S社員と作業屋編⑥
相変わらず、S社員は遅刻ばかりだった。
一緒に早番の時は、ギリギリの時間になっても来ず、電話をかけて起こしたり、徒歩三分のアパートまで起こしに行ったりして、
なんとか遅刻を防いでやった。
それでも出勤してきたら、スイッチが入ったようにアルバイトの接客を注意する。
「全然笑顔も声も出てへんやんけ!」
無線でバイトに接客の注意をしまくる。
僕ら社員はバイトの食事休憩などの休憩回しをするのが日常なのだが、休憩回しなどしようとせず、ひたすら無線でバイトにガミガミ言っていた。
昼過ぎに店長が出勤してくる。
そんなSの姿をみて、
「そうや、それでええんや。バイトの休憩回しなんて回す必要ない!接客できてへんやつは、帰らせろ!」
そしてSの無線は、僕にも攻撃がきた。
「主任!バイトがこんなけ笑顔も声も出てへんのに、なんの注意もせえへんのやったら、もう帰ってください!」
バイトや店長の前でこれみよがしに無線を飛ばす。
そして次の日も次の日も、遅刻しそうなSを電話で起こし、Sはそんな状態での出勤にもかかわらず、バイトにも僕にも偉そうに指示をだした。
たまらず店長に報告した。
「Sは、ほぼ、毎日遅刻してます。僕が電話や家まで起こしに行って、やっと出勤できてる状態です。ましてや、遅刻してきた事も何回もあります。それを店長に報告せずに、あいつはうやむやにしてます!」
しかし、店長はSへの評価を緩めない。
「遅刻はお前が注意したらええねん。いちいち俺に告げ口みたいな報告してくるな。そんな風にして遅刻の事を棚にあげて、自分がせなあかん仕事を、Sはやってくれてるんやぞ?恥ずかしいと思え。」
「・・・はい。」
「ましてや、逆にあいつがきちんと遅刻せずに出勤するようになってみい!お前完全に負けるぞ!それがあるから、まだお前は上司としておれるんや!あいつの遅刻が治ったら、お前なんぞ完全に降格や!!」
理不尽だ。
理不尽だが、こんな遅刻ばかりする人間を、店長は評価した。
そして、Sは毎日僕に遅刻を助けてもらおうが、庇ってもらおうが、謝罪はおろか、礼も言わなくなった。
そして遅刻しても店長には自分から報告にも行かずうやむやにした。
僕がそれを店長に報告しても、それは、また告げ口だと言われる。
そして毎日ホールで僕やアルバイトにデカい顔をする。
理不尽だが、耐えるしかなかった。
しかしこの理不尽に、終わりはなかった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます