知りすぎていた男編③

Nのやっていた事がわかった。

Nが閉店作業でスロットの清掃をしていると、店長がスロットの設定を打ちかえていくのだ。

その台を覗き見して、暗記して、自分の友達に電話して情報を流す。

ただそれだけ。


その分け前として、Nはその友人からタバコを1カートンもらえる。


たわいもない行為のように見えたが、僕はどうも理解しがたかった。


そして次のスロットイベントの日には、共通の友人Oが、さらにその他2人の知らない男を連れてきた。


開店してすぐ、またもや台を選ぶ事なく、3人ともお目当ての台へ一直線。

そして、全員が出す。


休憩室でNが言う。

「これで今日はタバコ3カートンですわ。」


「・・・・もう、やめとけよ。」


僕は正直に言った。

「こんなの、バレたらクビやで。」


「なんでですか?店長が悪いんでしょ?こんな従業員の目の前で設定打ちかえて。さらに、朝礼終礼で、知り合いに設定教えてたらダメなんて、言われた事ないですからね。」


「そんな常識的なこと、言われんでも、アカンやろ!」


そして、さらに次のスロットイベントの日には、共通の友人Oは来ず、また知らない男3人がやってきた。


「Oはちょっと、勝たせすぎましたわ。しばらく休ませて、違う奴らに儲けさせてやらんとね。」


なんと!上からの発言だろう。

自分は覗き見した事をたれ流しているだけなのに。

まるで、出玉を司る神にでもなったようだ!

誰を呼ぶか、誰に情報を流すかまで、チョイスしてやがる。


Nの思いのままではないか!


「ほんまに、もう、やめとけよ。」


僕は忠告した。

たしかに、忠告した。


しかしもう、少しずつ、何かが崩れていっていたのだ・・・

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