第4話 再会
今日は、お客が少なかった。
「悪いけど、今日はここまでにしてくれる」
近所のレストランでアルバイトをしている真知子は、オーナーに言われていつもより早く仕事が終わった。
家に帰っても、暑いだけ。
ショッピングモールでウインドショッピングで涼んでいこう。
車のエアコンはすぐに冷えず、熱いハンドルを握って、暑いままモールの駐車場に着いた。
後ろに一つに束ねた髪のおくれ毛が汗で首筋に張り付く。
ちょっとスタバでアイスコーヒーを飲もうかな。
昔、このショッピングモールができたばかりの頃、夫とデートに来たっけ。真知子はふと、そんなことを思った。こんなことを思うのは、おととい、息子と同じ名前の智にあったからだな。あの頃はまだ夫が大好きで一緒にいるのが楽しくて、一緒にいられればどこだって楽しかった。ただのショッピングモールさえ・・・。結婚してからも二人で よく出かけた。智が生まれるまでは、心から夫が好きだった。
モールの出入り口の自動扉が開くと中はひんやりと心地よく 一気に生き返った。スタバに向かおうと歩いていたら、後ろから来た人に追い越された。追い越した人が軽く真知子を見て、真知子もその人を見て、なんとなく目が合った。
「あ、れ?」追い越した人が声をかけると 同時に真知子も声を出した。
「あ、こないだの?」
目が合った人はおととい居酒屋で会った店員小林智だった。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
「買い物ですか?」
「あ、えっと、そうです」
男性に声をかけられると、いくら年下とはいえ、真知子はドキドキした。
仕事帰りの地味なブラウスにスカートが急に恥ずかしくなった。
「よくわかりましたね。先日あっただけなのに・・」
「先日?おとといの事ですよ。息子さん同じ名前なんですよね。それで覚えてたっていうか。」
シャツと短パン、サンダル履きの智は店で会った時より、若く見えたし 明るく見えた。
「あっちで買い物ですか?」
行く方向を向いて智が聞く。
「あ、えっと、暑いから、ちょっとコーヒーでも飲もうかと・・」
「あ、実は僕もスタバ行こうと思ってたんですよ。一緒ですね」
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