。壁には文様が描かれいる。見慣れぬ蝶がひらりひらりと宙を舞う。
「きれいね……本当にいるみたい」
沙姫が言う。
馬車が走り、冒険者たちが行き交う。当然、人間でなくコンピューター操作のキャラクターも多々存在する。昼を過ぎたころ、冒険者たちがたむろする酒場には、はちきれんばかりの活気があった。
「本当に異世界に行ったことがある、みたいな精密さだよなぁ、こりゃ。すげえや」
八木が感心しながら、きょろきょろと看板を見上げる。
交差点という交差点には、道に木の看板がかかっている。看板の上には、木彫りの動物だ。こちらはどうも、兎がかかれている『安らぎの小道』らしい。ほか、狼がかかれている『牙の小道』、亀がかかれている『守りの小道』、鳥がかかれている『自由の小道』があるらしい。それぞれ扱っている装備品や道具が違う界隈なのだそうだ。矢木は物珍しそうに回復道具を眺めていた。
プレイを始めてから一時間は、操作に慣れるための時間として扱われる。体が緑色のオーラに覆われ、誰もが攻撃できないのだ。その間に情報収集をする者、とにかく戦闘の練習をする者などさまざまだ。
修司達一行は、ひとまずは、しばらく拠点になりそうなここ、ローディエルを散策することにしていた。少なくともパーティを作るほとんどの人数は集まっているから、いざ初心者同士の戦闘が起きてもある程度対応できるだろう。
「この街は、円形なんだな。この噴水が中心なわけか」
ふむ、と矢木。自分の身の丈以上吹き上がる噴水を見上げ――
「ん? 妖精か?」
水の先で飛び回る、翅をもつ少女たちに目を向けた。青い髪、瞳を持つ、掌くらいの大きさの少女たちだ。少女たちは矢木の周辺を飛び交って、青白い鱗粉が軌跡を描いた。
「ああ、それ、癒しの泉っていうんだってさ。多少の傷なら癒してくれるんだって。タダで」
修司が言う。最初の手持ち資金で手に入れたロングソードを装備しながら、こちらに向かって歩いてきた。
「親切設計だな。最初は回復に手間取るもんな、ゲームって。薬草とかポーションは買えないし」
矢木が応じた。と――
「魔物の襲撃だ!」
荷物を運んで歩いていた青年が、空を見上げて叫ぶ。
「ゴブリン空艇団だ!」
気球と飛行機をうまく合わせたような、どことなく丸いフォルムの飛空艇から、何かが落下してくる。パラシュートを開き、あちこちの商店に襲い掛かるのは、耳の長い小さな鬼だった。鍋やらお玉で武装しているあたりが、どことなく滑稽だった。
【クエスト ゴブリン空艇団を討伐せよ】
全プレイヤーの目の前に、アナウンスが表示され、賞金などの条件が提示された。クエストに参加するかどうかは完全に任意となっている。さっと条件を確認して、修司は声を張り上げた。
「センパイ、咲姫! このクエスト受けよう、賞金がでかい!」
修司の号令一つ。2人はうなずいて、近くの露店を襲うゴブリンに狙いを定めた。
剣を抜き、下段に構える修司。かちっと目標を定めて、大地を蹴り抜く。吹き矢で応戦するゴブリン。頬を少しだけ怪我するや、淡く青白い光がふわりと舞って、彼の傷を癒す。
ダンッ、と音を立てて、積み上げてあった樽を踏み台に、大男が飛んだ。矢木だ。斧を振り回し、ゴブリンを薙ぎ払っていく。散り散りに逃げるゴブリン達を追撃しようと、修司が駆けだすが――そこに、何人かの冒険者が立ちはだかった。
「おい、なんでゴブリンの味方すんだ!?」
修司が言いながら、剣を受ける。ギンッ、と重い音を立てて、鋼と鋼が根元からかみ合った。鍔迫り合いに持ち込むが、相手はどうも格上の剣士だ。
「なんでって、お前、冒険者の酒場! 見なかったのか? ゴブリン空挺団の団長から出てた【裏クエスト】! 空挺団の味方をして一定の功績を上げたら、報酬は表クエストの倍以上だぜ!」
「んなことは……読んだけど、よっ!」
一瞬力を抜いて、相手剣士のバランスを崩す。下段から切り上げを行い、右わき腹から左肩までを切り抜いた。
勝ったと思った修司だったが、背を悪寒が駆け抜ける。どこかから放たれた矢が、彼の右肩に突き立ったのだ。
「!?」
「修司!」
矢に意識を向ける修司。沙姫が即座に回復魔法を飛ばし、治癒を行う。しかしもう一本がこちらを射抜こうと飛来して――
「おらッ!」
投擲された手斧に、矢が叩き落された。
「センパイ! サンキュ!」
言ったのもつかの間、槍を持った戦士たちに囲まれる。
「おいおい、ゴブリン軍団多くないか!?」
そんなに報酬が良かったのかと思いながら、修司は矢木と背を合わせる。沙姫も横にいるが、そもそも攻撃魔法を使えない彼女は、まだ戦力としてはカウントできない。と――
「炎の矢よ、燃やせ」
突如飛来した炎の矢が、雨のように相手に襲い掛かる。攻撃することしか頭になかった敵たちは、見事に体力を削られ、ちりぢりになっていった。
樽や露店のあちこちが焦げてはいるが、無事だということを確認して、修司はようやく痛みを感じた。沙姫に治癒してもらうため、手近な樽に腰かけた時――
「おい、修司! この人だってよ、今俺達を助けてくれた魔女」
矢木が連れてきたのは、紺色のローブに身を包んだ魔女だった。月をあしらったアクセサリーが目立つ。とんがり帽子を目深にかぶった彼女だが、顔をしっかり前に向けていた。修司が「この人が?」と問いかける。
「話しかけても答えてくれないが……。俺たちのパーティには、遠隔攻撃がいないだろ? ちょうど良いかなって……」
長い黒髪に、理知的な瞳をした魔女に、どこか見覚えを感じながら――修司は治癒を終えた腕をぐるぐる回して、爽やかな笑顔を見せて手を差し出した。
「さっきはありがとう。よかったら、仲間になってくれないか?」
「……仲間には、なるわ。私も、前衛職が必要だから」
魔女さんはその手はとらず、帽子をキュッと深くかぶり直した。
◇◆◇
魔女は、名前すら教えてくれなかった。
サイナストでは、「フレンド」というものにならなければ名前は表示されない。個人情報ということもあるのだろうが、一番大きな理由は、『現実世界でもそうだから』だ。
仕方なく『魔女さん《ウィッチ》』と呼ぶことにした三人は、彼女から様々な情報を仕入れた。
いわく。
プレイヤー達が目指すべきは、単にエルナルドだけではないということ。西と東にそれぞれ銀竜と金龍が存在し、討伐すれば、その鱗から最強の武具を作ることができるということ。魔法の系統。レベルを上げていくことで、最終的に選べるようになる称号について……。
「詳しいな。魔女さん」
うんうんと聞いて、修司はうなずいた。自分も相当なゲーム好きだが、超えられるとは思っていなかったのだ。相手は相当なベテランかゲーマーか、オタクか……ともあれ、かなり頼りになる人物に違いない、と修司は勝手に思い込んでいた。相手のことは謎だらけだが、これから仲良くなっていけば良いのだろうと、彼は楽観的に見ていた。
魔女さん――有川友香は、まさかここで川名修司に出会うとは思わず、名乗ることもできず、これらの情報はエルナルドからもらったと言うこともできず――ただ静々と、彼らに参加するしかできなかった。いかんせん、ゲームには不慣れだ。経験者が近くに居たほうが良い。軽く討伐できたのは、たまたまゴブリンの魔法耐久力が低いからだ。だがいまさらそれを言うこともできずに、だんまりを続けていた。
2人の思惑はそれぞれが絶妙に交差して、今の沈黙があるのだが――
「はい、魔女さん」
沙姫がその沈黙を破って、魔女に魔力回復の薬を差し出した。
「聖職者って、最高位になるまで攻撃魔法を覚えないんだって。しばらく、あんまり役に立てないかもしれないな……ごめんなさい」
しゅんとして言う咲姫。そこへ、
「そうでもないぞ、新米」
通りすがりの冒険者が言う。これは人間が操作しているわけではなさそうだ。つぶやきを拾うシステムなのだろう。
「聖職者は最初、できることがないと思うだろ? だが、そういうときは『牙の小道』に行くと良い。アイテムとして攻撃魔法を使えるものがあるからな。そして、アイテムとはいえ使うのは己の魔力と魔法攻撃力だ。魔法に特化している聖職者がレベル上げをするのに、ちょうど良いのさ」
言うと、快活に笑って冒険者は歩いて行った。
「……便利な世の中ね。過保護というか」
思わずつぶやいた友香。
それに驚いて、矢木が目をまん丸にしていたのを、修司が腹を抱えて笑う。
「魔女さん、突っ込みキッツいなー!」
修司は言って、理知的なその瞳を覗き込む。
「俺の友達に、そういう女子がいるんだ。そういうツッコミ、俺、大好きなんだよね」
快活に笑って、修司は無神経にポンポンと彼女の肩をたたく。まさか彼女がその「友達」だなどと知らないで。
一方、
(……友達、って思われているの……?)
友香としては、知らない事実が飛び出してきて、目を白黒する他なかった。彼女の中で「友達」は、父の知人の娘息子たちのような、インドアで知的な遊びに精を出すようなタイプのことを指していたからだ。勤勉と程遠い彼が自分の友達だなど、なかなかありえないことではあった。
◇◆◇
サイナスト世界の夕暮れは、それはそれは美しいものだった。
橙色の夕日が、並んで落ちていくので、沈む寸前はハート型に見えるのだ。
街の外れ、岡からその光景をみて、愛を誓いあう冒険者がいるとかいないとか。
やがて月が上り、星が慌ただしく登場する。白い町並みには紺色の帳が落ちて、家々の窓には明かりがともった。
サイナスト最初の夜だ。
ローディエルでは、『聖者の帰還』という祭りの時期だということで、やんややんやと盛り上がっている。
4人は興奮も冷めやらぬまま、今日のところを終いとした。修司のアルバイトの時間がきたというのもある。
毎日の集合時間を決めて、4人は解散した。修司の家でDIVEした沙姫、矢木の2人は、自宅近くまでDIVEしたまま戻り、適当に経験値を稼いでいくとのことだ。
「――
解散の直前、修司はふと、友香を呼んだ。ほかの2人が立ち去った後である。
呼ばれた声に、友香はつと顔を向ける。黒髪が月光を流し、言葉を失う美しさだった。
「――ありがとう、今日は」
くしゃりと顔をゆがめて笑うのへ、友香が目を少しだけ瞠った。
「……いいえ」
修司を救ってから、何度かパーティ戦をしたが、そのあと助けられたのは、どちらかと言えば友香だった。序盤ではステータスの低い魔女を、剣士がカバーする形だったのだ。
「また明日ね、魔女さん」
「……また、明日」
こんな事を言いあうのは何年ぶりだろう、などと思いながら、友香は修司に背を向けた。ありえないことではあるが、戸惑いこそすれ、存外嫌な気分にはならなかった。そのことに、彼女はやや衝撃を受けた。
◇◆◇
「……いてっ」
部屋に戻った修司は、先ほど攻撃を受けた右肩に手を当てた。傷はふさがっているが――
そもそも、なぜ傷がリアルにまで影響しているのか。むしろ、リアルすぎて本当に傷を受けたと錯覚してしまっているだけなのか。それは彼には判断ができなかったが、
「……まあ、いいや」
その疑惑を打ち消すほどには、サイナストの魔力は相当なものであった。
「さぁ〜て、本日のバイトさんは? っと」
機嫌よく汗ばんだTシャツを脱いで洗濯機に放り投げる。自分のアルバイトは接客業なので、シャワーを浴びてから行くつもりだった。
洗面所を通り過ぎる時に、自分の上半身が目に入った。
高校生男子としては鍛えている、野生動物のようなしなやかな筋肉だ。いわゆる細マッチョと言うのだろうか。長身も相まって、均整がとれた体つきをしているが、そんな自分に見とれる訳ではなく、
「……マジか?」
右肩にアザのようなものを発見した。ちょうど、先ほどの攻撃を受けた箇所だ。
「現実世界に影響があるのか、このゲーム? そりゃちょっとまずくないか?」
シャワーを浴びながら、彼はぐるぐるとそのことを考えていた。
麻痺とか毒とか、そういうバッドステータスなどは、どうなってしまうのか。さらに、瀕死や石化は……? そして、ゲーム故、当然「
熱いシャワーのはずなのに怖気がして、彼は思わず身震いをした。
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