だい17にゃ・語り継がれる猫耳像

『ぎゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる!』


 15個のドリルを召喚して岩を削っていく。


「にゃ~……」


 シャオたんが退屈そうに鳴きながら、ポーズを取り続けている。

 今はシャオたんをモデルに石像を製作中だ。

 上手くいけば全長10メートルぐらいのシャオたん象が出来上がるだろう。


「はーい。大人しくしててねぇ~」

「にゃぁ~ん……」


 大雑把に削る作業を5個のドリルだけにして、残りは細かい作業をさせるためにドリルを小さくする。

 頭の中で15個もの個別に動く魔法を処理していく。

 じっとしていれば結構出来るようになってきた。逆に、僕が動き回って魔法を使う場合は6個ぐらいが限界だと思う。


「ここはこうかな? うぅ~……ん。ここはもう少し削ろう」


 頭の中でイメージしながら、シャオたん像の頭上から制作していく。

 顔の細かい部分には5個の小さなドリルを使って整えていく。

 髪の流れを表現するのに3個、首筋の表現に2個小さなドリルを使う。

 大きなドリルは今、体のラインを大雑把に削っていっている。


「目尻はこのくらいかな? そろそろヒップラインも作っておかないと……」


『ガリガリガリ! ギュルルルルルルルルギュルルルギュルルルルルル!!』


 徐々に全体像が見えてきた。

 さらに細かく削っていく。服は何時もの布で十分だろう、その方が萌える。


「ぐっふっふ! ここはこのくらいかなぁ~、おっひょひょ!」


 次は全体的な細かな調整をおこなう。


「なかなかいい出来だ! よし! 仕上げといこう」


 石像の表面をツルツルになるように最後の仕上げをしていく。

 ドリルの先端を円盤状にしての仕上げ、これで抱きついても痛くないだろう。


「で、でけた!! でけたぞぉ!!」

「にゃ~ん」


 目を輝かせながらシャオたん像の足に飛びつく。


「おほっほ! 滑らか滑らか!!」


 抱きつきながら頬をすりすりすりすりすりすりする。


「はぁはぁ……今日は同衾どうきんしようね!」


 途轍もなく穴を空けたい衝動に駆られるが、この芸術作品に穴を空ける事に戸惑いが出る。

 今日はぶっかけるだけで押さえておこう。

 あ、立たなければ出もしないんだった……チクショウ。


「にゃー! にゃんにゃー!!」

「ん? メロンお姉ちゃん?」


 メロンお姉ちゃんが慌てた様子で走ってきている。


「にゃー? にゃん?」

「にゃん! にゃーにゃんにゅにゃん!」


「にゃん!? にゃ! にゃんにゃんにゃ!」


 シャオたんが慌てて僕の手を握って引っ張って走り始めた。


「わ! わわ! ど、何処いくの!?」

「にゃ! にゃんにゅー」


 メロンお姉ちゃんも後ろから僕達を追って進んでいく。



 =☆=★



 辿り着いた先は水浸しだった。

 正確には村から少し離れた川。その川が氾濫して辺り一帯を飲み込んでいた。


「あわわわ、こりゃ酷いね……」

「にゃー」


『トントン』とシャオたんに肩を叩かれる。

 もしかして、この川をどうにかしてほしいんだろうか?


「う~ん、そんなことやったことないし出来るのかな??」


 どうやろうかと考えていると、メロンお姉ちゃんがにゃんにゃん言い始めた。


「にゃぁー! にゃん!! にゃん!!」


 僕の息子えどもんどを引っ張りながら指を遠くへ向ける。


「ちょ! ま、まって皮被っちゃうから!? な、何なの!?」


 指を指した方向を見ると、川の中州に生えている木の上に登って助けを求めている猫耳少女がいた。

 既に中州は川の氾濫に巻き込まれて濁流に飲み込まれている。

 流れが速すぎて助けに行けない。


「あわわわ! どうしよう!?」

「にゃん、にゅにゃー」


 シャオたんがぽんぽん杖を叩く。


「そうだね、魔法で何とかしなきゃ」


 でも、どうやって助けよう?

 攻撃魔法ぐらいしか使ったことないぞ、いや、回復もあったか。でも今じゃ役に立たないかな?

 そういえば、前に木を浮き上がらせて事があったような……?


「よし! ふんぬぬうぅ!! ふぬぬぬぬぬぬぬぬうううぅうぅうぅぅ!!」


 杖を木に向けて構えて魔法を使う。


 猫耳少女がプルプルしながらしがみ付いている木を、ゆっくりと持ち上げていく。


「ぐぬぬぬぬ!!」


 女の子を振り落さないように慎重に運んでいると、


「にゃ! にゃにゃ! にゃーーーん!」


 と、木から落っこちて行った。


「ふんぬぬ! テレキネス!!」

「にゃーーー……にゃん?」


 濁流に落ちる寸前で女の子だけを浮き上がらせる。


「最初っからこうしとけばよかったな」


 ゆっくりと女の子をこっちに寄せてから地面に下ろす。


「にゃ! にゃ! にゃ!」


 猫耳少女がにゃんにゃんと喜びながら、僕にだいしゅきほーるどをしてくる。


「おぉ~、よかったな~」


 猫耳をもふもふしながら怪我が無いか確認する。

 特に目につくような怪我は無かったみたいだ、それじゃサッサと治水しますか。


「土さん土さん。僕に力を貸してちょ」


 まずは川幅を広げる、次は川の流れを緩やかにするために緩やかに蛇行した道を作る。

 それでも溢れた時の為に、猫耳ちゃんたちが住んでいない方向にも通り道を作っておく。


「ふぅ……こんなもんかな?」


 最後に防波堤でも作れば大丈夫だろう。

 防波堤を作る知識は無いけど、深めの穴掘ってから大きな壁で塞いで、壁には下層、中層、上層に穴を空けて川の水を放水できるようにすれば大丈夫かな?

 失敗した時は失敗したときで、その時にまた別の方法を考えよう。


 さて、後は他にも被害が無いか視回ってから小さな石人形でも作ろうかな?


 僕は猫耳少女にだいしゅきほーるどされたまま歩き出す。


「にゃんにゃん! ちゅっちゅ!」

「おっふ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る