5
黒羽と白羽の追跡をやりすごした俺たちは、階段の前に戻ってきた。
めざすは二階の職員室。
階段を下ろうとしたとき、ナツメが足を止めた。
「なんだよ? さっさと行けよ」
「待て。四階に行け」
「なんでだ。先生の住所を調べて、家まで押しかけて救急車を呼んでもらうんだろうが。職員室は二階だ、わかるな? 説明の手間かけさせんな」
「それは────」
言いかけたところで、二階に続く階段の踊り場に、下から白い光が飛んできた。
「いたんだぞ!」
白羽の姿を目にして、迷わず四階に駆け上がる。
「部室に行け!」
ナツメが叫ぶ。
四階についた。
すぐさま曲がって、廊下の端までまっすぐ進む。
教室をふたつ通りすぎたところで、行き止まりになった。
「おい」
部室はなかった。
そりゃ当然だ。
俺が消えたことで、部室はなくなっていたはず。
「おい。なんか言え」
返事はない。
「おまえ、俺をハメやがったのか!」
叫んだ直後、背後に足音。
「ここまでですわ」
「覚悟するんだぞ」
白羽と黒羽が、そこに並んでいた。
完全に追いつめられていた。
もはや、どこにも逃げ場はない。
「そういえば……おまえら、七年前から変わってないんだな」
話しながら、二人の隙をうかがう。
なんとかして、ここから逃げ出さなければいけない。
俺にはまだ、やらなきゃならないことがある。
無情なことに、白羽は持っている剣を頭上にかかげた。
「待つですわ、白羽ちゃん!」
黒羽が、白羽の腕をつかんで止めた。
「邪魔なんだぞ」
「この人、やっぱり……お姉様ですわ!」
「おまえら……気づいてなかったのか」
あきれて物が言えない。
「俺は久垣守だ。覚えてるなら、話を聞いてくれ」
「覚えていますわ。でも……」
黒羽の手に、例の小箱があった。
「魔力を盗んだのは、お姉様だったんですの?」
「それは違う。それは……事情があって、今はこいつと同じ体だが、おまえらの国から魔力を盗んだのは俺じゃない!」
「ややこしい話は、そこまでだな」
白羽が黒羽を押しのける。
「ちみっこランドの法は、悪即斬だぞ」
「七年たってるのに、成長しないのかおまえは!」
「残念だけど、ちみっこランドの住人は成長しないだぞ」
「天国か……!?」
ときめいてしまった。
「だから、おじさんとは……ここでお別れだぞっ!!」
心の動揺を見抜かれてしまったのか。
一瞬の隙をついて、振り下ろされた刃の斬撃がうなる。
白い閃光が迫る。
その刹那、足がもつれて後ろに倒れ込んでしまった。
同時に、教室の扉が開いた。
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