鬼は外‼︎

燃え盛る炎の中で金属と金属がぶつかり合う剣戟の音が何度も響く


「ぐっ…貴様ぁ!なめるなぁ!」


そう言って、レティシアの身長ほどはあろうかという斧を振りかぶりながら

その身に似合わぬ速さで突進してくる。



「っ!」



振り下ろされた斧をレティシアは手に持つ刀で滑らすように受け流した。


事前に予想していたよりも重い衝撃に体が一瞬よろめく


すぐ態勢を立て直し『アイスバレット』を放つ


一拍遅れて態勢を立て直した酒呑の鎧が赤く輝いた。


その結果ダメージを与えるはずだった

氷の弾丸は一瞬でその身を水蒸気に変えてしまった。


「ハハハハ!俺様に氷属性は効かん!

我が紅蓮の鎧に貴様の軟弱な魔法等効かんぞ!」


と、酒呑が言い放ったと同時に無数の鬼火が出現する。


「チッ、さすがは課金ガチャの最低確率の品、馬鹿みたいな硬さですね。その上自動防衛とは恐れ入ります」


本当チートでしょうあれ


ーーーーーーーーーーーーー

『紅蓮』【SS】

種別【甲冑】

効果▼

物理【半減】

火属性【吸収】

風属性【半減】

氷属性【無効】

水属性【無効】

筋力上昇【大】

バーサーク(OFF)【S】




ーーーーーーーーーーーーー


うん、さすが課金戦士にのみ許された最強クラス装備、手のつけようがない。


などとレティシアは自分の事を棚に上げてそんなことを考えていた。


というか本当に無効化されるのかを

さっきの『アイスバレット』で確かめてみたが結果はさっきの通りだった。


お仕置きだしあの畜生の自信を正面から打ち破るのも一興かもしれない。


「…さて、貴方程度の防具で本当に無効化などできるのですかねぇ?」


と見下すような嘲笑と一緒に挑発してやる。


すると耳障りな高笑いを未だに続けていた酒呑が

高笑いを止めて鬼の形相で睨んでくる。


これがまさに鬼の形相か。

その程度だったら前世の『師匠』の方が怖い。

というか目が笑ってない『師匠』より怖いものはない(確信)


そんなことを考えていた時

展開されていた『鬼火』が連続して放たれる。


「というかオーガ自身は魔法を使えないのにこの威力ですか!」


いろいろとあの防具にはゲームとは違う所がありそうだ。

あの防具にあんな機能があったのだろうか?


取り敢えずは片手間に『鬼火』を拳の風圧で消しとばした。


「貴様程度のしかもメスごときが、俺様を下にみるとは余程殺されたいらしいな…?死んで詫びるがいい!」


と、殺られ役そのままの台詞を朱天が言っているのでつい吹き出してしまう。


「貴様ぁ!…殺す!!」


そう言って酒呑は手に持つ斧で薙ぎ払いを仕掛けてきた。


それを私はガッシリと掴んでやった。


「くだらん『零式・絶無』」


「ば、バカな!俺様の一撃を掴んだだと!」


酒呑が動揺しているうちに準備準備


「沈め『束縛する黒き影』」


酒呑が足元にできた影にズプズプとゆっくり沈んでいく。




「ふふ…これで貴方は動けませんよ」


「ふん…俺様を拘束するとは驚いたが

罠系統なんぞとは、所詮貴様の姉の補助のために使えるようになった狡い魔法ではないか。図に乗るなよメスごときが」


と、捕まっているにもかかわらず

なおも嘲るように罵ってくる。


…さすがに滑稽に思えてくるが

罵倒されて黙っていられるほどレティシアの堪忍袋は大きくはなかった。



「…『黙りなさい』!!

本当だったら防具の無効化の限界がわかったところで一瞬で殺そうかと考えていたのですが」


そう言って、レティシアが魔力を束ね魔法陣を構成する。


すると手のひらサイズの魔法陣と寸分違わず同じ紋様が酒呑を中心に広がっていく。


「ハハハハ!貴様は2つもの属性を同時に使い、尚且つその数を同時に使うか!だが、この紅蓮の鎧がある限り無駄だ!ハハハハ!」


『我は氷雪の女王なり。

顕現せよ我が庭園に咲き誇りし気高き白薔薇よ。

その荊を以って我が敵を捕らえ静謐なる牢獄へと幽閉せよ』


「『咲き誇る白薔薇』」


「フン!この様な草の蔓ごときで我を傷つけようとは片腹痛い!」


酒呑の紅蓮の鎧が赤く輝き

まとわりつく荊をことごとく溶かしていく。


「ハア、私がこの程度で終わるわけがないでしょう」






『咲き誇れ』





結果に私は内心笑ってしまいます。


ぷぷ、ざまぁ


「よしよし。あの魔法の使い方は儂も思いつかなかったぞ、流石レティじゃ。

それでどうしたのじゃ?」


と、急いで来た矢先にアリアに頭を撫でられながら褒められた。


レティシアの顔は自然と緩んでしまった。



アリアの胸のフヨフヨとした感触が惜しいですが取り敢えず要件を済ませておくことにします。


改めて全部終わった後に褒めて貰えばいいですからね。



「で?レティ?あれは一体どういう魔法なのだ?」


「あれはですね『咲き誇る白薔薇』という名称で分類的には封印魔法です」


「攻撃魔法ではなく?して、効果のほどは?」


アリアがいかにも興味津々という顔でこちらを見てくる。


「わかりやすく言うと【溶かされたと同時に氷結させる】という動作を無限にループさせる魔法です」


さらに最後の『咲き誇れ』を他の言葉に変えると発現される最終結果が大きく異なります。

例えば『散れ』は即死攻撃に変化します。


「とまぁ、こんなとこですかね?」


「さすがじゃのう、こんな面白い術式を思いつくとは」



「ぐっ!な、なんだこれは⁉︎

ぐぁ!足元から凍っていくだと⁉︎

貴様!今すぐこのふざけた魔法を停止させろ!」


「やめろと言われてやめるはずが無いじゃ無いですかぁ〜」


「…ぐっ!貴様は殺す!!犯し尽くして姉の前で女に生まれたことを後悔させながら殺してやる!!」


その言葉を最後に酒呑がレティシアの方に手を伸ばしたままの格好で凍りついた




さてさてここで疑問がでてくる。


確かに今有象無象のリーダー格の酒呑は倒した。


だが、こいつらの『』はどこにいる?


「いや〜まさかまさかここまであっさり

酒呑を倒すとはいやはや予想外だったねぇ」


そう言って酒呑の影から浮かび上がるように一人の黒いローブを着た怪しいヤツが出てきた。


「っ!」


どういうことだ?

私たちが気配に気付けなかった?


「何者じゃ貴様どうやら事情も知っておる様じゃしちょいと話を聞かせて貰えんか?」


隣でアリアがいつでも攻撃できるよう魔力を練っていく。


「僕の名前はロキ、簡単に言ってしまえばすべての元凶ってやつだよ」



「そうなのですか、ではさようなら。

『深き地獄の底に沈め・コキュートス』


すべての元凶め、アリアとの旅を邪魔した罪は重いぞ


「うわっ!危ないな!」


「やかましい、貴様どうせその体

本体では無いのじゃろう?」


「ありゃりゃ〜ばれてやんの」


「条件発動型の術式が使われています。

おそらくは、簡易型の使い魔ですね」


「うん、対象の影に潜んで情報を集めるタイプの使い魔だよ

こんなに早く見抜かれるなんてねぇ」


とおどけたように肩をすくめている。


「で?今更何の用事じゃ?」


「いや、特に用事なんて無いよ?

単に僕の遊戯ゲームの参加者を見に来たってだけさ。じゃあね」


「まてっ!」


そう言い残して出てきたときのように影に沈んで消えてしまった。






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