彼が近所のスーパーで異世界無双した結果
虹色水晶
実際に日本のスーパーで塩と胡椒を買って 異世界で売ってぼろもうけしたらこうなるだろうね
その男はある日。
自分の家のタンスが異世界に通じている事を発見した。
どうするべきかと十分ほど考えたが、やがて十分ほど歩いたところにある近所のスーパーにいき、塩を胡椒を買い、それから異世界に旅立つことにした。
「私も長年商売にかかわってきましたが、これほどの品質の良い塩と胡椒は初めてです。濁りのない真っ白な雑味のない塩に鮮烈な香りと味の胡椒。素晴らしいとしか言いようがありません」
そうですか、でもそれネットスーパーで買うと塩は5キロで銅貨5枚くらいだし、胡椒も100グラムで同じくらいの値段だったんだけどね。
「是非とも買取らせていただきたいと思っておりますが、これはどちらで入手されたのですか?」
はい、近所のスーパーです。異世界産の塩と胡椒なので品質は保証します。って言えるかよ。男は心の中でそう思った。
「旅の途中でちょっと……」
言葉を濁すとギルドマスターは「私が野暮でしたな。商人がおいそれと仕入先を漏らすわけにはいきませんな」と言って笑っていた。
「それで、金額の方なのですが、塩が金貨4枚で胡椒が金貨10枚でどうでしょうか?」
「…………え?」
う、嘘だろ?元値2つ合わせても千円札1枚程度なのに、塩が金貨4枚?胡椒が金貨10枚?え、え、え、この世界で塩と胡椒が高値だってのは知ってたけど、そこまで高くなるのか?
「やはり低すぎますか……。では2つ合わせて金貨15枚ではいかがですか?」
うおっ、買取金額が上がったぞ。
黙ってたのを渋ってると思われたのか?
いやただ単に驚いてるだけなんだが。
「く……それでは2つで金貨17枚です。これ以上は上げられませんぞ」
ギルドマスターが何を勘違いしたのかはわからんが、また買取金額が上がった。
「は、はいっ。そ、それでいいです」
き、金貨17枚かよ……。
元値銀貨1枚だぞ、それが金貨17枚。
こりゃぼろ儲けだぜ。
男は思った。近所のスーパーで塩と胡椒を買い、それを異世界で売りさばいて大儲けしようと。
一時間後、インスタントラーメンとコーラで軽い食事を終えた男は商品の仕入れる為に近所のスーパーに向かった。
店員は言った。
「御会計1960円になります」
男は支払いを済ませようと財布を開き、そこで気づいた。
中に金貨しか入っていない。
そうだ。日本は金貨ではなく、日本円を使って買い物をするのだ。
「すいません。ちょっと足りないようです。銀行で降ろしてきます」
そう言って男はスーパーを後にした。
「金貨を日本円に両替してほしいんだけど」
男は銀行で金貨を店員に渡しながらそう言った。
「両替ですか。かしこまりました」
「いくらになります?」
「それではこちらに住所とお名前をお願いします」
銀行員は書類らしきものを男に渡した。
男が書類に必要事項を書くと、彼の手には金貨の代わりに日本円が手渡された。
男は満面の笑みで帰っていった。
それから暫くの間。男は近所のスーパーと異世界を往復するだけの生活が続いた。
楽して大金が手に入るようになったので、仕事もやめてしまった。
数日後。男の自宅に警察が押し掛け、彼は逮捕されてしまった。
留置場で無実を訴える男の前に、大量の金貨が置かれた。
「これは盗んだものだね?」
まさか異世界から持ってきた。とは言えなかった。
「ひ、拾ったものです」
適当にはぐらかし、拘留期限まで絶える事にした。だが、男が釈放されることはなかった。
数カ月後。
自衛隊の駐屯地にタンスが運び込まれた。
「これが異次元空間に通じているというタンスか」
「にわかに信じられないな」
「ノーベル物理学賞を受賞した学者によれば、銀河系の反対側に通じているという話です。重力線の歪みで観測できたそうです」
「向こう側はどうなっている?」
「プテラノドンに似た爬虫類が大量に編隊飛行するような環境だそうで」
「一度に歩兵一人と、携行物資しか持ち運べないのでは危険すぎるな」
「学者の話では、空間の歪みを広げたりできるかもしれないという話ですが」
「危険な生物がこちらに来る可能性もあるじゃないか」
「その為の調査が必要なわけですから」
「まぁ。確かにな」
こうして。男が持っていたタンスは国家が管理することになった。
彼が近所のスーパーで異世界無双した結果 虹色水晶 @simurugu
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