すべては店長のために編②

その店で働き出して数日。

定時で帰らせてもらえるし、仕事内容はお客さんの大当たりの対応、ドル箱の上げ下ろし。今までさんざんやってきた事。

なんの問題もなかった。

前の店とは違い、班長も主任も、時には店長もホールに出てきて接客していた。

班長と主任は気さくで話しやすい人たちだった。


でもなぜだろう?

従業員が全員笑っていない。

楽しそうでない。暗い影がお店全体に漂っている。

なんだこれは?


ある日早番勤務終了の17時になり、僕が終礼を受けようとすると、同じ早番出勤だったあとの二人が、ホールに残ったまま。

疑問に思い班長に聞いてみた。


「ああ、あいつらね。遅刻したから、ペナルティーの残業。」


「えっ?二人とも今日時間通りに来てましたよ?」


「先週の話だよ。遅刻した者は最低3日間残業のペナルティーだ。」


「最低3日間!?」


「そのペナルティー明けて1ヶ月以内に遅刻したら、3日間の通し勤務。その一週間以内に遅刻したら、無期限の残業なんや。」


「無期限?それって具体的には?」


「・・・・店長が良い。と、言うまでや。」


なんじゃそら?

遅刻にはそんなペナルティーが課せられるのか?なるほど、時間に厳しい店長だって言ってたからな。

ペナルティー厳しいと思うけど、僕は遅刻しない自信あるし。

僕には無関係の話だ。

それさえクリアすれば楽勝の職場じゃないか。


そう思っていた。

お店全体を覆う黒い影の正体に、僕はまだ気付いていなかった。

その厳しさが、全ての従業員に影を落としていたのだ。

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