エピソード50 「そして僕と美少女達は今まさに死地の真っ只中」
午後26時、
フランス、ノルマンディー地方・南部
町から10km以上離れた、海岸沿いの寂しげな牧草地帯に、まるで戦場の様な、断続的な銃撃音と爆撃の轟音が、鳴り響き、…
朧げな屋敷の灯火と、塀の上から周囲を捜索するサーチライトの光線が、底無し沼の様な闇の草原に、異様な緊張感を浮かび上がらせる、…
暗闇の中で、M249 Para ミニミ軽機関銃の銃撃が、まるで火炎放射器の様な赤い残像を描き、…アミューズメント・パークのイルミネーションにも似た幻想的な爆発の閃光が、大放出の花火の如く艶やかに、夜空を彩る。
ひときわ、大きな爆発音が、下腹に重く共鳴し、…
最新の耐震・耐爆撃技術を施された、見た目「ロマネスク建築」の屋敷が激しく軋んで、内壁を崩し零し、天井から、
一人の、眼鏡少女が、
地下二階の、「手術室」と書かれた大きなドアの前で、一人、廊下に座り込んだまま、じっと、刻が満ちるのを待っていた。
芽衣の、彼女の、胸の奥では、恐怖と、そしてソレとは明らかに異なる別の感情が、熱く、早鐘の様に、動悸を高鳴らせている。
彼女には、自分がどうすべきかと言う事など、もうずっと前から解っていたのだけれど、だからと言って、瑞穂や朋花の様に、自ら進んで「敵」に立ち向かって行く様な勇気を奮い立てる事は、出来そうにも無かった。
芽衣は、彼女は、ただ、体育座りの膝に顔を埋めて、刻が来るのを、待っていた。
しかし既に「愛おしいヒトを護りたい」と言う彼女の気持ちは、幾重にも精錬され、極限迄に純度を高めて、…
そして、その刻が訪れるのは、もう、直ぐに、違いなかったのだ。
屋敷の地下一階に設営された、超近代的な「指令室」では、
全世界から招集された、超一流の科学者、軍人、宗教家達が、大いなる興奮を持って、敷地各所に配置されたカメラや、センサー類から送られて来る、膨大なデータの解析に当たっていた。
このチームは、アリトアラユル超法規的な特権と予算とを、自由自在に行使して、「世界中からノミネートされた14万4千人の人間を「新世界」に生かし続ける事」だけを目的として結成された、超国家組織の一員であった。
現在、彼らが対峙しているのは、かつて人類に希望を
そして、幸運にも今夜、此処に集う者達が体験したのは、「科学と言うものが適用される範囲は極めて限定されている」という事実の再確認であり、「コレ迄の量子物理学の限界とか禁忌と言われ続けて来た「おとぎ話」」が
〜本編〜
屋敷の見晴台の上から、或いは壁の銃眼から、兵士達が、…何ら武装もしていない、極普通の、
既に、屋敷の周りには、塀を取り囲む様に累々と、数百人に及ぶ死体が転がっていた。
にも関わらず「取り憑かれた人々」は、まるで撃ち殺される恐怖など微塵にも感じていないのかの様に、ゆらゆらと、ゆっくりと、無言のまま、屋敷に向かって、押し寄せる。
そして何発目かの照明弾が上がり、
夢遊病者の様に徘徊する「人々」の傍らに付き従う「異形」なモノを浮かび上がらせる。
あるモノは、アフリカやアマゾンに棲む動物の様で、
あるモノは、見慣れない深海生物の様で、
あるモノは、まるで神話に出てくる想像上の生物の様で
何れにしても、凡そこんな所には似つかわしくない「場違いな幻覚達」が、
実体の無い陽炎の様な、ブラウン管のノイズの様な
物言わぬ「人々」の行進に、寄り添っていた。
ただひとつ、不思議な事には、
いや、既にこの全ての状況が、たくさんの異様に塗れているのに違いないのだが、
それでも尚、奇妙な事には、それら「異形」のモノ達は、
屋敷を取り囲む高い煉瓦の塀から10mまで近づくと、ピタリと、それ以上は近づけなくなって、行進を諦めて、ざわざわと立ち止まるのだ。
まるで何らかの「人智を超えた決まり事」に従うかの様に、「ソレら」は、地面に引かれた赤いペンキの線を越えて、それよりも内側には、入っては来れないらしかった。
しかしやがて、一頭の「ピンクの豚」と、それに跨る「グラマー女」とが、均衡を破る。
「ピンクの豚」は一歩、前に、進み出て、…
ふらふらと赤いペンキの線に近づき、鼻を付けて、しきり匂いを嗅ぐと、…
鼻に触れた「地面」が、途端に、ひび割れて、…
ばらばらと、剥がれて、空中に、…
舞い上がり始めた!
そして、削りとられた、地面の中から現れる、…数本の赤い、「紐」
それは、その「赤い紐」は、どうやら、
地下50cm程の深さに、ぐるりと屋敷を取り囲む様に、埋没されているらしかった。
「ピンクの豚」が、「赤い紐」を覗き込み、…
次の瞬間!
銀色のクリア
全幅1.5m×全長3m程度×厚さ1mの略直方体の下に、回転する台座を有したバギーの様な6輪を有し、直方体の上には、潜水艦の艦橋にも似た楕円柱状の上半身と、その両脇には二本の腕が、付いている。 艦橋部の横にはD-Body-117-HJ-009と識別記号がペイントされていた。
パイロット:「Target Lock on, Fire!(目標、確認、撃ちます!)」
そして、間髪要れず、その片腕に保持されたブローニングM2重機関銃を、
「ピンクの豚」に照準して、…高速連射する!
銃声:「「ダゥ!ダゥ!ダゥ!ダゥ!…ッ!…」」
最新鋭の照準システムは、D-Bodyの操縦者が「見たもの」に正確に着弾する、筈であるにもかかわらず、何故か全ての銃弾は、「ピンクの豚」に到達する寸前で、地面に叩き落とされる様に、…墜落する!
D-Bodyは少しずつ射撃位置を変えながら、「ピンクの豚」ならびに「グラマー女」への攻撃を継続する、しかし、あくまでも赤いペンキのラインから、外側に出るつもりは無いらしい。
パイロット:「Ineffective!(効果無し!)」
パイロット:「117-HJ-9 is going to shoot FGM-148!(117-HJ-9号機、FGM-148=ジャベリンを使用します!)」
D-Bodyは、機関銃からジャベリンに持ち替えて、…ダイレクト・アタックモードでミサイルを発射!
ところが、「ピンクの豚」に目掛けて放たれた対戦車ミサイルは、
悲鳴の様な「豚」の鳴き声に合わせて、誰も、何も、手を触れていないにもかかわらず、まるで叩き落される様に地面に堕ちて、そのまま地面に、…減り込んだ!
そして、…地中で爆発する、ミサイル!
爆発音:「「「!ド… …ン!」」」
意図せず、
局地的に封じ込められた爆風が、地中に埋没されていた「赤い紐」を、…
焼き千切った!
そして、辺りの空気が、一瞬で、匂いを、…変えた。
もう一度「ピンクの豚」が
その途端に!
D-Bodyの機体が、まるで巨大なプレス機に押し潰されたミタイに、ぺっちゃんこに、…
ひしゃげた!
異音:「「ブチュ…ァアア……!」」
金属の裂け目から、吹き出す、操縦者の、…体液!
そして、まるで
「異形」の行進が、赤い紐の「裂け目」へと、…押し寄せる!
ところが、しかし、更に5mほど進んだところで、再び「異形」は躊躇する。
まるで其処に「目に見えない壁」でもあるかの様に、…
しかし交通渋滞よろしく、後続する団体は直ぐには、…止まれない。
「ニュートンの揺り籠」の要領で押し出された「ピンクの豚」が、不幸にもその「ライン」を超えて、香ばしい煙と、肉の焼ける匂いと共に、悲壮な悲鳴を、…振り絞る!
ピンクの豚:「ピギャアアァ…!!」
と、次の瞬間!
「ピンクの豚」に跨がった「グラマー女」の耳の直ぐ傍で、…
銃声が響いた!
銃声:「パン!」
ギスギスの坊主頭をした女が、…
ピエトロ・ベレッタ92FSを、ホルスターに仕舞う。
側頭部を打ち抜かれた「グラマー女」は未だ痙攣しながら地に落ちて、
それで、「ピンクの豚」は、煙の様に分解して、…宙に消える。
やがて、「グラマー女」の方は、そのまま動くのを止めた。
兵士:「Are you OK? (大丈夫ですか?)」
暗視スコープを装着した兵士が、ギスギス女の元に駆け寄る。
蟷螂:「No problem. Check and report to the Control a situation of Kekkai broken. (ああ、「結界」の損壊状況をチェックして、司令室に報告するんだ。)」
兵士:「Roger! (了解!)」
蟷螂:「Pick up bones to truck.(女の死体をトロッコに載せろ!)」
司令室
管制官:「The first kekkai at west block3 might be down. (西側の第一結界の一部が、破壊されたようです。)」
管制官:「Kekkai -string working status is on the screen. (結界糸の破損状況示します。)」
軍服らしい制服に身を包んだ、ハンサムな管制官が、部屋の前方中央に設置された大画面に、屋敷周辺の地図と、ソレを取り囲む赤いラインを映し出す。
「結界」と日本語で呼ばれた「赤いライン」は、屋敷の塀から10m、5m、そして塀の内部に配置されており、一番外側の「第一結界」の破断位置が、点滅で示されている。
どうやら、何らかの「ルール」があって、あの「異形」達は、この「結界」を容易に越える事が、出来無いらしい。
背が高くてほっそりとした、所謂、…「おねえ」が、何故だか、ハンサムな管制官の肩に、そっと、…手を乗せる。
山猫:「そう、もう、長くはモチソウモ無いわね、」
山猫:「部隊撤収用の地下鉄をスタンバイさせておいて、」
管制官:「Already done, anytime OK. (いつでも行けます。)」
山猫:「出来るだけ粘って、たくさんサンプルを回収してよ。」
屋敷の南側、
赤いペンキの直前で、一組の「男女」が、ふらふらと、ゾンビの様に徘徊している、
過呼吸で、白目を剥いて、…涎を垂らしながら、
そして、男女の足元、地面の下が蠕動し、ひび割れから、大量の巨大な「ワラジムシ」?「オオグソクムシ」? が現れる。
その数、凡そ5000匹?!
地面を、ぼろぼろと食い荒らし、侵食し、大量のフンに変えていく、体長15cmの「巨大ワラジムシ」の大群!
次第に、赤い「結界糸」が剥き出しになり、
じゅわじゅわと焼き殺される、「巨大ワラジムシ」達、…だが、
10匹、20匹殺された所で、屁とも思わないらしい。
巡回中の小型D-Bodyが2台、暗視装置で男女を捕らえて、…
直ちにM2機関銃を掃射する!
銃声:「「ダゥ!ダゥ!ダゥ!ダゥ!ダゥ!…ッ!…」」
頭部を吹っ飛ばされて、ひっくり返る「男」!
「女」が、D-Bodyに気付き!
50匹が捨て身で引き千切った「結界糸」の隙間から、1000匹を越える「巨大ワラジムシ」が突進!
「女」への攻撃よりも一瞬早く、D-bodyに襲い掛かる「巨大ワラジムシ」!
マシンガンの銃撃も、掻い潜り、D-Bodyの機体に取り付いて、…よじ登る!
堪らずD-Bodyのハッチが開き! 中から脱出してくる兵士!
兵士:「Help!(助けて!)」
既に下半身を「巨大ワラジムシ」にウジャウジャ
あっという間に、…食い尽くされている。
もう一台のD-Bodyが背後に背負ったボンベから、
特殊なゲルと混合して「粘液泡状」になった液体窒素を、…吹きかける!
死亡した兵士の体ごと、凍結されて、動きを封じられる、…「巨大ワラジムシ」
D-Bodyパイロット:「What are these! (何なんだ、こいつら)」
歩兵:「The first Kekkai was down!(第一結界が破られたようです。)」
歩兵:「Another Enemy is on its way!(別の敵が来ます!)」
第2結界の内側に退却して、小銃を構える兵士達!
その前に、とぼとぼと、闇の中を歩いてくる、…「老紳士」?
意識がはっきりしている様で、他のゾンビとは、雰囲気が、違っている??
パイロット:「Is that human being? (人間か?)」
歩兵:「Freeze!(とまれ!)」
ところが、問答無用で、「老紳士」の目から、怪光線が、…放たれる!
セラミックとチタニウムから構成されるD-Bodyの複合装甲が、いとも簡単に、…両断される!
パイロット:「Back away! (さがれ!)」
第2結界の内側へと、退避するD-Bodyと歩兵!
「老紳士」が、再び光線を放って、攻撃するが、
何かに阻まれて、第2結界の内側に居る兵士達には、効果を、…及ぼさないらしい。
歩兵が、M4カービン(アサルトライフル)を「老紳士」に照準して、
5.56x45mm NATO弾銃弾を、…連射する!
が、「老紳士」は一向に、怯む様子が無く。
身体中に
歩兵:「It’s a monster!(化け物め!)」
「老紳士」は、兵士達の足元、第二結界の埋まっている地面に向けて、…
「目からビーム」を、…発射!発射!発射!
ミルミル地面を、…裂き砕いていく!
やがて、崩れた地面から露出する、…赤い紐!
「老紳士」は跪いて、その指で赤い紐に触れる、…と、
指がぐずぐずと、火傷の様に爛(ただ)れて、…煙を上げる。
老紳士:「étrange. (不思議だ、)」
更にもう一機のD-Bodyが急行し、「老紳士」に向けてM2機関銃を連射する!
銃声:「「ダゥ!ダゥ!ダゥ!ダゥ!ダゥ!…ッ!…」」
パイロット2:「Protect Kekkai-strings!(結界糸を護るんだ!)」
バス!バス!と乾いた音を立てて、「老紳士」の身体を、ズダズダに引き裂いて行く、
12.7mm×99通常弾!
が、しかし、尚も「老紳士」は涼しい顔で胸ポケットから携帯電話を取り出すと、…
通話する。
少し離れた丘の上に、…一人の幼女が、佇んでいた。
彼女は、鼻歌を歌いながら、
田舎町の夜空に繰り広げられる「場違いな」花火ショーを、食い入る様に、眺めている。
やがて、
幼女に付き添って居た大人の女?、が持っていた携帯電話の着信音が、鳴って、
女は、二三言、何かを話し、…
それから、…
幼女に耳打ちする。
それで、
幼女がお尻を叩いて、立ち上がり、
闇の中で少女の影が、立ち上がる。
「影」は、夜の闇の中で尚暗く、深く、大きく、伸びて、拡がって、…
暗闇の草原に、体長200mの「ダイダラボッチ」が、…
出現した。
司令室
管制官:「Number238 Video Camera is on the screen.(映像でます!)」
管制官:「It does not react to infrared rays.(赤外線に反応しません、)」
それは、闇夜の空に、更に暗い「闇の色」としてしか、…
認識出来ないらしかった。
山猫:「熱を発していないと言うの? あんな巨大な物が?」
体長200mを越える、
塀の上の見晴し台から、D-Bodyが、ジャベリンを、発射する!が、…
ミサイルは、まるで影だけの「ダイダラボッチ」の身体を突き抜けて、行き先を…
見失う!
山猫:「撤退するわよ、2分で、地下鉄を発車させなさい。」
ピンクのジャージに身を包む「オネエ」の号令と共に、アタフタと司令室のスタッフが飛び回り、蜘蛛の子を散らした様に、…撤収する。
山猫:「「化け物」相手に、我々は未だ未だ無力だって、事ね。」
山猫:「後は、任せたわよ。」
「ダイダラボッチ」の巨体が揺らめいて、牧場の丘が、…
ゆっくりと、たっぷりと、頭上400mの高さ迄持ち上げられた「地面の塊」が、
その、長い長い腕の一振りで、
遥か、数kmを越えて、
「山猫のアジト」だった「ロマネスク建築風」の屋敷を、…
直撃した。
朋花:「何? 今の!」
翼長24mの「真紅の翼竜」に跨がったグラマー美女が、
思わず後ろを、振り返る。
空中旋回する「ケツアルコアトルス」の、僅か10数m横を
大体100m×30m位の巨大な地面の塊が、
飛んで行った!
それで、そのまま屋敷の塀を辺りの地面ごと、…
粉砕する!
当然、結界糸など、ボロボロに千切れて、役に立たなくなる。
朋花:「翔五クン、大丈夫かな!」
と、一瞬、気を逸らした朋花に目掛けて、
拳大の「雹」の塊が、超音速で!…襲来した!
氷の弾丸が「ケツアルコアトルス」の頭部と翼を粉砕! 地上800mで、…
空中に放りだされる、朋花!
朋花:「よくもぉ! やってくれたわね!」
粉砕した「ケツアルコアトルス」は、そのまま微塵に分解! 「火の玉小僧」に変身!
低空から、朋花目掛けて襲いかかって来た、数匹の「ガーゴイル」に、…ヘバリツキ!
発火!!!
轟音:「「「パーー…、 …ーーン!」」」
夜空に、乱れ撃ちの如く、花火が炸裂!
真っ暗なノルマンディの海岸沿いの牧草地帯に、…超新星の様な眩い輝き!
数百万℃? 恒星コロナ並みの超高熱の「光の圧力」が、
夜の闇を、…
弾き飛ばす!
朋花:「きりが無いなぁ〜」
「火の玉小僧」が炸裂した照明弾が、闇夜を照らし、
朋花は、落下しながら、器用に宙返りして、
上空200mに、出鱈目にも空中に静止するイケメンの姿を確認する!
その男、
身長は190cm超、細く編んだドレッド・ヘアは肩にまで届く長髪、鋭い目付きに精悍な貌付き、鍛え上げられた全身の筋肉が、襟無しの白い麻のシャツをパンパンに弾き上げている。
そして、その背中には、3対6枚の翼が、
朧げに光を放ちながら、陽炎の様に、…揺らめいていた。
朋花:「見つけたぁ!」
再び、落下中の朋花を、無音=超音速の「雹」が襲撃する!
朋花は、キースの居る上空に向かって、
焚き火から舞い上がる火の粉の様に…
大量の火の玉小僧を、舞い上がらせる!!
朋花の上空に発生する、眩い光の弾幕!!
発火!!!
轟音:「「「パーー…、 …ーーン!」」」
「火の玉小僧」達は、キースの放った「雹」のミサイルを一瞬で蒸発?昇華?させて、
その残存部隊は、尚も上昇!!!
キースの身体に取り憑いて、…
発火!!!
轟音:「「「パーー…、 …ーーン!」」」
純粋な「熱」に飲み込まれて、消滅するキースの肉体!
落下しながらも、光の残像に消えたキースの行方から目を離さない朋花!
墜落=地面との衝突の寸前で、真紅の「ケツアルコアトルス」が再生!
朋花の身体を引っ掴んで、…
上昇する!
突然、闇夜に発生した、数十秒の超新星爆発ショーに、
じっと、見蕩れている男が、…一人
長身の清潔そうな「知的男子」
短く刈り上げた髪と、彫りの深い欧州人顔、きちんと整備された筋肉、綺麗な姿勢と心地よいオーデコロンの薫り、
しかしその瞳には、凡そ一切の慈悲と言うモノが、欠落している。
そして、その男の背中にも、
朧げに光を放ちながら、陽炎の様に、揺らめく、…3対6枚の翼
瑞穂:「アンタ、なに余裕カマシてんのよ!」
体長30m(何時もより5割増!)の「巨大ゴーレム」が、
岩石の軋む様な唸りを上げて!
ディビッドは、涼しげな顔で、空を飛んで、「巨大ゴーレム」の攻撃を躱し、
瑞穂:「ちょこまかと! ムカつく!!!」
それから「巨大ゴーレム」の差し伸ばした両腕は、ボロボロと崩れ、分解すると、…
そのまま、砂塵の竜巻となって、上空のディビッドを、…
追跡する!
そして、
天空に出現したオーロラの様な光の帯が、ウネリながら、…降りて来る、
ディビッドが瞬間的×局地的に集束させた「地磁気」は、空宙に美しい「フレア」を発生。 まるで舐める様に空気を焼いて、…
迫り来る「砂龍」を、…燃え上がらせた!
と、なんだか突然、乱入して、瑞穂の背後から襲いかかって来る!…
「七面鳥」?
超高速で、疾走し、
奇妙な、いや危険な「雄叫び」を上げる!
返す刀で出現する、黒曜石のプレパラートが、瑞穂を護る!
黒曜石のプレパラートは、「七面鳥」が発する「モノを腐らせる声」の盾となって、グズグズに腐って、…墜落する!
瑞穂:「何なの! こいつ!」
そして、挟み撃ちの様にディビッドのオーロラ攻撃!
ゆらゆらと輝き、
瑞穂の逃げ場を奪う!
瑞穂:「あああああ…!、鬱陶しい!」
瑞穂は天に向かって手を差し伸ばし!
地面に出現する!
巨大な黄色い魔法陣!
瑞穂:「言っとくけど、砂の中で、私に勝てると思わないでよね!」
地震の様に、大地を揺るがせて!
出現する、追加2体の…、
体長20mの「ゴーレムB」、と「C」、(最初のがA)
当然「ゴーレム」の中には、それぞれメガテリウムが入ってる…はず??
まあ、細かい事はさておいて、
瑞穂:「やって、おしまい!!!」
「ゴーレムB」、「C」、それぞれ、てんでバラバラに、独立連動して、
ディビッドと、「七面鳥」に襲いかかる!
「ゴーレムB」が、「七面鳥」を叩き潰し!
「ゴーレムC」が、ディビッドに飛びかかる!
ディビッド、飛翔して、更に上空に逃げるも、、
瑞穂:「逃がすか!」
「ゴーレムA」(体長30mの一番でっかい奴)の肩に乗っかった瑞穂が、…
ディビッドを追う!
瑞穂の後方に出現する!
孔雀の羽の様な、黄色い小さな魔法陣群!
其処から、飛び出した、数十本の黒曜石のナイフが!
ディビッドの身体を、…
引き裂いた!!!
白鳥の様な翼を展げた、3人の全裸の美女達が、舞う様に夜空を飛翔して、…
やがて、次第にその輪を狭めながら、…
狙いを定めた獲物に向かって、…
襲いかかる!
アリア:「雑魚は! 引っ込んでなさい…!!」
まるでメルカバーの様に、空中を自在に飛翔する、
そのゴスロリ美少女が、
逆立てた美しいウェイブから、閃光の様な電撃を放ち!
あっと言う間に、3人の「ニュンペー」(セイレーン達)を撃墜する!
続いて出現する、「ガーゴイル」!
間髪容れず襲いかかる、「空飛ぶクラゲ」!!
次々に現れては、降り掛かる「聖霊」達を、
アリアは、巧みに躱しつつ、上空へ向けて飛翔スピードを増しながら、…
すれ違いざまに、強力な電撃で、…
迎撃し続ける!
アリアの、上空、行く手には、…
まるで
イアンが、可愛らしくその指を降る度に、…
召喚された「聖霊」達が、アリアに向かって、襲いかかる!
イアン:「君は本当に素晴らしいよ!」
イアン:「生身で空を飛べるなんて、まるで「天使」みたいだ!」
行成り出現、落下する「ツキノワグマ」?の様な「聖霊」を、アリアの電撃が弾き飛ばす! そして、残骸をかいくぐりながら、尚もイアンの元へと、…飛ぶ!!
アリア:「貴方に出来る事位、私にだって出来るに、…決まってる!」
イアン:「あれ? そう言う物なの?」
イアンは、微笑みながら、
アリアに捕まる、その一瞬前に、…
瞬間移動する!
更に上空、既に高度は10000mを越えて、
雲を抜けた、満点の星空の元に出現する、揚羽色の、…男の娘。
その、イアンのさらに上空20mに、瞬間移動で出現する!
アリア!!!
アリア:「今日こそは! 許さない!」
イアン:「君は「聖霊」としては、強くなり過ぎたよ。」
アリアの方を振り返った、イアンの背後から!…
行成り、出現して、襲いかかる!
体長10mの、白い虎!
「白虎」の巨大な牙が、細いイアンの首を、あっさりと、…
噛み千切った!
そして、白虎」は1000GWの光の束を、…放電して!
一瞬で、小さな男の娘の身体が、…爆発!、する!
破裂音:「「「!!パシャーー… …——ンン!!」」」
地下鉄?のプラットホームに、切れ掛かった蛍光灯が明滅している。
白い、タイル貼りの壁の一画が、ボロボロと崩れて、落ちて、、
中から一人の男が現れた。
長髪ロングのウェット・ウエィブ、 シャープでセクシーなスペイン人顔に、誘う様な視線。 広い肩幅に分厚い胸板、そしてシックスパックの腹筋。 だからと言って、決して過ぎたマッチョではなく、程よく浮き出た鎖骨。 そして余す処なく自らの色香をアピールする、開はだけたシャツと、…イチイチな仕草しぐさ、
一言で言えば、…ナルシスト
まさに下々を見下すかの様な視線で、不敵な笑みを浮かべている。
アリスターは、ホームに転がった瓦礫を踏みしめて、レールの上に降り立ち、
地下鉄の残響が走り去ったばかりの、暗いトンネルの行く先に、…目を凝らす。
辺りには、他に動くモノの気配は無い、
此処は、「山猫のアジト」の地下5階に潜った所にある、専用地下鉄のホーム。
山猫達が脱出に使用した地下鉄は、凱旋門下の、シャルル・ドゴール・エトワーレ駅に通じる、メトロの6番へと、連絡していた。
鉄と、微かな海の潮の匂いを嗅ぎながら、
それに混ざる、「甘い匂い」に気付いて、アリスターが、ゆっくりと、…振り返る。
アリスターの冷たい視線の先には、一人の美少女が、…
立っていた。
身長は150cm位、小柄で華奢な体つき、肩にかかるかかからないかの髪を両サイドでツインテール風に束ねている。 顔立ちはどちらかと言えば地味な方だが、すっきりと目鼻立ちが整っていて、どこか、赤ん坊ミタイな、幼さ、あどけなさの抜けない、可愛らしい、…女の子。
突然!
プラットホームのスプリンクラーが、破裂して!
噴き出した水飛沫が、…
氷の刃と化して、アリスターに、…
突き刺さった!
アリスターは、微動だにせず、その、無数の氷のナイフを、全身で、…
受け止める。
マイナス273℃に迄、分子運動を凍結された氷のナイフは、
体内の血液をも瞬時に冷凍させる為、
外には、一滴の血の
アリスターは、ほんの小さな溜息を、…吐いて、
やがて、真っ暗な地下鉄のレールの上に、沁み出す様に流れ込んで来る、…
赤い、マグマ!
それは、驚く程粘度が低く、まるでさらさらした、赤く光を放つローションの様に、あっと言う間に、涼子の足下に迄到達して、次第に、
増して行く。
涼子もまた、
その涼しげな表情は、眉一つ動かす事も無く、
今や
プラットホームから溢れ、線路の上に零れ落ちて来るスプリンクラーの滴りで、
瞬時に、冷却、真っ黒な軽石へと、…
作り替える。
涼子の背後に出現する、黒く輝く、魔法陣!
そして、間髪容れず、空間を引き裂く様にして、魔法陣から這いずり出して来る、…
体長5mの巨大な、「マタマタ」!
その全身の「肉」はクラゲの様な半透明のゲル状で、まるで墨汁の様に濃い赤橙色の体内骨格が丸見えになっている。
「マタマタ」は、怪獣の様な雄叫びを上げて!
その凶暴な顎が、アリスターの身体に飛びかかり!…食い千切る!
マグマに触れた「マタマタ」の下半身が、大量の水蒸気を発生させて、視界を、…遮る。
「マタマタ」が食い千切った筈の空間から、…
その牙が食い込む、ほんのその瞬間迄、其処に居た筈の、…
アリスターの姿は、…消滅していた。
そして、プラットホームの上に、出現している、…アリスター。
怠そうに両手をポケットに突っ込んだ格好で、…
詰まらなさそうに、冷たい視線で、…
溶岩の上に立つ、日本人の少女を、…
見下ろしている。
その背中には、朧げに光を放つ、…3対6枚の天使の翼、
地震!
そして、巨大な地割れが発生!
大量のマグマと諸共に、一瞬の内に、地の底へと吸い込まれて行く、…
涼子!
朋花:「ほんっと! キリが無いんだから!」
真紅の翼竜の背に跨がって、直角急降下する朋花の行く手には、
ドレッド・ヘアのイケメンが、…復活していた。
朋花が発生させた数百万℃の熱に飲み込まれて、一瞬で蒸発した筈のその男の、逞しく、美しい肉体には、何の傷跡も、小さな火傷の跡一つすら、…残っていない。
まるで、生まれた侭の姿な男性の肉体には、布切れ一つ纏われておらず、全てが、余すところなく、曝け出されている。
朋花:「ちょっと格好いいからって! 見せびらかしてんじゃないわよ!」
「ケツアルコアトルス」の強襲を避けて、
マタドールの如く、華麗に、瞬間移動する、キース!
朋花:「でっかいからって! 無駄にブラブラさせ過ぎ!!!」
急旋回して、キースの行方を探る朋花!
に、目掛けて、降り注ぐ!…超音速の「雹」!
「ケツアルコアトルス」から射出された、無数の「火の玉小僧」ミサイルが!
パパパパパッ…っと、闇夜を彩って、「雹」を迎撃する!
轟音:「「「パーー…、 …ーーン!」」」
そして、そのまま、キースを通り越して、より高空へと急上昇を続ける朋花!
朋花:「要するに、上空に、雲が無けりゃ!」
朋花:「雨も、
地上6000mに達して、
朋花を中心とした周囲3km、まるで赤い花火の様に、空を覆う、…
数限りない! 魔法陣!!
朋花:「ほら! 昇天(イ)っちゃいなさい!!!!!」
一斉に飛び散った!数十万の「火の玉小僧」が、ノルマンディの上空27時に、…
もう一つの太陽を、出現させる!!
眩い光の炸裂が、…
触れるもの全てを蒸発させながら、…降下、
周囲5kmの層状雲を蒸発、消失させながら、…
尚も、キラキラ光る爆弾が、地上目掛けて、…
降り注ぐ!
機雷のごとく、触れるもの全てを、…燃やし尽くす!
空を飛ぶ「聖霊」達の殆どが、その餌食となり!
体長200mに及ぶ「ダイダラボッチ」すら、焼尽して!
地上に蠢く「聖霊」と、その「生き餌」とされた人間達の身体を、…
絨毯爆撃する!!
瑞穂:「馬鹿朋花! あいつ、何やってんのよ!」
3体の「ゴーレム」が合体して、
その胎内に瑞穂を格納!
蒸発する、「ダイダラボッチ」!
燃やし尽くされて、焦土と化す、大地!
尚も、降り続く、数百万℃の「火の玉小僧」達!
そんな風に、舞い落ちて来る「光の塊」達を、
生まれた侭の姿の揚羽蝶の男の娘が、静かに、…
見上げていた。
やがて、その男の娘の背中に出現する、
朧げに光る、3対6枚の翼、
それぞれが、羽ばたく様に、護る様に、隠す様に、イアンの身体を包み込み、…
次第に、輝きを、増して行く。
次の瞬間!
まるで地球上の全ての気流がその少年の命令に従うかの様に、…
一瞬の内に、上空をスーパーセルが覆い囲み、全天は真っ暗な闇に、包まれる。
そして、突如発生した空気の渦が、急速に回転半径を狭めて、風速600km/h、藤田スケールF6レベルの、強烈なトルネードと化す!
強烈な風が、轟音と共に、何でもかんでもお構いなしに、そこら中のモノを上空に巻き上げ、「火の玉小僧」爆弾を、成層圏界面を越えて、遥か彼方へと、吹き飛ばす!
意味不明な強風に巻き込まれ、行方不明に吹き飛ばされる、…朋花!
体長50mの「巨大ゴーレム」も、無事では済まされない。
強風に晒されてボロボロと浸食される、…砂の身体!
山猫の屋敷も根刮ぎ、全壊して、竜巻に、…吸い上げられる!
その中心部に居て、静かに、
世界の果て迄も見通せる様な、澄んだ瞳で、夜空を見上げる、…
揚羽色の男の娘、
行成り!
ソレ、に目掛けて!上空から、飛び掛る!!…
巨大な白い虎!!!
大地に堕ちて、爆発する「白虎」!
大地が、剥がれ、巻き上げられて! 直径60mのクレーターが、…
出現する!
直撃の一瞬、早く!
瞬間移動で宙に逃れるイアン!
そのイアン目掛けて!
飛び散った瓦礫にまぎれて、アリアが、…
特攻する!
アリア:「…イアン!!」
さらに、その、アリアの直ぐ後ろに、瞬間移動で出現する、…
ディビッド!
そして、何時の間にか、デイビッドの手には「ロンギヌスの槍」が、握られていて、…
アリアの特攻を、愛おしむ様に受け容れるイアンの
か細い、身体ごと、…
アリアを、「聖霊殺し」の槍が、…
貫いた!
アリア:「ぐ……、!」
優しく、アリアの身体を抱きとめる、…イアン。
そっと、血を吐き零す、その美しい頬に、顔を寄せて、
まるで、恋人にそうする様に、甘く耳元に、…
囁く。
イアン:「やっと、…掴まえた。」
地上の喧騒が、緩やかに、揺れ響いて来る。
パラパラと、剥がれ落ちる、天井の欠片を、払いのけ、
漸く、アリスターは、その、部屋に、…
到達した。
冷め切った様な、彼の視線の先には、再び、一人の少女が、…
立ちはだかっていた。
芽衣:「こっから、先は、…行かせへん。」
更に、歩みを進めようとする、アリスターの足を、…
何かが、引っ張った。
見ると、
廊下から生えて、伸びる、植物の蔦が、アリスターの脚に、…
絡まっている、
いや、正確には、その植物は、既にアリスターの脚の肉の奥深くにまで、…
食い込んでいた。
植物は、アリスターの体内で急激に成長を続け、骨の随ごと、浸食し、…
あっと言う間に、只の土塊へと、…
変えてしまう。
アリスター:「Don't let me get tired.(やれやれ、)」
地響きを立てて、…
地下の施設が、軋み、砕け、…
床の裂け目から、噴水の様に噴き出して来る、…
真っ赤なマグマ!
炎が、床を、壁を、天井を、あっと言う間に、覆い尽くす。
作動したスプリンクラーが、振り絞る様に水を撒くが、
まさに、焼け石に水。
それでも、芽衣は、一歩も引かずに、その部屋の扉を、…護る。
既に、手術室の中は、炎に包まれていて、…
アリスター:「I see.(そうか、)」
アリスター:「You are a Decoy.(お前は、囮か。)」
食肉植物は、既にアリスターの全身を覆い尽くし、
その、顔に迄、赤詰草(クローバー)の芽が、吹き始めている。
芽衣:「……、」
一斉に、噴き出した炎が、辺りを取り囲み、
一切の容赦の無くなった、マグマが、…
床を、アリスター自身の身体を、そして、
芽衣の脚に取り憑いて、…
焼き熔かし始める。
燃え上がったアリスターの身体は、胎内に取り憑いた食肉植物を駆逐し、
再び、エクトプラズムが集結して、
ミルミル内に、無傷のアリスターを再生させて行く。
一方で、芽衣の身体は、
マグマが、焼き焦がすのと同時に、再生を続けているが、
しかし、その、出鱈目な再生能力も、次第に、…追いつかなくなって、
重度の火傷が全身を覆い尽くす、姿の侭、
とうとう、マグマの川の中に、膝を、手を付く。
アリスターは、凍る様な視線で、
全身を炎に包まれて行く、少女の姿を、ただ、…見下ろしている。
そして、熱に耐えきれなくなった鉄筋コンクリートの床が、崩れて、沈み始め、…
次の瞬間!
地下水が間欠泉の様に噴出して!
復活する!、…涼子!
氷の剣が、アリスターの胴体を貫き!
一瞬の内に、辺りを包み込むマグマと、炎が、…凍結する!
アリスターは瞬間移動して氷の剣を外し!
忌々しい形相で、舌打ちする!
そして、輝く翼を展開して、…
重い、遠い、深い、低い、振動が、
内臓を、大気を、そして大地を、…震わせた。
全てを震わせて、地面が陥没した。
建物の残骸ごと、
町ごと、
周囲20kmの大陸の一部ごと、
その地球の深淵へと落ち窪んで、
出来上がった巨大なクレーターに、海の水が、…
流れ込む。
地割れが、屋敷の残骸ごと、涼子と芽衣を、引き摺り込もうとするが、
芽衣の発生させた「赤詰草の揺り籠」が二人の身体を捕らえて、海面へと、…
浮き上がる。
何時迄続くとも知れない、嵐の様な波の満ち引きが繰り返し、
二人を乗せた赤詰草の小舟を、…翻弄する。
やがて、大方の地球の憤りが納まり始めた、新しい入り江の中心で、
漸く傷の癒えた、芽衣と涼子を載せた「揺り籠」を取り囲む様に、
無情にも、再び、彼らが、…
集結する。
東の空に、白み始めた朝焼けが、
彼らの星座に倣って配置する、美しいメルカバー達の姿を、照らし出す。
朧げに光を放つ、「天使」達の肉体には、
只の一つの傷すら、…
残っていなかった。
芽衣:「はっ…、」
息を飲む、芽衣の視線の先、…
ディビッドの肩にかけた大きな鉄の鎖には、
未だ、ロンギヌスの槍に貫かれたままの、アリアが、…
ぶら下げられていた。
イアン:「それで、彼は、何処に行ったの?」
芽衣:「知らない、」
芽衣:「知ってても、教える訳、…無いやろ!」
揚羽色の男の娘は、穏やかな表情で、微笑んで、…
まるで、ソレが救いであるかの様に、その綺麗な手を、…差し伸べる。
イアン:「構わないよ、僕達には、無限の時間があるのだもの。」
イアン:「君達にも、十分に、痛みを分かち合う時間がある。」
翔五:「ここだ!」
芽衣を取り囲むイアン達から、15m程離れた海上には、
何時の間にか、
水陸両用仕様のD-Bodyが、海面に浮上していた。
背中のハッチが開いて、中から、
翔五と万里が、…現れる。
翔五:「待たせて、悪かったな。」
メルカバーは、「慈悲」と「峻厳」と「均衡」を秘めた深い眼差しで、
振り返る。
翔五:「僕の「聖霊」達は、返してもらうよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます