エピソード37 「いよいよ僕と美少女達は正念場を迎える」

夜のとばりの中で、古代ローマの記憶が、安らかな寝息を立てている。


かつて此の場所で、数多あまたの希望と絶望と、約束と裏切りとが繰り返され、そして今は役目を終えた廃墟の町が、静かに、遥かな行く末を眺め続ける。



フォロ・ロマーノ、

の有名なコロッセオの隣に位置する此の遺跡群には、日の入りと共に人気も絶えて、イタリアらしからぬ、重苦しい湿度が降り積もっていた。


数日前アリアと二人で忍び込んだ時とは、まるで違う雰囲気である。


見上げると、遥か上空から、

満点の星達のしずくが、ゆっくりと垂れ下がって来る。





芽衣:「どうしよぉ、〜緊張して来たぁ。」


トランジスタ・グラマーなボディの眼鏡少女?が、一寸ちょっと困った風な顔で、上目遣いに僕を見詰める。


もありなん、…彼女は、ほんの数週間前迄、およそ「こんな事」とは無縁の世界に生きていた筈なのだ。 普通に仕事して、普通に生活して、普通に笑って居た筈なのだ。


芽衣は、一体何の為に、此の場所に立っているのだろう。


僕の為?、そんなはかない「想い」だけで、もしかすれば自分が死ぬ程の痛い目に遭うかも知れない異常な状況を、…どうして彼女は受け入れる事が出来るのだろう。





朋花が、ぶつぶつと独り言の様に、コレからの段取りを反芻はんすうする。


グラマラスなモデル体型と、少し頼りなさそうなアイドル顔にショートカットの柔らかスィートボム、…色香と可憐が同居する美女。 


時に明るく健気けなげに振るまい、時に優しくヒトの琴線きんせんに触れる。 本当は人一倍寂しがりやで、きっと誰よりも沢山の涙を流して来たに違いない。


彼女は、何故、逃げ出さなかったのだろうか?

もと警察官だから? 僕を護る事を当たり前の様に納得しているから? それとも仲間の為に、此の世界を護ると言う「崇高そう」な目的の為に、自らの意思で此の場に臨んでいるのだろうか?





瑞穂が、黙ったまま目を閉じて、時の過ぐるのを待っている。


瑠璃色がかった濡烏ぬれからすの髪、芯の強そうな眼差し、華奢スレンダーで黄金比なスタイル。神の贔屓ひいきとしか思えない美貌。 そして どこか人の心を惹き付けて離さない不思議な匂いがする。


彼女は、僕と一緒に戦ってくれと言った。

僕と一緒ならば戦えると言ってくれた。


彼女こそが、誰よりも強く過去世からの宿命を認識し、自らの人生の全てをぎ込んで、今日のこの日を準備して来たに違いない。


彼女になら、しかすると此の戦いの意味が実感出来ているのだろうか。



翔五:「こんな観光地で騒ぎ起こして、大丈夫なのかな?」

瑞穂:「どうせ旧世代の遺跡よ。それにアリアが一緒だから、取り敢えず「人払い」は出来てると思う。」





「アントニヌス・ピウス&ファウスティナ神殿」の十字架の上に立つ?、…

黒のゴスロリ姿の美少女。


中性的な肢体。傷一つ無い端正な小顔は透き通る様に白く、長い睫毛に大きくて深い瞳、ウェーブした艶やかな髪は腰まで届く豊かな長髪、そして潤った唇。


まるで造り物の様に一点の欠陥も無い美少女が、

暗闇の中で星を集積する夜光虫の様に、…おぼろげに光を放っている。





そしてエマが、僕の服の裾を引っ張る。


色白で綺麗な肌、小柄で華奢な体つき、柔らかそうな金髪を両サイドでツインテール風に束ねている。


何時もは無表情な彼女が、何時いつに無く、怯えている様に見える。


無理からぬ事である、彼女の中に一体どれ程の決意が有るのか、僕なんかには到底想像も及ばないが、彼女は、…エマの体の中に居る「彼女達」は、どちらも未だ年端も行かない少女なのだ。


如何に気丈に振る舞ってみせようとも、これ迄の、自然発生的に出現した「意思を持たない聖霊達」とは全く違う、自ら「確固たる意思を持って戦いを挑んで来る敵」との遭遇に、怯えない方がどうかしている。



僕だって怖い。


僕は、不安そうなエマの目線に降りて、そっと優しく彼女の身体を抱きしめて、…張り詰めた彼女の呼吸を開放する。


何だか子猫の様な赤ん坊の様な、護ってあげたくなる様な、甘い匂いが、…僕の決意を強くする。





そうだ、これは、僕の戦いなのだ。

意地なのか、何なのか、今や自分自身ですら、その始まりを実感する事は出来ないが、


まぎれも無く、これは、僕とアリアが始めた戦いなのだ。

僕が、彼女達を巻き込んだのだ。


僕が、逃げ出して、…どうする。







そして、二人の凸凹コンビが、僕達の前迄来て、…立ち止まった。


オールバックで、小柄な、ヘソ出しルックの 猫目女と、

赤毛で、大柄だけど妙に腰が低くて…気の弱そうな、お姉さん?



猫目女:「Hi (やあ)、」

大柄お姉さん:「Buona Serata(今晩は)、」


猫目女:「There is 10minutes.(時間迄はもう少しある)、」

猫目女:「Shall we talk just for a moment?(ちょっと話しないか)」


イタリア訛りの英語? 舌の巻き方からして、もしかするとスペイン?



僕は、改めて、此の二人の女達の事を、しげしげと眺める。


今はまるで敵意の無い「この二人」が、如何どうして僕達と殺し合いをしなければならないのだろう?…僕は、不意に不思議に囚われてしまう。


言葉で解きほぐす事で「下らない痛み」を回避する事は、出来ないのだろうか?



翔五:「ホワイ、ドゥ、ウィ、ハフ、トゥ、ファイト?(どうして、僕達は戦わないといけないの?)」


猫目女:「It is for catching Shogo.(翔五を掴まえる為)、It is for remaking the world newly.(世界を、新しく作り替える為)、」


猫目女:「A new possibility is living there. (そこに暮らすのは、新しい可能性)、It might not be human beings.(人間ではないかも知れない)、It could be the world which magic rules.(魔法が支配する世界かも知れない)、The dragon may be flying to the sky.(ドラゴンが空を飛んでいるかも)、」


猫目女:「Don't you think that it seems to be fun?(楽しそうだと思わない?)」


3分後には命を奪い合う筈の少女が、屈託の無い笑顔を手向たむける。



翔五:「ドゥ、ウィ、シュアリィ、ハフ、トゥ、ファイト?(どうしても、戦わないと駄目なの?)」


猫目女:「If you come to us obediently, they will not feel a pain.(貴方が、大人しく私達の所に来てくれれば、コノ子達は痛い想いをしなくても済むわよ。) Do you do so?(そうする?)」



何故、僕は、…そうしないのだろう?


此の世界の先を見せて、…アリアがそう言った。


僕は、その為に此処に居る。

かつて、ロムルスがロムルスの役目を果たした様に、


僕は、僕が此処に居る目的を果たす。



翔五:「No. (いや)、」





瑞穂:「Then, let's start soon.(じゃ、そろそろ、始めましょうか)」

瑞穂:「It is 1 minute till promised time.(約束の時刻迄、後、一分よ)」


猫目女:「I see.(分った)」


猫目女と大柄お姉さんは、ゆっくりと僕達から、…距離を取って、



朋花:「御免ね!」


行成いきなり!

朋花の背後に、直径3cmの赤い魔法陣×1600個が出現!



猫目女:「What?(ん?)」


コロコロと、魔法陣からこぼれ出して来る、火の玉小僧×1600匹!!


オジさん顔の真っ赤な蛙達は、


まるで赤い絨毯の様に地面を覆い尽くし、…

ザワザワと猫目女と大柄お姉さんに押し寄せて、…

ヨィショヨィショと彼女達の脚に取り憑き、…


服の中に浸入、



猫目女:「What are these? Ticklish!(ナニ、これ、くすぐったい!)」


それで、…



…、一斉発火!!



真っ暗なフォロ・ロマーノに、…超新星の輝き!


数百万℃? 恒星コロナ並みの超高熱の「光の圧力」が、夜の闇を、…弾き飛ばす!



轟音:「「「パーー…、  …ーーン!」」」



閃光の残像の跡に、砂の大地が熔けて、…直径25m程のクレーターが出現する。



瞬殺!

開始、25秒前、…



瑞穂:「よしっ、速攻!」


瑞穂、小さくガッツポーズ!



朋花:「アカラサマに反則だよね、…」


朋花、苦笑い、、



瑞穂:「良いのよ、嘘が付けない「聖霊」の裏をかいた、見事な作戦よ!」





ところが、クレーターから、這い上がって来る、…猫目女。。


水の聖霊の冷却能力で耐えた???


それでも、全身の皮膚は焦げ落ちて、剥き出しになった内臓からショワショワと湯気が、…沸き上がっている、



猫目女:「Hey! It is not yet time! (ちょっとぉ!、まだ時間じゃないわよ!)」


大柄お姉さんの方は、完全に跡形も無い。



瑞穂:「「水」には、「火」は効かないっての?」

瑞穂:「面倒くさいわね!」


瑞穂の額にチャクラの光が灯り、大量の砂塵が、…舞い上がる!

砂嵐が、全身消炭状態の猫目女に襲いかかる!


猫目女、水の壁で応戦するが、

砂塵のショット・ブラストは水を吸い取って、更に重く、痛く、


今や女の血の色に染まりながら、砂嵐が、肉を、筋を、内臓を、骨を、切削・研磨する。


猫目女、なす術も無く、全身をむさぼられ、とうとう力尽きて、地面にしゃがみ込み、只管ひたすら、砂に食尽されるのを、…待つのみ、、



そして、猫目女の上空に、ストーンヘンジで見たのと同じ?

キラキラ光る「黒曜石のプレパラート」が、…出現!


超音速で急降下して、猫目女の残骸を、…微塵切みじんぎりにする。。。



かつて猫目女だった肉骨粉、…活動不能。


時計は、

死合い開始10秒前を、指していた。





瑞穂:「翔五、出番よ!」


大柄女の居た空間に、

薄ボンヤリとした、半透明な陽炎が…集まりかけている。 やがて、そこら中に散らばっていた「エクトプラズム」が、再び一カ所に集結し始める。



翔五:「こんな状態からでも、復活するのか、」


それでも、トリアーナには、…敵わない筈


地面に散らばった猫目女の肉骨粉の周りにも、同様に陽炎の様な輝きが集まり始めている。


多分、この陽炎の様なモノに、トリアーナを突き刺せば、…聖霊は卵に還る。


でも、エマの辿った運命を思う時、



翔五:「本当に、…良いのか。」


どうしたって、矢張やはり、…躊躇してしまう。



瑞穂:「貴方が決めれば良いわ、」

瑞穂:「でも、次も同じ様に上手く行くとは、限らないわよ。」


僕は、トリアーナの矛先を、猫目女の光る陽炎に近づける


その時、何かが「コツン」と、肩を叩いた様な、…気がした。



そして、

僕は、トリアーナを、落っことす。



翔五:「あれ? どうしたんだろ、」


見ると、…僕の右手は、ちゃんとトリアーナを握ったまま。

地面に転がっている。



芽衣:「翔五ぉ!!!」





それから、ソニックブームが、…轟く…!



轟音:「「「「…!………!!!!!………!…」」」」


幾重にも反響する、衝撃波!



そして、鼓膜をつんざく音の凶器が行き去った後、

僕は、自分の右肩の付け根から、鮮血が、ほとばしっている事実に、…

漸く気付く。



翔五:「…!」



僕の右腕は、トリアーナを握ったまま、

何時の間にか、取れてしまっていた。


超音速で飛来した氷の塊が、…痛みを感じる間もなく、僕の右腕を、…引き千切った。



めくれ上がった皮膚と、筋肉の隙間から、肋骨が、…剥き出しになっている。



エマが! 咄嗟とっさに氷の絆創膏で、僕の諸々を止血する!



瑞穂:「コレで終わりって訳じゃなかったみたいね!」


僕は、顔から地面に堕ちて、そのまま、…うずくまる。





シトシトと雨が降り始め、あっと言う間に大粒の豪雨となる。


何時の間にか、一人の男が、「ヴェスタの神殿」の前に、…立っていた。



身長は190cm超、細く編んだドレッド・ヘアは肩にまで届く長髪、鋭い目付きに精悍な貌付き、鍛え上げられた全身の筋肉が、襟無しの白い麻のシャツをパンパンに弾き上げている。


冷たい雨の中で、燃える様な吐息が、…湯気になる。



朋花:「誰? あのイケメン?」

瑞穂:「イケメンだけど、…敵よ、多分。。」



朋花の背後に再び、無数の魔法陣が出現!

火の玉小僧達が特攻を仕掛けるも、、、、


突然発生した大量の豪雨で火の玉小僧は鎮火、川の様になった地面を、…何処かへ流されて行く〜



今や豪雨は瀑布ばくふ程にも勢いを増して、みぞれ混じりの重さと堅さで、僕らの身体を、嫌も応も無く、地面に、…這いつくばらせる。



朋花:「何なのぉ? 此の雨!!」

瑞穂:「あの男が、此の雨と雹を、操っているみたいね。」


このままでは、立ったまま、…溺れてしまう。




芽衣が、僕の上に覆い被さってきて、



芽衣:「翔五! 大丈夫?」


隠し持っていたナイフで、自分の掌を深く切り裂く!


流れ出す芽衣の血液を、僕の傷口に塗り付けようとするが、

直接ホースでぶっかけた様なスコールがヒールしの力を秘めた「奇跡の血」を、…洗い流してしまう。



芽衣:「どうしよう。」



そして再び、こぶし程の大きさも有るひょうが、無音で飛来して、

芽衣の身体を、…貫通する。



轟音ソニックブーム:「「「「…!………!!!!!………!…」」」」



口から、土手っ腹に空けられた大穴から、

大量の芽衣の血液が、期せずして僕の身体の上に、…降り注ぐ。



翔五:「め、…い!」





三度みたび


轟音ソニックブーム:「「「「…!………!!!!!………!…」」」」



今度は、朋花が、肩口から尾てい骨に掛けて、氷の塊に貫通されて、今や泥沼と化した地面に、うつぶせに、…倒れる。



瑞穂:「ほのか!!」


エマ:「…!」


エマが氷の盾で雹を防ぎつつ、魔法陣から氷の剣を出現させ、反撃するが、

超音速で飛来する小粒な雹が、ことごとくエマの剣を、…弾き返す!




瑞穂:「ちっ!」


瑞穂が、突然! 頭上に砂の盾を出現させ!


飛来する雹を、辛くも、…弾き返す!

それから遅れて来る、…



轟音ソニックブーム:「「「「…………!!!!!」」」」



瑞穂:「コイツ! 調子に乗ってんじゃ無いわよ!」


と、威勢を張りつつも、スコールの水圧が強過ぎて、容易には…近づけない。




と、次の瞬間!

ドレッド男の胸骨を突き破って、体内から金属の刃が、…生えて?来る!!


血液から錬成された「純鉄のサーベル」が、心臓を突き破り、

強力な筋肉の収縮が、循環する体液を、消火栓の水流の如くに噴出させる!



更に、…


もう一本のサーベルが、ドレッド男の体内から出現!

今度は男の脳髄を、…串刺しにする!



バランス感覚を失って、膝を付くドレッド男、


豪雨が怯(ひる)んだ、一瞬の間隙に!

瑞穂が「黒曜石のナイフ」を出現させて、男の首を、…ねる!!



倒れたドレッド男の背後には、いつの間に其処に居たのか、

アリアが立っていた。


ドレッド男の赤血球から鉄分を抽出、細くて鋭いサーベルを錬成させたのは、アリアの仕業である。




瑞穂:「この、元イケメンは?」

アリア:「メルカバーの一人、…確か、キースとか言う男よ。」


首を切断されたドレッド男の胴体の付け根から、とけるチーズの様にエクトプラズムが膨らみ出して来て、あっという間に人間の首の形を形成、…再生を開始する。



瑞穂:「凄い再生力ね、まるでプラナリア?」


瑞穂が、溜息を漏らしつつ。


黄色い魔法陣から数十本の「黒曜石ナイフ」を出現させて、

再生途中のキースの頭部を、…滅多刺メッタざしにする。



更にエマがキースの「遺骸」に近づいて、…人差し指で鉄砲の形を作り、

その指先から綺麗な「黄金色水」を発射!して、懲りずに再生を繰り返すキースの頭部を、ドロドロに、…溶解してしまう。


そしてようやく、…雨が止んだ。




それから、瑞穂が、僕に近づいて来て、

未だ息の根が止まったままの芽衣の身体を避けて、僕を抱え起こす。



瑞穂:「しっかりしなさい。」

瑞穂:「あの男にトドメを刺したら、その後で、幾らでも優しくしてあげるから。」


翔五:「ああ、…」


僕は虚ろに答えるが、正直な所、血を失い過ぎた為か、力が入らない。

それでも命を保っていられるのは、僕の全身に沁み込んだ、芽衣の血のお陰らしい。


早くも、僕の胸の皮膚は再生し始めていた。





そして、

天空に出現したオーロラの様な光の帯が、ウネリながら、…降りて来る、


瞬間的×局地的に集束された「地磁気」は、空宙に美しい「フレア」を発生。

まるで舐める様に地面を焼いて、…


地面に横たえられた芽衣の体を、燃え上がらせる。



翔五:「芽衣!」

瑞穂:「大丈夫、あの子なら、直ぐに復活する。」


瑞穂は、僕の身体を支えて立ち上がらせ、

ダンスを踊る様に徘徊するフレアから、距離を取る。


アリアが、近づいて来る。



瑞穂:「他にも未だ、敵が居るって事?」

アリア:「そうみたいね。」


フレアはプラズマを揺らめかせながら、地を這い、僕達の直ぐ傍迄やって来る。


瑞穂は、砂の壁を作って遮ろうとするが、フレアはまるで幽霊の様に、、砂の壁をすり抜けてしまう。



瑞穂は、地面に落ちた右腕の端っこを掴んで手繰たぐり寄せ、

トリアーナを僕の左腕に、…握らせる。



瑞穂:「アンタはコレ持ってなさい。」


アリア:「本体は、何処?」







「サートゥルヌス神殿」跡の柱の上に、一人の男が立っていた。


暗闇の中に、幾つものフレアが浮かび上がり、まるで人魂の様に、男の周りを旋回する。



長身の清潔そうな「知的男子」。

短く刈り上げた髪と、彫りの深い欧州人顔、きちんと整備された筋肉、綺麗な姿勢と心地よいオーデコロンの薫り、


しかしその瞳には、凡そ一切の慈悲と言うモノが、欠落していた。


ヒースロー空港で、「ディビッド」と名乗った、イケスカナイイケメン。




エマが、黒く光る?魔法陣から、氷の槍を出現させる!

知的男子に向けて高速で放たれる、十数本の氷柱つらら!!


しかし、その数を上回るフレアの輝きが、一瞬の内に氷の剣を融かしてしまう!



アリアは、驚く程軽い身体を飛翔させて、魔力発動の射程距離(凡そ16m)に飛び込もうとするが、…集中選択的にアリアを狙うフレアの数が多過ぎて、今一歩の所で近づけない。


同時多発的に瑞穂の放つ黒曜石のナイフも、知的男子を守護するフレアの前に、なす術も無く蒸発する。



瑞穂:「コイツら、イチイチ面倒くさいったら…」



そしてアリアが、白い魔法陣から体長2mの二足歩行する「半透明の白ネコ」を出現させる!


まるで何処かのミュージカルで見た様な人間っぽい顔と、ベンガルトラ程も有る巨大な、しかし細身な猫の身体。 長い爪を使って器用に柱を昇り、フレアの弾幕をかい潜ってディビッドに接近! その全身に纏った雷並みの超膨大な静電気を、猫パンチの要領で、…叩き付ける! 



柱の天辺が閃光のプラズマに包まれて、無数の稲妻が辺り一帯の遺跡群に飛び火する!



ところが、ディビッドは全くの無傷の侭、何時の間にか「フォカスの記念柱」の上へ瞬間移動している。


嘲笑う訳でもなく、只冷ややかに、感情の欠如した眼差しで、状況を鳥瞰ちょうかんする。



瑞穂:「瞬間移動テレポーテーション?  あいつら、何でもアリなの?」


瑞穂、げっそりと、苦笑い〜




そして、朋花が、ゆらりと、…立ち上がる。


肩から股間に掛けて貫通した大穴から、モロモロの体液と、人体の内臓物の残骸を、ポタポタと垂れ漏らしながらも、その目には未だ闘志が、…宿っている。


しかし、もはやその姿は、…ゾンビ?



朋花:「やられたら…、ヤリ返す!!!」



巨大な赤い魔法陣が上空に出現!


翼開長24mの、深紅のケツァルコアトルス(翼指竜亜目、アズダルコ上科、アズダルコ科)が、文字通り「ドタっ」と、…堕ちて来る。


しかし直ぐに体勢を立て直し、四つ足で器用に地面を這って疾走!

離陸して、ディビッド目掛けて特攻する!



瑞穂:「恐竜?」



冷静沈着なディビッドのフレアが、ケツアルコアトルスに襲いかかり、

深紅の翼竜は、あっけなく泡の如くに空中分解して、が…しかし、数千の火の玉小僧に変化!!


そのままの勢いでディビッドに降り注ぎ、…発火!!!



轟音:「「「「パーー…、  …ーーン!」」」」


恒星コロナ並みの超高温の光球が、フォカスの記念柱ごと、辺り一帯、半径100mの空間を、…昇華する!!



朋花:「いっちょ上がりぃ!」


朋花、其処で一旦、力尽きて、…膝を付く、



瑞穂:「凄い、って言うか…やり過ぎじゃ無い?」



サートゥルヌス神殿の柱の上に居た筈のアリアの聖霊が、巻き添えを喰って…蒸発。

聖霊とシンクロしていたアリアが、…頭を抱えてしゃがみ込んでいる。 …吐いてる?





しかし、

ディビッドの居た空間には、直ぐ様、朧げに光を放つ陽炎が発生!

ミスト状のエクトプラズムが急速に集まって来て、もの凄い勢いで、肉体を再生、…復活し始める。



朋花:「出ていらっしゃい! 何回でも、…焼尽して上げるわよ〜!」


朋花、口から血反吐ちへどを吐き垂らしながらも、未だ未だその目に闘志は萎えていない。

と言うか、むしろ嬉々として、この戦闘状況を、…楽しんでいる?





そして、地面が割れて、…マグマ?…が噴き出して来る!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る