新店立ち上げ編その⑥

「なんやと!」

班長が事務所の椅子を蹴り上げる。

その椅子が僕の足に当たる。激痛が走る。しかしその足でもう一度僕はその椅子を蹴り上げた。


「あんた毎日店開ける気あんのか?あんたしか店開けられへんのちゃうんか?会社から店預かっとるんやないんか?」


「黙れ!兵隊!」


その班長はよく部下の事を兵隊と呼んだ。自分は大将であり、部下は兵隊呼ばわりだった。


「大将が寝ぼすけで、兵隊が戦えるかい!」


僕はもう止まらなかった。


「バイトの出来が悪いのは上司である俺のせい。俺の出来が悪いのは俺のせい?いや、違うな。大将の出来が悪いから、兵隊が皆んな出来が悪いんじゃ!」


「お前、もう上がれ!」


「兵隊を生かすも殺すも、大将の技量じゃ!ボケ!」


「上がれ!上がれ!」


そのまま僕は更衣室に向かい、荷物をまとめた。

大将に一太刀浴びせたが、もうこの店では働けなかった。それだけの事を言った。


未経験のスタッフ達がみんな心配そうに僕を見ていた。


「ごめん。」


君らにとっては、僕が大将だったんやな。

まだ俺は大将にはなれない。こうして全て放り投げて店を去るしかない。そんな状況を自分で作ってしまった。


そしてその日のうちに退社をし、僕は職を失った。人生で三軒目のパチンコ屋での出来事である。


その半年後、そのパチンコ店はよその会社に買収され、その後店を畳んだ。

もうこの世には存在しない店だ。


僕はまだ26歳だったかな。

いい大人のする事ではなかった。

解決する方法などいくらでもあったのに。

社会人からしたら、仕事放棄以外のなにものでもない。


今でも僕の汚点だ。

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