第4話「そして季節は巡るのさ。参」

新入生歓迎球技大会。

略して「新歓」。

僕は憂鬱な気持ちを抱えたままコートに立っている。

「会場がすごく盛り上がってるね!僕らも頑張ろうか!」

賢人くんが僕の背中をバシッっと叩く。

僕は「うっ」と言い背中を摩りながら賢人くんに「うん……賢人くんが頑張ってね」と伝えた。

会場は僕らの教室以上に騒がしい。

男女別で行われるので、どちらかが応援をしているのだろう。

まぁ僕はクラスの男女を応援する程の元気は残っていない。

「おい、柳!大丈夫か?」

「顔色悪いぞ」

クラス控え席に居ると、僕を心配してクラスの男子が寄ってくる。

「風邪引いてるのか?」

賢人くんまで僕を心配してくれる。

しかし僕は知っているよ。

僕の視界の端では女子達が賢人くんを見て頬を染めている。

「……朝、早く起きたから……気持ち悪くなってきたみたい……」

「相変わらずだな」

賢人くんは僕の背中を摩って呆れた様に笑った。

君は本当に僕の事を心配してくれる。

「……今回は僕出れそうにないから、賢人くん頑張って」

「あぁ、お前の分まで頑張ってくるよ」

僕は賢人くんに親指を立てた。

他の人からも口々に心配する言葉を貰うけど、もう返す気力も無い。

何しに僕はこんな朝早くに起きて此処に来ているんだろう。

母さんに申し訳ない。



親子と言えば親子だけど、愛されているかと言われたら愛されている自信は無い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る