四角い悪魔編②

スロットの設定は、ほぼ6段階。

設定①から⑥まで。①が一番出なくて、⑥にいくほど出る。


その日から毎晩、夜閉店してから店に行かなければならなくなった。

班長がスロットのデータを出す。

それを隣の店のスロット担当のマネージャーの所まで持って行く。

スロットの設定は好き勝手に決めれるわけではなく、きちんと責任者がいて、その人に指示をもらわなければならない。


班長がその日のデータを見せる。

「ふーん。明日はこんな感じでどうかな?」

スロット担当のマネージャーがデータに設定をペンで書き込む。

「いいと思います。」

そして店に戻る。


「ほんじゃ、原田くん。設定を打ち変えていって!」

と、班長にポンと設定キーを渡される。

その設定キーでスロットの設定を変えるのだ。


ポンポンポンポン!

簡単だった。

設定は子供でも打ち変えれる。

全40台あるスロットの設定は10分もあれば打ち変えれた。


そして再びスロット担当のマネージャーのとこに行く。

「終わりました。」


「君に大事な事を言っておかなきゃならんかった。」


「何ですか?」


「君の仕事は設定を決めたり、設定を打ち変える事じゃない。」


「なんですか?」


「お客さんに、スロットを打たすこと。それが君の仕事や。」


「・・・。はい。」


その意味。その重さ。

そしてその難しさ。

そして理不尽さ。


それにまだほんの少しも気付いていなかった僕。


そしてその月末に班長は退職した。


「原田くん。頑張ってね。」


そして僕は一人になった。

一人のスロット担当者。


悪魔はすでに、僕の片足を掴んでいた・・・

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