3
今日も今日とて平和な朝が来た。
土日をはさんで、月曜日。
一応、俺にだって月曜の朝は生きていたくない気分になるぐらいのことはある。
うかつに能力が発動したりして本当に天に召されては困るので、あくまでポーズ程度だがな。
それにしたって、朝一番の教室は静かでいい。
机につっ伏しての居眠りも、じつによくはかどる。
気持ちよく眠りかけていたら、教室の扉がガラリと開いた。
「おはようだよっ。守くん」
るる子の挨拶に寝たフリを続けて返事する。
「おーはーよーう、だーよっ。起きて。守くん」
「おかけになった久垣守は、ただいま留守で売り切れ中です。ピーッという発信音が鳴るまでそっとしておいてあげてください」
「寝ぼけたこと言ってないで、しっかりして」
肩をつかまれ、ぐいぐい揺さぶられた。
いったい朝から何の用事があるというのだろうか。
「なんだよ。まだホームルームすら始まっていないんだぞ」
「あのね。部活のことで、伝えるのを忘れていたことがあるの」
先週と言えば、部室を作ったぐらいである。
いったい何を言い忘れたんだ、るる子は。
「顧問のことだよ。先週は、ほら。私に探してきてって、頼んだよね」
「そうかそうか。それで、なんだ。どうなったんだ。顧問を引き受けてくれそうな先生はいたのか?」
「まだ見つかっていないの。ごめんね」
「ああ。そう」
それならわざわざ朝イチで、連絡してくる必要はないのではなかろうか。
「どうしようか。守くんって、生き物は作れないんだよね。顧問が作れたらラクだったんだけどね」
「何をサラッととんでもないことを言っているんだ、おまえは」
いくらなんでも、その発想はないだろ。
せめて記憶を操作するとか、催眠暗示で顧問になることを納得させる、みたいな方向にしてほしい。
でも正直それだって、まともなやり口じゃない。
なので俺としては、そういうのは最後の手段にしたい。
「顧問もそうだが、部活の名前だって決まってないだろ。何部にするんだ」
「うーん……まずは、世界をより良くする方法を考える研究会かな。でもそれだと、もし人数が集まって同好会から部活になれたら、世界をより良くする方法を考える部になるのかな。どうなると思う?」
「それ以前に、長い。どっちも」
よくまあ、これだけ
こいつ絶対、勢いだけで生きている。
その点だけは、まったく頭が下がる思いだぜ。
「わかったわかった。昼になったら相談するか」
「そうだね。そのほうが、夕日ちゃんの意見も聞けるよね」
なんで人間以外から意見なんか聞く必要があるんだよ。
「待て待て。あいつも部員にするつもりなのか、おまえは」
「そうだよ。何か問題ある?」
問題大アリ以外の言葉が出てこない。
だいたい、あいつは幽霊みたいなもんだろ。
そんなやつを部員にしたら、それこそ文字通りに幽霊部員だ。
うまいこと言いたいだけなら、お笑いコント部でも作っていやがれ。
もう俺どうしたらいいんだろう。
反論する気力がさっぱり湧いてこないぞ。
なんだか考えているだけで、頭が痛くなってきた。
「いろいろ言いたいことはあるが、こまかいことは昼に部室で相談しよう」
「オッケーだよ。みんなでお昼食べながら考えようね」
るる子はひたすらお気楽だった。
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