ウサギ狩り。

 ウサギは、結構な数いた。

 それを追い駆ける冒険者も沢山いた。

 この辺には人を襲うモンスターがいないのか、周りの冒険者は動きやすい薄手の装備の人しかいなかった。

 動き回り逃げ惑うしかないウサギを捕るのに、重たい鎧に大きな帯剣をもって追いかけるようなことは、しないのだろう。


 さて、俺は数時間前まであの高校生だったので、当然動物の狩猟なんてしたことなんてない。

 戦闘用と思われるこのナイフも、当然使ったことがない。

 使ったことがある刃物は、カッターくらいだ。

 料理はほとんどしたことがないので包丁も録に使えない。

 

 なので、取り合えず誰かがウサギを駆ってるのを見るため遠目で見ていることにした。

 見ている限り、複数人でパーティを組んで駆ってるようだ。

 数人で追いかけて、他の人が待ち伏せるという作戦を取っているのがわかる。

 俺は仲間などいない、一人ぼっちなのでこの待ち伏せ作戦は、使えないな。

 とりあえず仕留めかたは、首筋辺りを狙って刃物を振りかぶっているのがわかった。

 それで、一撃で仕留められている。

 一見、残酷に見えるがこれがウサギにとって、一撃でいけるので問題ないのだろう。

 

 さて、どうしたものか。

 俺は一人だから他の冒険者と同じような、待ち伏せは無理だから・・・何でギルドの人はこのクエストをソロの俺に受けさせたのだろうか。

 いじめか・・・。

 そうだ、俺が最強だと思っている能力、金縛りをもらったのだ。

 こういう時に使わないで何時使うと言うのだ。

 金縛りの能力さえ使えばウサギくらい余裕だぜ。


 さて取り合えず、他の冒険者が集まっている場所から少し離れた場所で、ウサギを探す。

 あんまり近すぎると、邪魔だとか言われそうだし、離れ過ぎると、ウサギ以外の肉食動物なりモンスターなりが、出てきたときに困る。

 しばらくその辺を探していると、近くの茂みにウサギが一匹いるのが見えた。

 なんか、思ったより大きい。

 遠目で見ていた分にはそんなに大きく見えなかった。

 しかし、近くで見るとビックラビットと呼ばれるのが納得できるほど大きい。。

 1メートルくらいと聞いていたが実際見ると威圧感がある。

 地球の中型犬くらいの大きさがある。そして、ウサギと目が合った。

 ダダダダダ、ウサギは逃げ出した。俺は追いかけた。

 しかし、先回りすることが出来なかった。

 速い、超絶的に絶対的に速い。

 地球産のウサギの速さがどの程度の速さなのかは知らないがきっと、この世界のウサギのほうが、はるかに速いだろう。

 ものすごく速いことを脱兎の如くというが、このことだったのだろう。

 そんな、感動がこみ上げてきたが、初めての獲物に逃げられてしまった現実を受け入れないといけない。

 逃げられたものは仕方ない、次だ。

 異世界初日と言えど今日中に、1匹は捕まえたいので、頑張って次をさがそう。


 次の獲物を探すのに時間が掛った。

 きっと周りの冒険者が追い回すせいだ。

 これで駄目だったら他の冒険者のいない、もう少し離れた所に移動するかな。

 今度は、大きなことに驚いてボーと見蕩れてウサギに見つかるような愚作はしない。

 いきなり死角からの金縛り攻撃だ。


 「止まれ、ウサギよ。」


 なんか、かっこいい言葉を叫ぼうと思ったが特に思い付かなかった。

 まぁいい、大きい声を出したのにウサギが逃げる様子がないので金縛りは成功したようだ。

 よく見ると、ウサギが青白く光っているような感じがする。

 これが金縛りの能力が発動していると言う証なのだろう。

 初めての金縛りが効いた喜びもあるが、効果時間がどれくらいあるかわからない。

 だから、金縛りが効いている間にトドメをささなければならない。

 あーん・・・。 

 ウサギと目が合ってしまった。

 そのせいで、トドメを刺すのは、すこし可愛そうだとか思ってしまった。

 だが俺も生活、主に食費が掛っているし、ウサギを刈るのは、食用のたなので別段悪いことをしているわけではない。

 心を鬼にして、ウサギの後ろに回った。

 そして腰につけたナイフを取り出しウサギの後頭部と首の間辺りに突き刺した。

 

 さてトドメを挿した後が問題だな。 

 どうやってもって帰ればいいんだ。

 そう、ウサギを倒しただけでは金にならない。

 そう、サッキ会った門番の所まで運ばなくては行けないのだ。

 こっから門番がいる所まで意外と遠い。

 1キロメートルくらは、あるんじゃないだうか。

 しかも来る途中気が付いたが微妙に傾斜になっている。

 つまり帰る時は、上り坂になると言う虐めだ。

 悩んでいても仕方ない。結局自分で運ぶしか方法はないだろう。

 他の冒険者達は、複数人で運んでいるようだが、俺にはそんな仲間がいない。

 もしかすると、他の冒険者達には、ウサギを運ぶ専門の人がいるうかも知れない。

 俺も、早く仲間を作りたいな。

 そのためにはレベルを上げないといけないかぁ・・・。

 そういえば、このビックラビットでも多少は経験値が入るとかギルドの受付の人がいってたな。

 多少なりとも入るなら、これでレベル2になったかも知れない。

 よし、さっき貰った冒険者カードを見てみるか。

 レベル2になっていた。

 能力も3づつくらい上がっている。

 これで、少しは強くなったのかもしれない。

 ウサギをラクに持ち上がる程度に力が上がってくれてたら、いいのにな。


 試しにウサギを持ち上げてみる。

 1メートルのウサギは思っていたより重い。

 持ってみてわかったが、マルマルと太っていて柔らかい感触がする。

 何を食えばこんなに大きくなるんだろうか。この辺にあるのって雑草くらいしかないはずだ。

 この辺の雑草って栄養豊富なのかもしれない。イザっとなったら食べようかな。


 その後、門番のいた所まで何度も休憩を運びつつ運ぶことにした。

 明日、筋肉痛になるんじゃないだろうか。

 帰宅部だったのを後悔した。


「おう、お前、一人でよくウサギかれたな。」


「あ、はい。」


 そういいつつ門番の人にウサギを渡した。


「わはは、それにしてもよく一人でビックラビットを捕ることができたな。

 普通、初めてビックラビットを捕るのに数人がかりで3日は、掛ると言われてるのにな。」


「まぐれで、一匹取れただけですよ。」


 そうだよな、あんなに逃げ足速いウサギだ。

 普通、俺がやったような動きを止めるような能力がない場合、あの動きに付いていけるようになるのに何日も掛るのは必然なんだろう。

 まぁ、ビックラビットの討伐で楽した分、他のモンスターと戦う時にツケが回ってきそうだ。


「ちょっと待っててくれ。今、ビックラビットの査定するからな。」


「特に問題なかったら1000ゴルもらえるんですよね。」


「ああ、よっぽど、状態が悪くなかったらそうだ。」


 査定ってどういう基準で行うのだろうか。

 これは、最初の一匹を刈る前に聞いておくべきだったかもしれない。

 減額されるなら1日1匹では、その日の宿代と食費を捻出できないかもしれない。


「まぁ、見た感じ問題無さそうだな。ほら1000ゴルだ。」


「あ、ありがとうございます。」


「それにしても、うまいこと首筋に一撃当ててしとめてるな。」


「たまたまですよ。」


「なにがたまたまだよっだ。普通なら体のどこかに当てればいいやで攻撃を振るうんだよ。

 それが、お前の場合は止まっている相手に攻撃したように、首筋の急所にあててやがる」


 うん・・。

 この人に、金縛りのことを話してもいいのだろうか。

 ギルドの人は、俺の冒険者カードに謎のスキルがあること知っている。

 なので、俺が謎のスキル持ちなのも、そのうちばれるのでここでばらしてしまっても問題ないとは思うが・・・。

 まぁ、金縛りがこの世界でどの程度珍しいスキルで、どの程度強いのかわからない内は黙っておくか。

 目立つの嫌だし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る