「なるほど。事情はわかった」


 白羽と黒羽を首に抱きつかせたまま、大きく頷く。


「うー……気持ち悪いんだな」

「いやぁぁぁぁ……おヒゲじょりじょりですのぉぉぉぉぉ……」


 二人には、幼女マフラーの刑を執行中。

 かなり邪魔だが、それがいいんだ。わからないやつは帰れ。


 そんな状態のまま、ひととおりの話を聞かせてもらった。

 龍宮ナツメというやつが、夕日に頼んで俺をここまで呼びつけたらしい。


「ようするに、俺がその水取るる子……だっけ? その女を助けりゃいいんだな」

「その通りだ。そのために雲間夕日に頼んで、キミを呼んだんだ」


 この世界の俺と、ナツメとかいう二人の融合した少女が言った。


「話が早くて助かる。今、僕に寄生しているどこぞのマヌケより、多少は出来がいいようだな」

「おまえは本当に口が悪いな! ツンデレのうえに毒舌かよ!!」

「どっちもどっちだろ。おまえら」


 我ながら情けない。


「それより急いで、お兄ちゃん。はやくしないと、るる子さんが……」

「わかったわかった」


 ナナを手で制して、絶賛おしおきタイム中の幼女たちをひっぺがす。


「ちょっとこいつら、預かっててくれ。んじゃ、ちょっと行って────」


 危険な気配を感じて、ピタリと動きを止めた。


「あちゃー……」


 こいつは間違いない。

 一番、相手にしたくないやつが来てしまった。


「そこまでだ」

「こっちの世界のキル先生ですか。どうも。いつも妹がお世話になっております」

「貴様の手出しは許さんぞ」


 社交辞令が通じない。


 しかも、今夜の先生はフル装備。

 着ている服は、八卦模様はっけもよう大極図たいきょくずが描かれた道士服。

 服の中にはあちこちに、おっかない武器をいくつも隠し持っているはず。

 超絶威力の仙術兵器────宝貝パオペエとか言うんだっけか。


 この状態だと、さすがに俺でも厳しいことは経験済みだ。


「課金アイテムはなし……って、わけにはいかないですかね」

「やかましい。貴様のようなやつ相手に、手段など選ぶ気はない」


 どうも話し合いの通じる状況ではなさそうだ。


「それで、俺はどうすればいいんですか」


 現状、この場にいる連中で先生とやりあえそうなのは、俺だけだ。


 となると、この返答しだいですべてが決まると言っていい。


「何もするな。他の連中もだ。天然自然の流れの中にあるものを変えることは、まったく許されん」

「でも、昔の幽霊話だと、ほら。予定より早く死んだから、閻魔に寿命を延ばしてもらう……なんてのが、あったりするじゃないですか」

「そういったことは、幽鬼魍魎ゆうきもうりょうのしわざだ」


 言いきられてしまった。


「それでもやる……と言い張るのであれば、この希瑠玉が貴様に麻布を着せて、泰山たいざんに送り届けてやろう!!」


 そいつはゴメンだぜ。


 残念だが、ここらでリタイアするしかなさそうだ。  

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