二つ目の店


その次に僕は駅前の一等地に店を構える繁忙店のバイトで採用になりました。

時給は当時で1100円。結構なもんです。

経験者ということで即採用になりました。


しかし初日に愕然とする。

1コース30台がお客さんでパンパン満席。全10コース、スロット入れて約400台がパンパン。

当時CR大工の源さん

CRモンスターハウス、爆裂連チャン機の全盛期なこともあり、とにかく朝から晩までパンパンでした。

僕らのする事は、お客さんのドル箱が一杯になったら床に下ろし、玉で打ってるお客さんの手元のドル箱が空になったら下の箱を上に上げる。

お客さんは何かしてほしい時はナンバーランプの呼び出しボタンを押し、それがコースの端のトップランプと連動していて、僕らはそこが光ればそのお客さんの元に駆けつける。

そして手が空けばお客さんの灰皿回収。一時間もすれば灰皿もパンパン。

単純明快な作業だが、30人対1人。

大当たりが2つ3つ重なればてんてこ舞い。

お客さんの交換でドル箱をジェットカウンターに持って行く作業で、少しコースを離れれば、呼び出しランプの嵐。

対応が遅れると、お金のかかっている事なので、怒って胸ぐらを掴んでくる人もいる。


僕と同じ日に女の子が1人新人ではいって、僕と隣のコースを見ていたが、しばらくするとすぐ事務所に連れて行かれて、そのまま一生戻ってこなかった。


そう。仕事に追っ付かなくて、上がらせられた(クビ)のだ。

求人には未経験でも可とか書いておきながら、仕事が追っ付かなくなったら、指導するまでもなく、上がらせられる。

こっちが仕事を覚えるまで待ってくれない。替わりの人間はなんぼでもいる。

そんな状況だったし、そんな時代だった。

そして、朝礼では10人いたアルバイトが終礼では8人になっていたり。

まさに戦場だった。


1時間働くとパンツまで汗でビチャビチャ。

一日の勤務が終わると、脱力感か更衣室でうずくまる。

そして次の日の出勤時間まで、体力回復に勤めなければ身体がもたない。

身体の痛むとこに湿布を貼って、どうにかこうにか生き残るしかなかった。


手がふと見ると、あちこち傷だらけ。

いつ怪我したのかすらわからない。

靴を脱ぐと、パチンコの玉がコロコロ。

服はタバコの匂いまみれ。

耳には常に有線とパチンコの音が残る。

それが時給1100円の仕事。

なるほど、これは過酷だ。

前の職場では味わった事がない。


人もすぐ辞めていったが、またすぐ新しい人が入ってきた。

この回転率はすごかった。それに残ることにより、僕は生き残っている。

サバイバルのような印象を受けた。


芸人も生き残りの世界。

パチンコ屋の店員も、生き残りの世界なのだ。

どの業界も変わらないと思った。

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