赤の大捜査線編⑤

その日の閉店後、僕と全社員4人で店の玉を片っ端から抜いていく。

持ち込み交換された、黒っぽい玉を排除するためだ。


黒っぽい玉といっても、チョコボールのような真っ黒ではなく、少しくすみがかかったような玉。

玉を抜き、それを手の平に乗っけて、じっくり見てみないとわからない。

それを選別して排除していく。

まさに気の遠くなるような作業だ。


深夜の3時をまわる。

店長が差し入れに牛丼を買ってきてくれた。

差し入れはありがたいのだが、裏を返せば、まだ帰れない。とことんまでやれ!ということなのだ。


朝方5時すぎ、僕と全社員により、黒っぽい玉をやっとドル箱1箱ぶん集めた。


手の平は全員真っ黒、さらに手の平や指の指紋まで削れるくらい、玉を選別した。


そのまま帰宅したのだが、眠れるはずもない。

約数時間後にはまた店に出勤である。


そして営業が始まると、また例の不正な持ち込み玉を監視しなくてはならない。


眠い目をこすりながら、1日中ホール業務にあたる。


そして、閉店後ホールコンピューターの締め処理をする僕。


誤差玉-3500


・・・・その場に崩れ落ちそうになる。


不正な持ち込みをされるのは、数秒。

なのに、その玉を排除するのに、どれだけの労力と時間を費やすと思っているんだ!


この誤差玉の赤は、店の赤字でもあるが、


僕らホールマンの血の赤だ!


不正が僕らの店を真っ赤に染め上げる。

そして、また店の玉を選別しなくてはならないのだ。


赤く染まった誤差玉が、今日も僕らを帰らせないのだ・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る