不毛地帯編⑥
そして。
数年後、僕とマネージャーのお店は閉店した。
現実は結果が全て。ドラマのような奇跡は起こらない。建物の老朽化もあり、改装してまた新たにオープンしなおす事になったが、お客さんがきちんと入っていればもちろん、こんな事にはならなかったに違いない。
お店には工事の業者が入ってきて、パチンコ台を全部運び出し、解体屋がお店をバラしていった。
最後はマネージャーと僕でお店の最期を看取った。
壁もぶち壊され、トイレも丸出しになった。
このトイレ、紙を補充しないバイトを怒ったっけな。
何もかも懐かしい。
マネージャーと二人で便器を持ち上げ、瓦礫の上に積んだ。
お客さんが座っていた椅子も、引っこ抜いて瓦礫に積んだ。
どんどん涙が溢れてくる。
あんなに転勤したくなかった。
転勤してからずっと大嫌いだった。この店が。大嫌いだった。
だけど必死で救おうとした。
守ろうとした。
朝も、昼も、夜も、この店に寝泊まりもした。
そんなに手をかけた店を、誰が潰したいと思うものか!
潰したいと思う人間が、どこにいるか!
好きにならなければ、守ろうと思うものか!
自分の家より、長い時間、この店に費やしてきたんだ!
マネージャーだってそうだ。
その店を瓦礫にするなんて、してしまうなんて。
自分たちの無力さ。その後片付けをする。
こんな、
こんな。
・・・・こんな酷な、仕事。
・・・今までの、どんな、どんな仕事より辛かった。
ごめんよ。
守ってやれなくて。
もっとパチンコ屋のスペシャリスト、天才外科医のような人間なら、
救えたかもしれない。
僕は、六軒目にして、初めて、パチンコ屋の閉店を経験する。
この先、僕は、どうなるのだろう?
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