赤の大捜査線編①

さてさて。

次のお話し。

それは十年くらい前、当時僕が主任をしていたお店での話です。


一日の営業が終わり、ホールコンピューターの締め作業を任されるようになっていました。

一日の売り上げ、入金額などをホールコンピューターに吸い上げ、閉店後に集計を出すのです。


すると、

「・・・・ん?」


おかしな数字が浮かび上がる。


誤差玉-3200


この誤差玉とは?

パチンコ屋は一日の営業が終わると、この誤差玉という数字をチェックします。


パチンコ台がお客さんに払い出した玉。

それは、ジェットカウンターに流されるか、

機械にそのまま打ち込まれて飲まれるか。

景品交換されなければ、会員カードに貯玉されるか。

そして宙に浮いた玉数が、この誤差玉の数字になります。


通常、パチンコ屋は、よくお客さんが玉をこぼすし、パチンコ台の裏からも少しずつ玉がこぼれたりするので、

正解にはプラスマイナスゼロには、ならず、


誤差玉+1000玉以内


が、通常の営業で正確な数値の範囲内とされています。


しかし、その日、そこに表示されたのは、

誤差玉-3200玉。


赤だ!


赤という事は、もちろんお店側にとってもマイナスである。

機械が払い出した玉以上の玉数が、ジェットカウンターに流れ、もしくは機械に打ち込まれ、あるいは景品交換されたり、貯玉されたりしているのだ。


「なんだこれ?-3200玉??」


「どないしたんや?」

当時の店長が聞いてくる。


「うーん。ちょっと、機械の配線のトラブルかもしれませんね。」

僕は原因がわからず、配線トラブルと判断した。


しかし、この-3200玉という数字、中途半端な赤の数字、これがどんなに怖いものか。

この時はまだこれっぽっちも感じてはいなかった。 


「すぐに機械の配線調べんかい!」


店長に言われ、全部のパチンコ台の裏の配線を調べた。

もちろん数百台あるので、配線チェックだけでも2、3時間かかる。


しかし、この時に気付くべきだった。

配線トラブルという根本的な問題なら、もっと-の数字が大きいはずなのである。

丸一日誤差がでっぱなしなのだから。


しかし、マイナス3000玉くらいの数字は、明らかに物語る。


それまでは、正常だったのに、

ある一時、何か異常が起こったのだということを・・・・


その日は、深夜まで配線チェックをし、帰宅した。

その日だけでも深夜3時まで。

クタクタだった。


しかし、それは全て始まりだった。

全ての、全ての・・・

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