エピソード45 「僕は美少女と再会し別離する」
悪者3:「来ました!」
やがて、2機のプロペラ機=MV22、通称オスプレイが、現れて、ヘリポートの上空を旋回する。 その機体は全身を深緑に塗られて、左右二カ所の垂直尾翼に、何故だか、山吹色の、ネコの漫画?が、描かれていた。
翔五:「山猫?」
2機のオスプレイは、主翼に取り付いた2機のローター翼を垂直方向に可変させながら、徐々に飛行速度を落とし、まるでヘリコプターの様に、空中でホバリングした後、ゆっくりと、運動場に、…着陸する。
福原:「星田と、そこの銀髪娘、私と一緒に来い。」
僕達は、小銃で言う事を聞かされて、…
芽衣:「翔五ぉ!」
翔五:「後で、絶対、迎えに行くから!」
半泣きになっている芽衣や、苦虫を噛み潰している瑞穂達と引き離されて、片方のオスプレイに乗せられる。
瑞穂達は、もう一機のMV22に乗せられた様だった。
機体の内部には、両サイドに補助椅子の様なシートが並んでおり、僕は右側中央の、美穂は左側後方の座席にそれぞれ座らされて、シートベルトと、手錠で、…拘束される。
美穂の正面には、悪者4が小銃を構えて、照準を合わせている。
そして、機体最後部の貨物室のハッチが開いて、
無造作に放り込まれる、…黒い死体袋。
福原が貨物室迄、歩いて行って、死体袋を開けて、中身を確認する。
袋の中身は「京橋朋花」。
朋花の顔面は、2発の銃弾を受けて、左半分が深く、…陥没していた。
美穂が、目を
更に、二名の武装した悪者5/6が、最後尾の座席に配置して、朋花の「屍骸」に向けて、小銃=XM8 ベースライン・カービンを、構える。
福原:「ぴくりとでも動いたら、迷わずに頭を撃て。」
悪者5/6:「「はい。」」
それから、悪者2と3が、乗り込んで来る。
悪者2:「お呼びですか。」
福原:「あれほど「京橋朋花」は「殺すな」と言ったのに、そんな簡単な事も実行できないとはな、…全く、無能なスタッフを持った中間管理職の憂鬱とか悲哀と言うモノを、お前は考えてくれた事が有るのか。」
悪者3が、小銃の銃口を、悪者2の頬に当てる。
悪者2:「一寸、…待って下さいよ!」
福原:「先月は色々頑張ってくれたからな、少しはマシになったかと期待していただけに、残念だよ。」
悪者4が、悪者2の膝の後ろを蹴って、強制的に、
ワザと、だろうか、美穂が拘束されている座席の、直ぐ目の前だった。
悪者2:「ナニ、するんですか?」
福原:「懲罰に決まっているだろ。 私だってこんな事したく無いよ。 でも、指示に従わなかったお前がイケナイんだ。」
悪者4が、悪者2の首根っこを、ゴツいブーツの靴底で押さえ込む。
悪者2:「し、知らなかったんです!」
福原:「また、事前の打ち合わせを、ちゃんと聞いてなかったんだな。情状酌量の余地無しだ。」
悪者5が、何処から持ち出して来たんだか、束ねた紙を切る時の「裁断機」を、…持って来る。
美穂:「イヤァ…、」
美穂が、キツく目を閉じて、…全身を震わせる。
悪者2:「や、止めて下さい!」
福原:「選ばせてやろう。 右か、左か、ドッチが良い?」
悪者2:何とか逃げ出そうとするが、首根っこを押さえられて、小銃を顔に突きつけられて。 身動きが、取れない。
悪者2:「嫌だ! 止めろ!」
福原:「顔を撃たれるよりは良いだろう?」
悪者5が、
丁度、土下座して神に祈る時の様な、ネコの背伸びのポーズの様な格好で、
悪者2:「お願いします! これから、気を付けますから!」
福原:「往生際が悪いなぁ、…利き腕は残しておいた方が良いだろ、」
福原:「もう、左で良いや。」
悪者3:「逃げたら、撃つぞ。」
悪者5が、裁断機に悪者2の左手の掌を、セットする。
丁度、頭脳線のあたり、
悪者2:「いやだぁああ…、お前ら、覚えてろよ、…お前ら、絶対、…」
悪者2は、泣きながら、震えながら、それでも逃げられない。
撃たれて、殺されるよりは、まだ少しマシな「選択」を、自ら甘んじて、…受け入れる。
福原:「…やれ。」
翔五:「止めろ!」
美穂:「やぁあ!!」
悪者5が、全体重を乗せて、裁断機の刃を…閉じる。
悪者2:「ああああああ!、…あぁ、ああ…ああ、…あああああ、…」
福原:「ほら、早く、止血してやりな。 可哀想じゃないか。」
悪者達が、甲斐甲斐しく、悪者2の手当をして、
熱く焼ける様な左手を抱えて、小刻みに震える悪者2を、
貨物室の「死体袋」の隣に、…放置する。
斬り落とされた、4本指の塊は、床に転がったままだった、…
床にはヌルっとした血ダマリが、出来ている。
翔五:「お前ら、…馬鹿だろう…?」
白衣の女が、まるで値踏みする様に、僕の事を、睨め付ける。
口元は、
福原:「…良いぞ。 出発しろ。」
福原の号令で、離陸を開始する、オスプレイ。
VTOL機能を有する機体が、僅かにゆらゆらとバランスを取りながら、上昇し、機体中央部の両サイドに一カ所ずつ設けられた小さな窓の景色が、やがて、森林の緑から、空一色へと、塗り変わる。
美穂は、武者震いの様に身体を震わせて、カタカタと、歯を鳴らす。 危険を察知した脳が、恐怖と向かい合う為に、大量のアドレナリンを放出し続けて、意味不明な興奮状態が、納まらない。
翔五:「野崎サン!」
翔五:「大丈夫、…きっと、大丈夫だから!」
中学生の女子が、目の前で人が傷つけられる場面に遭遇して、それで普通で居られる、…訳が無い。
美穂:「うう、うぅ…、」
本当は、大丈夫かなんて、…判る訳が無い。
それでも僕は、何かしら、声を掛けずには、居られなかった。
福原:「処で、…その銀髪娘は、何者なんだ?」
美穂:「いやあぁ…、」
美穂は、さっきから、ずっと、目を
離れていても、恐怖に怯える美穂の、早鐘の様な心臓の鼓動が、…伝わってくる。
翔五:「ただの、…友達だよ。」
翔五:「帰してやってくれないか。」
こんな風な口が
僕は、いつの間に、こんなに度胸が据わっていたのだろうか?
福原:「あんな「モノ」を見られたんだ、それは無理だ。」
福原:「大人しくトラックの荷台でじっとしていない、そっちが悪い。」
翔五:「だろうな、」
美穂が、恐怖のあまり、泣き
翔五:「僕達を、どうするつもりなんだ?」
こんな風な口が
まるで、いっぱしの、主人公気取りじゃないか。
福原:「最終的には、仲間になってもらう。」
翔五:「こんな、無理矢理なやり方で、仲間になんて成れる訳、無いだろ。」
福原:「簡単だよ。「友達を痛い目に遭わせたく無ければ、言われた通りにしろ、」…と言えば、お前は言いなりになるだろう。」
翔五:「そんなのは、仲間じゃない。」
福原:「コレでも我々は、お前の事を高く評価しているんだ。 お前の要求には、可能な限り応える用意が有る。」
福原:「例えばだ、お前が、その友達を「性欲の
福原:「
美穂:「いやぁ…、」
翔五:「ふざけるな。」
福原:「つまり、お前のしたい様に、させてやると言う事だ。」
福原:「これは、コミュニケーションだよ。」
福原:「そうだな、先ずは、コミュニケーションの練習をしてみようか。」
白衣の女が合図をし、…
悪者3と悪者4が、美穂の、衣服を脱がせ始める。
美穂:「いやぁ、…いやあ!」
翔五:「何をしてる! 止めろ!」
どう抵抗しようにも、僕を拘束する手錠とベルトは、ビクともしない。
僕の見ている目の前で、悪者達が、美穂のベルトと手錠を外し、嫌がる美穂の衣服を、無理矢理、剥ぎ取って、下着姿になった美穂を、血糊に濡れたままの床に、…突き転がす。
美穂は、既にパニックを通り越して、現実から目を背けて、…堕ちかかっている。
虚ろになって、もはや、拒絶の叫び声すら、発する事が、…出来ない。
翔五:「もう、止めてくれ! お願いだから。」
福原:「言っただろう、お前のして欲しい様に、してやるって。」
福原:「お前は自分が望む結果が得られる様に、
美穂が、虚ろな目から、涙を流し、僕を見詰めている。。
福原:「仲間になってくれるかい?」
悪者5が、再び、血糊のついたままの「裁断機」を、持ち出して来る。
美穂:「やああああああああああああああああ…!」
美穂が、狂った様に叫び!
翔五:「ふざけるな!」
こんな風な口が
翔五:「それ以上は、…許さない。」
福原:「ほう、コレだから「会話」は面白いな。 …どう、許さない?」
僕は、訳の判らない、
それなのにドンドン、奥の方が、…冷めて行く。
そうか、「キレる」って、こんな感じ?…なんだ。
そして、僕は、何故だか、朋花を入れた死体袋を、…見詰めていた。
そうだ、僕と、僕の「聖霊」達にとって、
こんな奴等は、「敵」でも、何でも、…無い。
異音:「「…バカン!…」」
次の瞬間!
貨物室の床が、抜けて、…
落下した。
後部ハッチの固定部が「熔け」落ちて、高度8000mの気圧差で、ぐらついた機体から、固定されていない機内のモロモロが、あっと言う間に、空へと、…投げ出される。
左手を切られた悪者2と、裁断機を抱えていた悪者5と、朋花の入った死体袋と、
そして、美穂までが、一瞬で、遥か彼方へと、…消え失せる。
副操縦士:「機体損傷!」
副操縦士:「酸素濃度低下!!」
機体はグラツキながらも、何とか姿勢を保ちつつ、急旋回して、…緊急降下する。
重力が、キャンセルされる様な…錯覚。
福原が、必死の形相で、ベルトに…しがみ付いている。
その時!
窓の外を、何かが、…横切った!!
余りにも一瞬の出来事で、正体が掴めないが、それは赤い、…飛翔物体。
再び、今度は、反対側の窓と、交錯する!
まるで、この飛行機を追跡する様に、何かが、空を、…飛んでいる?
機長:「高度7000m!」
機長が、叫ぶ。
そして「ソレ」は、オスプレイの失われた後部ハッチの直ぐ後ろに、…出現する!
僕は、一度だけ、それを見た事が有る。
それは、真っ赤な、…翼竜。
いや、正確には、その、真紅の翼竜の背中には、…一人の女が乗っていた。
まるで、ファンタジーなアニメのシーンそのものに、赤いドラゴンの背中に、全裸の美女が、…跨がっている。
翔五:「…!」
美女は、僕の姿を確認すると、
ドラゴンの手綱を捌く様に、
そして、ビシャ! …っと、何かが機体に飛び掛かる衝撃!
真っ赤な血の様な「何か」が、左右の小窓を、…覆い尽くす?
その体長5mm足らずの赤い「ナニか」の群れは、一目散に、機体の上を走り回って??
何だか意味の有る形に、整列し???
そして!
発火:「「「「………!!バン!!………」」」」
もの凄い音がして、
オスプレイの主翼の直ぐ後ろ辺り、僕が座る座席の直ぐ傍で、…
機体を胴回りにぐるりと取り巻く様に白熱発光し、…
金属製の機体は、バーナーで焼き切られた様に切断されて、…
まるで金太郎飴か、
分断される!
僕は、座席にベルトで縛り付けられた侭で、切り取られた機体後方と一緒に、絶叫マシン
と、…!
突然、開けっ放しの後部ハッチから、飛び込んで来る、…全裸の美女!
翔五:「朋花!」
美女は、僕に飛びついて! 拘束しているベルトと手錠を「焼き切り」!
そのまま僕を、抱きかかえて、…
空へ、
地上迄、凡そ6000m、墜落所用時間、約2分、
空気抵抗を受けて落下スピードが遅くなった僕達を取り残し、遥か下方迄、落下したオスプレイの主翼部分の残骸が、
炎上!爆発する!!
翔五:「朋花! 女の子を助けて!」
暴風の中で、どうやって僕の声が届いたのかは、判らない。
しかし、朋花は、確かに頷いて、
朋花の傍、相対速度0で自由落下する、赤い「魔法陣」が出現!
再び、巨大な真紅の「ケツアルコアトルス」の姿を、形成する。
有り得ない速度で、爆煙を突っ切って、上昇する「ケツアルコアトルス」!
グルグルとスピンしながら、落下を続ける、銀色メイドを見つけ出し、その爪に、優しく、…引っ掛ける。
自由落下の空気のベッドの上で、まるでアフロディーテの様に、完璧な全裸の美女が、優しく微笑みながら、僕をキツく、…抱きしめる。
地平線を縁取る碧い空が、ドキドキする位に、美しい。
瑠璃色の大地が、ゆっくりと、僕らを出迎える様に、鮮明さを取り戻して行く、
なんて、穏やかな「世界」。
やがて、強烈な上昇気流が、僕達の身体を抱き上げて、落下速度が、…緩やかになる。
そして、朋花は、相対速度を殺しながら、僕を抱いたまま、翼竜の背中に、
着地した!
翼開長24mの、深紅の翼竜は、大きく、二三度、…羽ばたいて、
何処かの、学校の校庭へと、緩やかに、…着陸する。
僕と、美穂は、腰を抜かして、そのまま、運動場に…しゃがみ込む。
涎を垂らしながら、ガン泣きする、…銀色メイド。
失禁している事には、…言及すまい。。。
そして、全裸の美女が、再び、僕に駆け寄って来て、抱きしめて、…
それから、直ぐに僕から離れて、
朋花:「もしかして、…貴方も、お漏らししたの?」
いや、これは…
翔五:「違う! これは僕のじゃ無い!」
僕は、自分の着ていたシャツを脱いで、朋花に渡す。
翔五:「ありがとう、…助かった。」
一応、目のやりどころに、困る訳で…、
朋花:「初めまして、私は「京橋朋花」、多分、貴方の事を、…知っている。」
彼女は、それを、パレオの様に、腰に巻く。
翔五:「ああ、良く知ってる。」
神の御業と言っても
翔五:「お帰り、朋花。」
だから、僕は、どうしたって、目が離せない訳で、
つい、…苦笑いしてしまう。
小学校のトイレで、…用を足す。
翔五;「こんなに小さかったんだな。」
子供用の便器は、まるでミニチュアの様で。
きちんと清掃された後らしく、床のタイルが、まだ少し、濡れていた。
放課後の学校は、
僕は、薄暗くなった廊下を、一人、とぼとぼと歩いていた。
僕達は、あの後、駆けつけた先生達に保護されて、とりあえず小学校に匿って貰い、予備のジャージを借りて、何とか、
今は、朋花が連絡した、知り合いの警察の到着を待っている処である。
朋花はさっきからずっと、電話でこれ迄の経緯を、上司らしい人物に説明している。
流石に空を飛べる件は伏せてあって、飛行機は一旦地上すれすれまで降りて来て、僕達が逃げ出した後、それから再び上昇して、何故だか急に爆発した、と言う事になっている。
美穂は、ショックが強すぎて、立っているのも辛そうなので、
保健室で、休ませてもらっていた。
僕は、そっと、保健室のドアを開けて、銀色メイドの様子を、…伺う。
夕焼けが、半開きになったブラインドカーテンから、差し込んで、
春の
美穂:「あっ、…星田さん。」
翔五:「起きてた?」
彼女は、少しは、落ち着いた風にも、見えるが、
小さな彼女の胸の内には、未だドス黒い恐怖が、
それを思うと、僕は、居ても立ってもいられなくなる。
いつの間にか、僕は、この子の事が、愛おしくて、堪らなくなっていた。
美穂:「どうしましょう、お父さんが迎えに来たら、僕、連れて帰られちゃいます。」
翔五:「もう、…良いよ。」
翔五:「これ以上、自称中学生を、危険に巻き込む訳には、いかない。」
僕はベッドの縁に腰掛ける、
美穂:「つれないじゃ、無いですか、」
やがて、ゆっくりと、夕闇が、覆い被さって来て、
薄紫の境界から、しっとりと、夜が、…零れだす。
翔五:「野崎さんは、もう、十分に、役目を果たしてくれたよ。」
僕は、ワザワザ僕の為に、銀色に染めた髪を、くしゃくしゃに、…撫ぜてやる。
翔五:「御免ね、いっぱい、…怖い思いさせちゃったね。」
銀色メイドは、僕の手を、捕まえて、自分の頬に
彼女の目には、大粒の涙が、…浮かんでいた。
彼女の頬をぽろぽろ濡らす、その涙には、
一体どんな思いが、…込められていたのだろう。
道半ばで、途中退場する事の、悔しさなのか、…
それとも、
翔五:「宇宙を救ったらさ、また、美味い「さいころステーキ」を、食わせてくれよ。」
僕は、照れ隠しに軽口を言い、…
美穂は、突然起き上がって、僕に、…
抱きついた。。。
それから、黙ったまま、目を閉じて、つんと、唇を、…突き出す。
僕は苦笑いして、…
銀色メイドの、おでこに、そっと、…キスをした。
翔五:「ちゃんとしたキスは、…もっと大人になってからな。」
美穂:「星田さんのクセに、生意気です。」
銀色メイドが、笑いながら、…また、涙を零す。
美穂:「宇宙の平和、任せたっす。」
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