新店立ち上げ編その③

この店に来てからずっと疑問に思っていた事。

店長、マネージャー、主任、班長。

この4人の社員が指示は出すが、何もしない。

未経験者40人の研修指導も僕らリーダー社員に任せっきり。

なぜだ?

この理由は後ではっきりとわかる。


新店オープン初日、僕らは朝の6時出勤。パチンコ屋の新装開店には開店プロと呼ばれる連中が大挙して押し寄せる。

全国で新装開店という、百パーセント釘や設定が甘い、新店のみ狙って、電車を乗り継ぎ、車を相乗りして押し寄せて、数日間にわたって稼いで、少しでも釘が閉まると、潮が引くように去っていく、ろくでもない集団である。

その集団が朝から店の入り口に陣取る。

雑誌を何冊も重ねて置いて、

「これで4人分、場所とってるねん!」

と、やから全開の不正を行う。

その見張り、やからの相手をして朝からずっと表で立って人員整理をしなくてはならなかった。


そして、いざ新店オープン!


開店プロ達が大挙して店内になだれ込む。

いらっしゃいませ!

と、お辞儀しているスタッフを跳ね飛ばし、片っ端からタバコやライターで遊技台を何台も押さえる。

未経験のスタッフ達は、なんのことかわからず棒立ち。

そして次から次へとお辞儀をしては跳ね飛ばされていった。


すかさず事務所から無線が飛ぶ。


「かけもちして何台も押さえてる奴らおるやんけ!何しとんねん!」


僕らもあわてて店内に入り、開店プロたちと押し問答。

一触即発の非常事態。

そんな中、普通のお客さんが遊技しだす。

大当たりする。

ランプがつく。


しーーーーーん。


おい!スタッフ!誰も動かんやんけ!

1ヶ月の研修むなしく、未経験スタッフ達は、大当たりしたらどうするのかわからなかった。


数時間経過。

お客さんが呼び出しランプを押しても気づかない。気づけない未経験スタッフ達。

その中を数人のパチンコ店経験者達が走り回る。


もはや教えている暇などない。

お店は開いてしまった。

そして、見えてきた現状。真実。


40人いるスタッフのうち、まともに仕事できるの、5、6人。

そんなパチンコ店がオープンしてしまった・・・・

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