知りすぎていた男編⑤

その晩は、僕がNの誘いを断ったので、スロットの設定の打ちかえは外部に漏れないはずだった。


ところが!


閉店作業をしていると、その日休みのはずのNが私服で店内に入ってくるではないか!


「休みの日にどないしたんや?」


「いや、ちょっと店に忘れ物して・・・」


嘘だ!

店長のスロットの打ちかえを覗きにきたに違いない!

わざわざ休みの日に、そこまでやるか?


「ちょっと、お前、こっちにこい!」


さすがにこれは周りの従業員にも怪しまれると思い、Nを表に連れ出した。


「いい加減にしろや!もう、やめろやこんな事!」


「やめられないんですよ!もう!」


「なんでや!タバコの1カートンが、そんなに欲しいんか?職を失うかもしれんねんぞ!」


「設定を教えないと・・・・」


「???」


「設定をあいつらに教えないと、僕がみんなに設定をバラしてること、店に言うって。」


「は????」


「お前のとこの店員が、スロットの設定バラしてるって、広めてやるって・・・・」


「あほか!!」


もはや、Nはコントロールできていなかったのだ。

最初は身内の親しい友人だけに教えていたのに、それが徐々に友達の友達に広まり、知らない奴にまで広まり、


最初のうちは、設定を教えてくださいと、頭を下げていた連中が、


いざ、教えないとなると、Nの足元をすくってきたのだ!


そりゃそうだ。

設定をバラしてることがバレたら、お客側は何のおとがめもないが、

従業員側は、即、クビなのだ!


立場は、外部の人間の方が有利なのだ。


自業自得とはいえ、Nはもう、後戻りできない状況に追い込まれていたのだ。


「・・・原田さん。助けてください。」


だから、だから、忠告したじゃないか・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る