第27話 茜色の青春
力が入らない。
頭がアンパンであり、一部を誰かに食べさせたのなら兎も角として、残念ながら華の頭はアンパンでも無ければ、誰かに食べさせた訳でも無い。
アンパンでは無く、パイでありパンである場所が、弄ばれる事によって弛緩しているのだ。
勝敗は既に決していた。
華が抵抗出来なくなった時点で、ショクシュ子は勝利したのだ。
しかし、ショクシュ子はこの死闘を、勝利だけで終わらせる気は毛頭無かった。
勝敗が決した後に勝者が敗者へと追い打ちをかけるのは、格闘家としてあるまじき行為。
真の格闘家を目指すショクシュ子にとっては、これからする行為は断腸の思いで望まなければならない。
それでも、ショクシュ子は格闘家である前に触手道の宣教師でもある。
愛なき者に触手を通じて愛を伝えるのもまた、ショクシュ子の努め。
…ショクシュ子は敗者である華に、再び襲いかかった。
それはもう、頭の先から足の先まで、余すこと無く触手で愛するが為に。
勿論、弛緩して力が入らないながらも、華は必死で抵抗した。
16年間生きて来て一度たりとも愛されたことの無い華が、突然愛の権化である触手にそれはもう、タップリと、ネップリと、ヌップリと愛されるのだ。
気が狂わんばかりに激しく抵抗。
死闘から六時間が経過。
華は抵抗する事の無意味さを理解し、愛を…触手を受け入れた。
生まれて初めて愛される事の喜びが、敗北と言う名の屈辱を忘れさせる。
体液塗れの華が、茫然自失で大の字で横たわる。
見上げる空は夕日で茜色に染まり、愛を理解し紅潮している華の顔も、同じ様に茜色に染めた。
「これが…愛…?」
華は触手に責められた事を思い出して、更に顔を赤くした。
凄惨なる人生を謳歌し、狂気の中にしか身の置き場を見出せなかった華は、生まれて初めて知った愛の余韻に酔いしれていた。
この日を境に、華は狂気の奥義
しかし、愛を知り、己を知る事で新たなる奥義を会得する事になる。
最強には愛が必要不可欠。
それを立証して見せたショクシュ子に応える様に、華もまた愛を以って更なる高みを目指す様になるのであった。
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