四角い悪魔編④

うちの店はパチンコ約200台、スロット約40台。明らかにパチンコメインの店だった。

パチンコは自店の店長とマネージャーが担当しており、僕は隣の店のマネージャーとスロット担当。

自店では店長とマネージャーが交代で休みをとっていた。


ある日自店のマネージャーがキレ倒す。


「おい!スロット全然客おらんやんけ!どないなっとんねん!」


「はい。」


「はい。じゃなくて、スロット担当として恥ずかしくないんか?」


「・・・はい。」


「夜出てきて設定打ち変えるくらい、誰でもできんのや!客座らせて打たさんかい!隣の店のマネージャーに交渉して、もうちょっと高めの設定置くなりなんなりせいや!」


「・・・はい。」


さんざん怒られて、隣の店のスロット担当のマネージャーの所に行く。


「・・・・あの。」


「なに?」


「お客さんが少ないのでもう少し高めの設定置いてはどうかと・・・」


「えっ?今月、スロットの利益なんぼあんの?」


「えっ?」


「他店は?どんなイベントして、どのくらい出してるの?それに対してうちは、今どれくらい出してるの?」


「・・・はぁ。」


「高めの設定っていうけど、この機種の設定⑥は出玉率何パーセントなん?どのくらい出るの?」


「いえ。それは、その・・・・」


「もっと勉強してから言うてこいや。利益がなければ、新機種も買えない。バイトの人件費も払えないんやで。」


「・・・はい。」


まさに板挟み。板挟みだった。

自店のマネージャーは稼働を求め、

隣の店のマネージャーは利益を求め、

双方から責められる。

僕はただ設定を打ち変えるだけの男なのに。

意見をする理論武装もない。経験も知恵もない。


ただ、わかる事。


この立場、一般社員という身分の低い立場で、文句も言えず毎日夜出てきて、上の人間達に言われたい放題言われる立場。


辞めた班長も、そうだったに違いない。


稼働を上げて

利益も上げる。


相反する二つの事を求められているのだ。

設定を打ち変えるだけの男に・・・

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