新たなる希望編②

そこのパチンコ店でアルバイトを始める。

僕は、明らかに浮いていた。

ほとんどが若い女性スタッフばかりで、男性スタッフはほぼ社員のみ。パチンコスロット合わせて200台にも満たない小さなお店だったが、お客さんの入りは連日満員御礼に近かった。


働いてすぐにわかる。

今までのお店とは全然違う!


女性スタッフがお客さんの扱いをこなれている。

負けてイライラしていても、女性スタッフが頭を下げたり、なだめたり、話を聞いてあげて、お客さんはまた打ち出す。

社員もそう。必死に負けてるお客さんのご機嫌をとって、

時には店長もホールに出て、負けてるお客さんの話に耳を傾けては、


「これも、運のもんやからね!頑張りましょ!」


そして負けつつも、お客さんはまた打ち出す。

少しでもお客さんに打ってもらおう、打たせよう。とする創意工夫がスタッフ全員から感じた。


そして、やはり出玉もあった。

台数が少ない、狭い店内ということもプラスされ、少しでもドル箱を積み上げるだけで出玉感があった。

少台数のため台がすぐ埋まり、1、2台の空き台が出ると、そこを他のお客さんが取り合うように座る。

全てがプラスに作用され、インフレのような効果をもたらす。


たしかに台数が多くてお客さんガラガラの店は、どこ打っていいのか、どこに座ったらいいのか?という選択肢が多すぎてしまうものな。


僕は前の店でも、その前の店でも、経験しなかった事。それはお客さんを「もてなす」ということ。


僕はバイトで入って数日で、お客さんから

「無愛想」「偉そう」「パッとせん」

と言われる。


僕の経験なんて、そんなもの。お客さんのために作用する経験なんて、これっぽっちもしてこなかったな。と痛感した。


それでも数ヶ月働いたのち、晴れてその店の一般社員として迎え入れてもらえる。

僕に、お客さんを「もてなす」事ができるのだろうか?


そのスキルが僕にあるのだろうか?

それでも社員にしてもらえた。

この店の主役は女性スタッフ。

彼女らのサポートに回ろう。

そして、スキルを盗もう。

そう思っていた。


十年近く働いていても、女性スタッフに劣る。その十年はなんだったんだろう?

最初からここに来ればよかった。


スタートは遅れたが、やっと、スタートラインに立てたような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る