四角い悪魔編⑤

ある日僕は早番でホールに出ていた。

スロットが一台朝から当たりっぱなし。

打ってるのは見たこともない奴。

遅番の交代の時でもまだ出っぱなし。


早番が終わり事務所に上がると、自店のマネージャーとスロット担当のマネージャーが僕を待ち構えていた。


「どないなっとんねん!あの台!」


「あの台、お前、設定なんぼにしたんや?」


「1ですよ。」


「ほな、おかしいやんけ!」


昨日の夜、間違いなく設定1にした台だ。たしかに連チャンしているが、モードに入ればそんな時もあるだろうと思っていた。

それでもマネージャー達は僕に追い討ちをかける。


「これは、ちょっとやばいで!」


「ほんまか!ほんまに設定1か!」


そんなけ詰め寄られると不安になってくる。でも何度記憶を辿ってもやはり間違いない。

ハッキリとマネージャー達に伝えた。


「ほな、悪い事されてるかもしれん!」


「怪しむのは当然や!何か不正されてるかもしれん!」


よって僕は閉店までその台で打っている奴を防犯カメラで監視しなくてはならなくなった。

ずーっと見ていたが、普通に打ってるだけ。


やっと閉店し、その台は軽くメダル一万枚以上オーバーして終了した。


「原田!台をチェックしに行くぞ!」


スロット担当のマネージャーが僕を連れてホールに降りる。

「原田!お前は台に触るな。俺が設定を確認する!」

完全にまだ僕を疑っている。

マネージャーが設定を確認する。


「1」


しっかり台は設定1を表示していた。

僕は、ほっと胸をなでおろした。

次にマネージャーが懐中電灯を持ってくる。

「台の中をくまなくチェックや!」

懐中電灯を照らし、基盤からサブ基盤までくまなくチェックする。


「何かされてます?」


「・・・・わからん!」


ずっこけそうになったがそういう事だ。

結論として設定1の台が連チャンした。

しかしそれにより、僕の1日を潰し、そしてマネージャー二人をてんてこ舞いさせた。


「原田!エレガードや!」


マネージャーが叫ぶ。

エレガードとは、レインコートなどが体に静電気で引っ付かないようにする、静電気防止のスプレーだ。


「エレガードしたら、なんかなるんですか?」


「設定1で暴れる台に、エレガードしたら、収まった事がある。」


完全なオカルトの世界である。

それでも何でもやる。お客さんがオカルトを信じて、打つ時もあるが、

お店側がオカルトを信じてやる時もある。

静電気で大当たりがどうにかなるはずもない。

それでもやる。


くまなくスロット全体にエレガードを振りかけた。

そして、僕は次の日も朝から出勤して、その台をチェックする事になった。


朝、昨日出まくった台なので、朝から誰も敬遠して座らなかった。

その台の前を通り過ぎた瞬間。


「・・・臭っ!」


エレガードの臭いがした。

ふりすぎたようだ。(>_<)

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