だい14にゃ・四つ目の巨人

 僕の目の前には銀色の巨人が向かって来ている。


「にゃん」


 シャオたんが僕の杖を馬車から持って来てくれた。


「ありがとう」

「にゃんにゃぁー」


 猫耳少女たちに見送られながら、僕は巨人に向かって歩いていく。

 最初の巨人もそうだったが、こいつらは徐々に宮殿に近づいてきている。たぶん、放置していたらそのうちに僕たちの住んでいる村にまで、巨人が来てしまうだろう。


「あの時の僕とは一味違うぞ巨人!」


 まだだいぶ巨人とは距離があるが、ここからなら魔法が届くはず。


「ふん! 土の精霊よ! 僕に力を貸し与えてくれ! 土よ! わが言葉に従え!」


 魔力を使って僕の周りの地面から石を浮き上がらせる。

 それを、一か所に集めて螺旋状のドリルを作る。


「飛べ! ストーンショット!!」


 10個のドリルを空中に浮かべて、巨人に向けて一斉に飛ばす。

 ドリルは銀色の巨人に当たって胴体を削るように回転し続けるが火花が散るだけだった。


 僕の体から離れた事によって魔力が尽きたドリルが一つ、また一つと地面に落ちていく。

 体に接触している魔法なら僕の魔力が続く限り魔力を補充できるが、体から離れてしまうと補充するすべが無くなってしまう。


「……まだまだ」


 両腕を大きく広げて手の平を地面に向ける。


「ふんぬぬぬぅぅぅ!」


 放出出来る限界まで魔力を出して、地面に送る。

『パチ……パチパチ』と、音を立てながら手の平から魔力が放出される。


 大きな音を立てながら地面から岩が浮き出て来た。


「ロックキャノン!!」


 勢いよく吹き飛んでいった岩が巨人に激突する。

 だが巨人は大きく仰け反っただけで、ほぼ無傷だった。


「ストーンショットガン!!」


 地面からさらに岩を掘り出して、粉々にしたものを発射させる。

 細かい傷をつけられたが、これも効果的ではなかった。


「ふむむ……」


 前に練習したときの魔法を思い出して、少し変わったことをやってみよう。


「土よ! 炎よ! 力を貸してくれ!」


 人一人を覆いつくせるほどの大きさのドリルを出してから、周りに炎を纏わせる。

 さらに内部にも炎を内蔵してある。二つの魔法の複合技だ。


 杖を巨人に向けて、炎の螺旋ドリルを飛ばす。

『ギュルルルルルルルルルルルル!』と、けたたましく回転しながら、炎の螺旋は火を噴きながら高速で吹っ飛んでいった。


 火の螺旋が巨人にぶち当たると、激しく火花を撒き散らしながら体を削っていく。

 周りに纏った炎と回転力で目に見えて穴を空けていく。


「ふふふふ! 穴だらけにしてやるからなぁ!?」


 さらに炎の螺旋を作り出して飛ばす。

 巨人の膝に命中して、そこから削り始める。


「まだだ! まだだぞ! 穴だらけにして突っ込んでやるからな!!」


 ふふふふ。楽しみだ。

 この巨人の穴はどんな快感を僕に与えてくれるのだろうか?


「おっふぅ! おっふぅ!! 考えただけでたぎってきたぁ!!」


「来い! 雷よ! うっふふふふぅぅぅ!」


 掲げた手に雷で出来たドリルが出現する。


「回転回転回転回転!!」


 徐々に早く、高速に回転させていく。

『バチバチバチ』と激しい音を立てはじめた。


「吹っ飛べ!! サンダーボルト!!」


 勢いよく飛んで行った雷の螺旋が、巨人の体を突き抜けていった。

 丸く開いた風穴の周りはドロドロと銀色の液状になっている。


「しゅ、しゅごい! でも、あれに突っ込んだら火傷しちゃう!!」


 あぁん! でもちょ~っと気持ちよさそうだなぁ~。

 はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……。


「はぁはぁ……ん! もうらめぇ! たぎってきちゃうのぉー!」


 さらに魔力を籠めて雷の螺旋を四つ出す。


「はぁはぁ……も、もっといっぱい穴だらけにしてあげるからねぇ!!」(うっとり)


 雷の螺旋を高速回転させながら、一つまた一つと飛ばしていく。

 飛ばし終えたら直ぐに追加で増やしてまた飛ばす。


「ん! ん! しゅごいぃい! あ、穴だらけなのぉぉぉぉ!!」


 無我夢中で繰り返していたら、巨人は見るも無残な姿になっていた。

 体は風穴だらけで、そういったオブジェに見えなくもないような外見になっている。


『ズゥゥーーン!』


 そしてとうとう大きな音を立てて銀色の巨人が倒れた。


 僕は走り寄って近づく。

 そして目を爛々らんらんに輝かせながら穴を見詰める。

 ドロドロに溶けている穴を見て身震いした。


「あぁん……もう我慢できない……」


 僕はすでに剥き出しの息子くれおーんを恐る恐る穴に近づける。

 熱気が伝わってきた。


「あ、温かそう!」


 グイっと腰を突き出して息子じゃくそんを穴に押し込む。


 おぉ! おおぉおぉお! おおぐおぐぐぐぅぅぅぅ!!


「あっっっっつ!!」


 アッツ!! こ、これは熱いぃぃ!!

 だ、だがいつかこの熱さも快感に変わる様に鍛練しなくては!?

――っうぅ! 氷を……。


『ふぐぅ! おふぅ!』と言いながらゴロゴロ転がる僕を、猫耳少女たちが担いで馬車に詰め込んでいった。

 こうして僕は二体目の巨人を倒すことが出来たのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る