四角い悪魔編③

1ヶ月もすればわかった。

全く休めない!

早番だろうが、遅番だろうが、閉店後店に戻ってきてスロットの設定をしなくてはならない。

休みの日も私服で夜、店に出てきて設定をした。

設定担当のマネージャーは、

「用事ある日は、前もって言えよ。」

と、言うが、裏を返せば、


用事がなければ、毎日出てこい。


ということだ。

理由は簡単。前班長が辞めてしまって、その店のスロットの設定をできるのが僕だけ。もちろんその人間はスロットの設定がわかるので、

代わりに設定をできる人間を何人も作ると、設定が色んな人間に知られてしまうからだ。

隣の店のスロット担当のマネージャーは、そこの店の設定もしなくてはならず、その人も休んでいなかったので、僕も全く休めなかった。


その月の給与明細を見て愕然とした。

「・・・一円も給料、上がってない。」

設定を担当すれば少し給料が上がると思っていた。

その事をまた、スロット担当のマネージャーに聞いてみた。


「君は設定決める権限はないやろ?設定を決めて数字の責任のとれる役職になれば、手当てがつくから。」


なんと。僕はまだスロット勉強中という扱い。勉強中は一切給与に反映されない。

なんも担当してない、一般社員と同じ給料。

割に合わない。

と、思っていた。


「でも設定やってる、やってないは、必ず君の出世に関わるからな。」


と、言われた。

その頃、ちょうど妻が一人目の子を妊娠していた。

出世、給料が上がる。

そう思えば頑張るしかなかった。


身重の妻を家に一人にしては、毎晩毎晩、店に行って設定をしていた。

妻には常に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


しかし、そんな事では終わらなかった。

勉強中の男に、次々と試練が襲いかかってくるのである。

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