四角い悪魔編①

それは僕が今から10年以上も前で働いていたお店でのこと。

スロットの担当である、その店の班長が今月で辞める事になった。

そしてその班長に言われる。


「原田くん。スロットの設定やってみたくない?」


当時はスロットの人気機種、北斗の拳、押忍!番長などの全盛期。

打った事のない人でも名前は聞いたことがあるだろう。

僕も当時はスロットが好きでよく打っていた。

「興味あります。」

そう答えた。


「俺も今月で辞めるし。スロットの設定してみない?」


「はい!」


とても面白そうだった。

パチンコ店に勤める人間は、誰しも憧れる部分。

出る、出ないに関わる、携わる。

そんな仕事、やってみたかった。


「僕、まだ一般の社員ですけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫。大丈夫。原田くんならできるって!」


悪魔の誘いだった。

もっとよく考えて返事をするべきだった。


なぜ、この人は今月で辞めるという選択をしたのか?

それに気が付いていたら。

それに気付いていたら。


スロットという四角い悪魔が、この人を結果的に退職に追いやったのだ。


それに気付かぬ僕、しかし、それに気付くのに、

・・・・1ヶ月もかからなかった。


四角い悪魔編の、スタートだった。

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