知りすぎていた男編⑦

Nは自分のしていた事を、正直に店長に告白した。

僕も立ち会った。

そりゃ、死ぬほど怒られた。当然である。

死ぬほど怒られたが、自主退社という形で、周りの人間には家の事情で辞めるという事になった。

Nは涙ぐみながら、


「すみません。すみません。」

と、何度も謝罪していた。


最後はきちんとした、ホールマンに戻ったのだ。


「原田さん。色々ありがとうございました。」


僕に深々と礼をするNを見ていたら、涙が込み上げてきた。

将来有望なホールマンだったのに。

そして、友達だった。みんなに期待されていたのに。

救ってやる事ができなかった・・・


Nが退社して数日後、うちの店のスロットコーナーにサングラスをかけた、チャラチャラした男二人組みが入ってきた。

そして、僕を捕まえてこう言った。


「Nおるか?」


僕は、

「Nは家庭の事情で退社しましたが?」

と答えると、


「なんや!あいつ、出る台教えてくれてたのにの!!」

と、平気な顔で抜かしやがった。


こいつらか!Nから高設定台を聞き出し、甘い汁を吸い倒し、最後にはNを脅して破滅させた奴らは!!


「なんのご用ですか?」


「兄ちゃん!Nから聞いてるで、お笑い芸人しながら、パチンコ屋の社員やってるのやろ?大変やな。」


「・・・・いえ。」


「ちょっと、話あるねん。」


「なんですか?」


「ここでは何やからな。お兄ちゃん、仕事終わったらそこの喫茶店行こか!!」


ポンと僕の肩を叩く。


僕の予感が正しければ、


恐らく、僕を、引きずりこもうとしているのだ。


・・・・Nのように。

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