第11話 夢

真知子は夢を見た。

昔よく見た夢。息子の智が死んでしまう夢。溺れて死ぬ夢が一番多かった。海で川で風呂で・・・。刺されたこともあったし、がけから落ちたこともあった。それから、いなくなる夢も見た。デパートで迷子になった智を探しても見つからない夢。家族で遊園地に行ってなぜか智だけが遊園地に置き去りになって「それがきまりだから」と納得させられる夢。

智が3歳になるまではこんな悪夢に悩まされた。だんだんそんな夢を見る回数は減り、最近は全く見なくなっていたのに、久しぶりにそんな夢を見た。

息子の智が、海で、溺れてしまう夢。夢の中で、真知子は智を助けることはしない。なぜかいつも傍観しているだけなのだ。そして、死んでいく智を見ながらただ泣いている。そんな夢。蒸し暑さで息が詰まりそうな夜、汗なのか涙なのかまくらが湿っていた。

久しぶりにそんな夢を見た日、小林智から連絡がきた。

「朝、10時に、モールのスタバ付近で会いましょう」

「スタバには入らないで待っててくださいね」

昨夜見た夢のせいで、昔の死の恐怖にとりつかれていた気持ちを思い出し、そして一瞬頭をっよぎった、小林智も死んでしまうんじゃないかという不安から、断る予定だったデートの誘いに真知子は「了解です」と返信をした。

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