第四章

エピソード40 「そして僕は美少女の温もりで目を覚ます」

何だか、夢を見ていた様な気がする、

とても、長い夢だ、


胸をえぐられる様に辛い、なのに甘酸っぱい、…不思議な夢だ、


それは、何百回、何千回という繰り返しの中の、

とある一つの、…僕の顛末、




それから僕は、…目を覚ます。

セピア色に包まれていた「記憶」が、ゆっくりと、…色彩を取り戻して行く。



見上げると、…見知らぬ天井、

誰かが、僕の髪を撫ぜてくれている、


とても、とても、…優しく、




自分でも不思議な位、酷い怠さを感じている、

意識を保つのすら…辛い。


動いている事、息をしている事すら、面倒臭い様な、

まるで、停まった時間の中にいる様な、




…口の中が酸っぱい。

…そうだ、…さっき、


…吐いたんだっけ、


元々酒は強く無いと言ってたのに、無理矢理飲まされて、

訳が、分んなくなって。。。



やがて、得体の知れない不透明感とギリギリがけぷちな不快感の中で、口籠くごもる様な嬌声きょうせいが、聞こえて来る。




僕は、どうやら、誰か女の人に、膝枕をされているらしかった。


急に恥ずかしくなって、起き上がろうとするが、思う様に身体が、…動かない。



女の子:「まだ、ゆっくりしてて、えよ。」


関西弁を話す、地味な女の子、ボサボサの前髪で顔を隠して、縁の濃い眼鏡をかけている。 …タンスで沁みた防虫剤の香りが、微かに漂って来る。




知っている、

僕は、コノ子を、…知っている。


多分先輩、多分年下、


入社式の後、配属先での新入社員挨拶の後、…

紛れ込んだ リサイクルルーム(分別資源回収室=ゴミ捨て場)で、

独ぼっちで、隠れて、…泣いていた子だ。


上司のOLが、この子の事を「汚い」と、人格否定していたのを、

何処かで聞いた様な、…気がする。


社会人になっても、まだ苛めが有るなんて、

本当に気が、…重くなる。




なんで、コノ子は苛められ無ければならないのだろう?

見窄みすぼらしいから? オドオドしてるから? 汚いから?


実際の処、どんな理由にも意味など、…無いのだ。


世の中は、望むと望まないにかかわらず、きらびやかな20%と、対照的に惨めな20%と、どちらにも属さない60%に分類される。


60%が自分の安全を護るために、底辺の20%を浮き彫りにしようとする。

誰かをおとしめる事で、自分達の安全を確認しようとする。


彼らは、可愛そうな、残念なものを見る様な目つきで、僕らの事を見て、

安心しようとしているだけなのだ。







ここは確か、町田にある「上手い沖縄料理が食べられると評判」の居酒屋。


僕は、会社の新人歓迎コンパに参加して、無理矢理に、ビールと泡盛を代る代るに飲まされた挙げ句、止(とど)めに赤ワインを「イッキ」させられて、所謂「三種混合」状態で臨界点を突破して、…そのまま便所に直行、したのだった。…確か、



でも、…驚く程、記憶が曖昧で、

まるで「話の途中から見始めた映画」ミタイに、臨場感が追いついて行かない。




女の子は、慈しむ様に、ゆっくりと、そっと、僕の髪を撫ぜる。

僕は、寝た振りをして、女の子の柔らかな太股(ふともも)の感触に身を委ねる。



そう言えば、女の子に触ったのなんて、何年ぶりだろう?


なんて、安らかなのだろう。 なんて、癒されるのだろう。

まるで、僕の存在を全肯定してくれている様な、不思議な安心感に包まれる。


気がつくと、何時の間にか、僕は、女の子の膝を、指で弄っていた。



女の子:「…ちょっと、くすぐったい…。」


途端に、僕は我に帰り、急に恥ずかしくなって。

女の子の膝から離れようとするのだが、…思い通りに頭が働かない。


インフルエンザで思考が自由にならない様な、プールに潜って水面の音に耳を澄ましている様な、…そんな感じ、




浜本:「よお、目が覚めたのか?」


同期入社の浜本が、声をかけて来る。

長身で、ニヤケタ顔の男。 如何にも元気が有って、やる気が有って、活発そうで、協調性がありそうで、…でも、本当は、中身なんて、知らない。


一つだけハッキリ分る事は、彼は自分の事を60%だと思っている…と言う事。 




山本:「大丈夫?」


同じく同期で、今年入社の中では一番美人だと評判の山本礼子が、声をかけてくれる。

どちらかと言うとムチムチした体型×濃い目の芸能人顔。 肩迄届くユルフワ・ソバージュを ほんの少し茶に染めている。 人当たりは礼儀正しくおしとやかで、人付き合いも良いから…当然、彼女を狙う男性社員は少なく無い。


明らかに、煌びやかな20%に、最も近い存在だ。

僕なんかには、遠い世界の、偶像みたいな存在だ。




佐藤:「急性アルコール中毒なんて、洒落にならんからな、勘弁してくれよ。」


僕が配属されたグループの主任の佐藤サンが、僕の様子を伺う。

よれたワイシャツに、紺のネクタイ。 …如何にも社会人、…如何にも大人、

きちんと分別をわきまえていて、それなりに、自分の生き方に自信を持っている。


ずっと、真面目に60%を続けていれば、きっとこんな風になるのだろう。



じゃあ、僕はナンなんだ?

どうして、こんな風にミットモナク、女の子の膝枕で、自分の後始末も出来ない位にフラフラになって、危ない目付きで、不自然な呼吸で、心配してくれている皆にも、何一つ返事を返せない。



なんで、僕は、こんな所で、こんな事を、…してるんだっけ。


驚く程、記憶が曖昧で、

まるで「話の途中から見始めた映画」ミタイに、臨場感が追いついて行かない。



皆が、可愛そうな、残念なものを見る様な目つきで、僕の事を見ている。




村木:「おっ、お前ら、何か、良い感じじゃナイ?」


酔っぱらった先輩が素っ頓狂な声を上げる。



村木:「いっそ、そのまま付き合っちゃったらどうよ?」


同じグループで、2こ上の村木哲郎むらきてつろう 一目で見て分るチャラ男。 身長180cm、見た目イケメン。 人当たりがよく世渡り上手そうなタイプ。でも、ヒエラルキーが下の者に対しては決して優しくない。


僕を、酔い潰した張本人。



村木:「でも、これで上手く行ったら、俺のお陰じゃね?」

村木:「お前らどうせ恋人居ないんだろ、丁度いいじゃん。」


僕は茶化されて、改めてイタタマレナくなって、


女の子の膝から離れようとするのだが、…チョット動こうとしただけで、激しい眩暈に襲われる。 どんなに平気を装おうとしても、フィジカルが付いて来ない。


下手に動くと、胃が蠕動ぜんどうを再開しそうで、手足の呂律ろれつも回らない。

こんなに、コテンパンに泥酔した事は、…始めてかも知れない。



芽衣:「ええから、もう少し、じっとしとき。」


女の子は、優しく、僕の髪を撫ぜる。




渋谷:「やだぁ、星田君、本気で忍ケ丘さんに甘えてるんじゃない。」


村木:「山本さん、おれも吐きそう、膝枕して。」

山本:「駄目です、セクハラで訴えますよ。」



同期の女子の嬌声があがる。

先輩達の野次が、朦朧もうろうとした頭の中にこだまする。







浜本:「そろそろ、お開きにしますか。」

木下:「次、二次会行くヒト?」


村木:「しのぶ、今晩、後輩お持ち帰りか?」

山本:「先輩、悪いですって。」


渋谷:「カラオケ〜!」


皆が、ゾロゾロと座敷を後にして、

僕と女の子だけが、…残される。


店のヒトが、テーブルを片付け始めている。



女の子は、相変わらず、優しく、僕の髪を撫ぜる。

まるで、母猫が、怪我をした子猫を舐めるミタイに。



翔五:「御免なさい、…僕、もう大丈夫だから。」


気がつくと、何時の間にか、僕は、堪らなくなって、情けなくなって、

涙を流していた。



芽衣:「もしかして、嫌やった? ウチみたいなんと、くっ付いて、」


僕は、黙ったまま、首を横に振る。


そうじゃない、そんなんじゃないんだ、…けど、

自分でもなんで泣いているのか、訳が分らない。



芽衣:「ちゃんと、服、洗濯してあるから。…きたなないよ。」


僕は、黙ったまま、首を振る。


僕は、何時の間にか、その子の手を、握りしめていた。

女の子が、優しく僕の手を、握り返してくれる。


何だか、とても不思議な、懐かしい感覚に囚われる。







どうやって帰り着いたのだろう、


気がついたら、僕は、自分の部屋のベッドの中に居た。

貴重品と、部屋の鍵は、一人用のテーブルの上に並べて置いてあった。


服のままで、靴下も履いたままで、

昏い部屋の、懐かしい天井を眺めている。



…(天井の)あんな処に、傷が有ったんだ。


驚く程、記憶が定かでない。

此処へ至る、道程が曖昧で、まるで、出来の悪い小説の粗筋みたいだ。



…頭が、痛い。

…気持ちが、悪い。

…無性に喉が、乾く。



確か、タクシーに載せられた様な、…気がする、

確か、肩を貸してもらった様な、…気がする。


驚く程、記憶が定かでない。



何だか、泣いていた様な、…

何だか、抱きしめた様な、…


驚く程、記憶が定かでない。



これは、現実なのだろうか?

本当は、全部夢なんじゃ、無いだろうか?


だとしたら、僕は、一体、…誰なんだろう。

こんな所で、一体ナニを、…しているんだろう。



不意に、いつも腕の中に有った筈の「甘い匂い」を思い出して、

再び、訳も無く、涙が、…溢れ出して来る。


僕は、どうして、一人っきりで、こんな所に居るんだろう。

僕は、どうして、泣いているんだろう。







日曜日、


僕は、携帯電話を弄っている。


誰に掛けるアテが有る訳でもない。

そもそも、アドレス帳に入っているのは、会社と実家と、…その二件だけだ。



金曜日の夜に僕を介抱してくれた女の子に、お礼を言いたかったが、

当然、電話番号なんて知る訳が無い。


会社は、個人情報を開示したりしないから、自分達で作ったグループの連絡網でもなければ、電話番号は分らない。



同期会で回って来た名簿を、指でってみる。


浜本は、多分、女子の電話番号と住所を知る為に、こんな面倒くさい同期会の幹事なんかをやっている。 …そうに、違いない。


名簿には、電話番号、メールアドレスの横に、所々「フェイスブック」の印が付けてあった。


多分、「友達」になれと言う、暗黙の了解なのだろう。



僕はSNSと言うモノをやった事が無い。

やっても誰も相手にしてくれない事を知っているからだ。 つまりそんなモノは「ソーシャル」でも「ネットワーク」でもない。 要するに自分の「自慢」とか「恥」とかを全世界に「露出」するだけで、しかも何一つ反応してもらえない訳だから。 そんな恐ろしいモノに近づきたいなんて思った事は一度も無い。


それでも、「憧れ」が無かったかと言うとそれは嘘になる。 SNSとは言えども「友達」になると言う事は、つまり自分を「認めて」くれる存在を確かめる事が出来ると言うに他ならないからだ。


僕の事ナンかを、気に留めてくれる誰かが、此の「世界」には、…実在するのだろうか。



僕は、さっきから、ずっと、じっと、携帯を、…握りしめている。


誰かに、伝えないとイケナイ事が有った様な、…気がする。

何か、大切な事を忘れてしまっている様な、…気がする。







昼休み、


ここは相模原の少し引っ込んだ所?に居を構える「久保田精機」と言う、冷却用部品の製造メーカだ。 従業員は大体400名位。 主に自動車や設備用の水ポンプの部品を設計・製造している。 業界トップではないが、新興メーカとして要元の要求に柔軟にこたえる運営姿勢で少しずつ業績は上がりつつある。



工場の隣のプレハブを改造した食堂で、僕は、一人、A定食を食べていた。


隣のテーブルでは、同期達が楽しそうに会話をしてる、

いつの間にか、何時でも、僕は蚊帳の外だ、


でも別に「仲間外れ」にされているからと言って、辛いとは思わない。

むしろ、楽しむ事に必死になっている彼らの方が滑稽こっけいに見える。


リアルな充実を義務付けられて、血反吐ちへどを吐きながら、楽しんでいるみたいだ。


そんな風に、僕は、一歩引いて、斜に構える。




山本:「知ってるよ。佐久間先輩でしょ? 男子ってホント美人に弱いよね…」

浜本:「山本サンだってカナリ美人だよね…」


どうして、そんな台詞がサラッと口から出てくるのだろう?

あっと言う間に「美少女OL」が ちょっと高身長でニヤケ顏な浜本になびく。



山本:「そんな事言っても何にも出ませんよ〜だ。」

浜本:「今度、同期で山梨のコテージ行って「バーベキュー・パーティ」やるんだけど、山本サンも来ない?」


山本:「えー、とまりでしょう?  どうしようっかなあ…」


どうしてそんな風に「簡単」に 楽しそうにする事が出来るのだろう?

あっと言う間に「美少女OL」の周りに「輪」が出来あがる。




山本:「星田君は行かないの?」


行成いきなり、美少女OLが、僕に声をかけて来る。



翔五:「あっ、…」


浜本:「ああ、一応誘ったんだけど、何か用があるって…。」

翔五:「スミマセン、」



どうせ、僕には関係ない世界の事だ、


どうせ、行ったって、だれも僕の相手なんかしてくれる訳がない。


どうせ、皆の輪に加わろうとしても、結局は一人で浮くだけだから、


ワザワザ、そんな惨めな思いをしに行くほど、…僕はマゾじゃない。




山本:「行こうよ、みんな一緒の方が楽しいと思うよ」


どうして、このヒトは、僕の事をそんなに、…構うのだろう?

底辺の20%にも優しいヒトって、周りの皆に、…尊敬されたいのだろうか?

それとも、底辺の20%は、どんな時でも、…無くてはならないモノなのだろうか?



浜本:「いいなぁ、俺も残念な振りして、礼子ちゃんに構ってもらおうかな。」


下の名前で、…呼ぶんだ。



山本:「浜本君は駄目、魂胆ミエミエなんだから。」


そう言いながら、彼女も、満更でも無い風に、…微笑んでいる。




一度決定したヒエラルキーは大抵の場合、構成メンバが異なるグループにも自動的に引き継がれる。 同期達の中に在っても、直ぐに僕は残念な2割におとしめられて、…下克上は容易ではない。


だから、彼らが僕を除け者にしたとしても、そんなに悪意は無いのだし、…僕は別にそれでも構わない。



さげすまれ、あわれまれ、うとまれても、自分が傷つかなければ良いだけだ。「どうせ最後には皆、裏切るんだ」…そんな風に冷めた目で高みから俯瞰ふかんしていれば、最初から誰も信じなければ 最初から誰にも期待しなければ、僕が、…傷つく事は無い。



一人ぼっちでも構わない、寂しくなんて、…無い。

でも、本当は、そんな事嘘だって、っくに、…知っている。



翔五:「サミシタガリヤ……ミタイだな、」


僕は、不意に、聞き慣れない、フレーズを口遊くちずさむ。



何処で、聞いたのだっけ?

何時、思いついたんだっけ?


どこか滑稽で、どこか哀しくて、堪えきれない程、むなしくて。



凍える様な違和感に、…胸を締め付けられる。







18時過ぎ、


久保田精機では、新入社員は、最初の1ヶ月は定時上がり(退社)と決まっている。

残業も出来ない代わりに、遅刻も出来ない。 一ヶ月したら、フレックスが使える様になるらしいが、それまでは、もっぱら一般的な教育受講ばかりで、本格的な業務は始まらない。


僕は、主任の佐藤サンに業務日誌を提出して、席を立つ。


無言で頭を下げて、一人帰りかけた廊下で…



村木:「もっとパッとした奴だったら良かったのになぁ、お前んとこの山本ちゃん、可愛いよな、畜生ちきしょう、狙ってたのにな〜。」 


山口:「お前、もしかしてそれで、こないだの歓迎会で新人「潰し」たのか? ひでえ先輩だなぁ、」



トイレから出て来る先輩達の、「悪気の無い会話」が聞こえて来て、

僕は、咄嗟に給湯室に隠れて、


そこで、ばったり、例の、関西弁の女の子に…巡り会う。



翔五:「あっ、…」


年下の先輩は、一寸ちょっと吃驚びっくりした風な顔をして、…

それから、ぺこりと僕に頭を下げる。



翔五:「この間はありがとう。 …ございます。」


女の子は、うつむいたまま、…

何だか、変な緊張感が二人の間を漂って、…



翔五:「あっ、タクシー代、払います。」


女の子:「ああ、気にせんで、…ええから。」


女の子は、逃げる様に走り去る。




なんでだろう?

胸の高鳴りが、止まらない。



何かが、僕の中で、叫んでいるミタイだ。

まさか、っくに諦めた筈の「恋慕の情」だとでも、言うのだろうか。


何かが、僕の中で、変わろうとしている、…そんな予感がする。

ザワザワと、風が、僕の胸の中を渡って行く、…そんな錯覚に囚われる。







会社の従業員入口で、何だか揉めている?


人集ひとだかりが、…出来ている。


見ると、銀髪で、メイド服姿の、女の子、…

イベント?コンパニオン? それとも、少し怪しげな?コンパニオン?



女子社員1:「誰、コノ子、…可愛い!」

男性社員1:「君、名前何て言うの?」



メイド:「名前っすか? 僕の名前は、野崎っす。」


男性社員2(オタクっぽい):「僕っ子だぁ!」


女子社員2:「あなた、高校生?」

メイド:「中学三年っす、」


人事部担当者:「中学生が、こんな所に何の用なのかな?」



メイド:「ちょっと、ヒトと待ち合わせっす。」

メイド:「あっ、居た居た!」


そして、メイド服姿の中学生が、僕の事を、…見つけ出した。



メイド:「星田サン! 星田翔五さん、…お久しぶりっす、」



女子社員3:「なに、あの子の知り合い?」

女子社員4:「妹だったりして…、」

女子社員3:「嘘ぉ、似てないって!」



メイド:「僕の事、覚えてるっすか?」


翔五:「えっと、…知らない、かな。」


僕は、行成いきなり大勢の人間から注目されて、…

恥ずかしくなる。イタタマレナくなる。逃げ出したくなる。



メイド:「どうすっか? これ。」

メイド:「お父さんに思いっきり怒られたんっすけど、…思い切って染めてみました。」


メイド服の中学生が、銀色の長髪を両手で摘んでアップに束ねてみせる。

碧い、色付きコンタクトで、一寸照れた風に、僕に、上目遣いする。



メイド:「メイド服も、似た様なの探したんすけど、ナカナカ売ってないんすね、」

メイド:「どうっすか?」


そうして、何故だか、満面の笑み??



翔五:「さあ、…似合ってるんじゃないかな。」


メイド:「星田サンに「認知」してもらう為に、…印象に残っているコスプレするのが良いって言われて、色々奮発してみたっす!」




女子社員1:「認知?」


男性社員2(オタクっぽい):「コスプレ?」

男性社員3:「一体、どんなプレイしてんだ、コイツ、、、」



人事部担当者:「君の知り合いか?」


眼鏡の、厳しそうなオジさんが僕の肩を叩き、…



メイド:「丁度良いっすね、オジさん、そのまま支えててもらって良いっすか?」


その少女は、思いっ切り…



メイド:「星田サン、」

翔五:「はい…?」




鈍い音:「ごッ!」


僕の頬っぺたを!! …ぶん殴った!



女子社員1:「きゃっ!」

男性社員3:「ナニ? 修羅場?」


人事部担当者:「君! ナニを…」




僕は、床にひっくり返って、…軽い脳震盪のうしんとうを起こす。



美穂:「朋花サン直伝、…「体育会系気付クスリ」っす!」


少女は、仁王立ちになって、僕の事を、…見下ろしている。




翔五:「ほの…か?」



メイド:「行くっすよ〜!」


更に、少女は、倒れた僕に、…馬乗りになって、



僕の顔面を、…

殴る、…殴る、…殴る、…殴る、…



翔五:「痛っ!、ちょ…」

人事部担当者:「こら! 止めなさい!」



結構、容赦なく、…殴る!




翔五:「ちょ、ちょっと待って、…分った、分ったから…」





そして、今度は、不意に…


少女が、僕に、…キスをする。




女子社員3:「ナニ、…やってんの?」


少女は、柔らかな唇に触れ、侵入し、互いの敏感な器官を絡ませる。




女子社員4:「やだ、…激し、、」


やがて、息継ぎをするかの様に少女が唇を離し、2人の間に甘く透明な糸が引く…、




翔五:「お願い、ちょっと待って!…、混乱してる。」


メイド:「…アリアさん直伝の、「ご褒美」っす。」


少女は、ウットリと火照ほてった顔で、

まるで、僕に甘えてるミタイに、上目遣いして、…照れ笑いする。







翔五:「アリア、…」







そして僕は、正気を、…取り戻す。



美穂:「僕の事、覚えてるっすか?」


野崎美穂が、僕の襟首を掴んで、…



翔五:「銀色、…メイド。 イン、オックスフォード・サーカス」

美穂:「Exactly!  Yes, I am!(正解!)」



…そしてもう一度、僕に、…フレンチキスをする。



それから立ち上がって、 僕を、引っぱり起こす。



翔五:「どうして、…僕は、此処に?」


銀色メイド、にっこりと満面の笑み。。。



美穂:「お帰りなさい。星田サン。」



美穂:「さあ、グズグズしてられないっすよ!」

美穂:「敵は、もう、すぐ其処迄、来てルッス!!」

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