四角い悪魔編⑥

スロットは高設定台を掴めば勝てる可能性が高い。お店からすると長年毎日足を運んでくれる年配のお客さんに勝ってもらいたいのだ。

しかし、年配の方は粘らない。

2、3千円打ったらすぐ移動するし、メダルが1箱出たらすぐ交換して帰る。


ところが若い客は、高設定台を掴むのにあらゆる事をする。

攻略本を読みあさり、小役の落ち方、朝一番のリールのブレ、ランプの光り方、全ての情報を網羅して高設定台を見抜く。

高設定台を掴み取ったら離さない。骨の髄までしゃぶり尽くす。

そして次の日設定を落とすと、見向きもしない。


そんな二つの人種を相手にスロットの設定をするわけだから、もう、どうしようもない。

少し高設定を置けば、しゃぶりつくされて赤字。

低設定を置けば、年配客がハマって懐を痛め、客を減らす。


年配客はそれでもオカルトを信じてやめない。

「お兄ちゃん!中のメダル抜いて、かき混ぜて!」

よく言われる事である。

台の中のメダルが、貯まってるから大当たりしないと思うのだ。

かき混ぜる事で、台が目を覚ますと思っているのだ。

他には、「台が熱くなってるから、冷ます。」

と言って休憩を入れたり、

台に、両手を合わせて拝む人は、のべ数百人見てきた。


若い客は高設定を見つけたら、食事休憩もとらずにブン回し。閉店までどれだけ大当たりを絞り取る事しか考えない。

帰りしなには、クレジットに一枚メダルを入れて帰る。

(次の日設定を打ち変えると、このクレジットが消える。この一枚が残っていれば、設定を打ち変えていない。据え置きという目印)


こんな二種類の真っ二つに別れた客層に、どう設定をしろというのだ?


年配客から若い客に、金が移動していく。

逆年金のような仕組みだ。

それがスロットの実情だった。

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