第29話 境界
まだ空気が火照っている。オレンジ色に焼けただれた丘は、まるで溶岩が流れ出た山肌のように見える。爆風でなぎ倒された木々は大半が炭になりかけていて、もはや森の体をなしていない。所々に砲撃隊の残骸が見受けられる。だが、バラバラになった砲身や車輪は高熱に晒されたせいか、どれも酷く変形していた。
ディノは「酷い……」と、呟いたきり黙りこんでしまった。
大爆発の余韻も覚めやらぬ中、バハムートは宙に浮いたまま地上の惨劇を見下ろしている。しかし、さすがにギガント砲の一撃が効いたのか前進する気配は無い。
〔止まった……のか?〕
ここからではどの程度のダメージを与えたのか分からない。動けないようにも見えるが、休んでいるだけのようにも見える。
〔どっちだ? いくらなんでもアレで無傷はねえだろ……〕
ところが、しばらくしてバハムートが動いた。天を仰ぐような仕草をみせたかと思うと、まるで自らに発破をかけるような咆哮を繰り出した。
〔凄え……〕
腹の底にズンと響くような大音量だ。
『化け物か』と、身体が吐き捨てる。
〔ひょっとして物理攻撃は全部ダメなんじゃね?〕
あれだけの火力を集めながらこのザマだ。魔法攻撃にしても結局、致命的な傷は負わせられなかった。女剣士を助ける為に全力で切りつけた攻撃だって手の甲にちょっと傷をつけた程度に過ぎない。
〔クソ……不死身かよ……〕
これはもう女剣士の連れてくる封印術士に期待するしかない。
『もう回復したようだな……』
身体の言う通り、バハムートは再び低空飛行で前に進み始めた。
それを見てディノがオロオロする。
「どうしよう……もうダメかもしれない」
『たわけ! まだ終わっちゃいない!』
身体はディノを叱り飛ばすとバハムートを追う態勢に入った。
「あ、待って!」というディノの慌てた声を背中に受けながら前に向かう。
〔追うのはいいけどディア・シデンがびびってんだよなぁ〕
それがちょっと心配だった。ディア・シデンは利口なドラゴンだからバハムートの怖さをよく分かっているんだと思う。
しばらく飛んだところでその予感は的中した。やはりディア・シデンのスピードが明らかに鈍ったのだ。そこで身体が右手をディア・シデンの首筋に当てて言う。
『大丈夫だ。俺を信じろ……』
〔そんなんで恐怖心が克服できりゃ苦労しないよ〕
と思いきや、手の平にピクンと反応が返ってきた。と同時にディア・シデンが力強く加速したのだ。
〔嘘だろ!? 今ので気持ちが通じたとか……〕
しかし認めざるを得ない。身体のメッセージでディア・シデンの動きが目に見えて変化したのは事実だ。
〔なんだよ! 今頃、急にやる気出しやがって!〕
ディア・シデンは目標にグングン近付く。そしてバハムートの背中まであと少しというところで身体がすっと右手を天にかざした。
『グラマジカス!』
その呪文から数秒後にバハムートの頭上に無数の氷柱が出現し、それらが一気に『ズドドドッ!』と、降り注いだ。
〔この技は……ソヤローを殺った時の技!〕
間違いない。だが、あの頃とは比べ物にならない威力だ。10秒、20秒と時間が経過しても降り注ぐ氷柱の勢いは、まったく衰えることがない。その攻撃範囲も随分と広くなっている。やはり四天王と戦った時よりも確実にパワーアップしている!
氷柱の群れは、まるでバハムートの頭上に天使の輪ができたみたいに白く留まり、執拗に氷柱を浴びせ続ける。何分ぐらいその攻撃が続いただろう。さすがのバハムートも飛行速度が鈍ったように見える。そこで身体はすかさずディア・シデンをバハムートの背後に寄せると、その上空から剣を構えて飛び降りた。今度は接近してからの飛び降りだったので、それほどの落下速度は生じない。
〔ちょっ……こんなんで大丈夫か!?〕
身体が狙ったのはバハムートの羽の部分。そこに剣を突き立てながら『パザム・ル・マジカド!』と、呪文を唱える。そこで『ピカッ』と剣先がスパークすると同時に身体がジャンプして離脱し、バハムートの羽から飛び降りる。
〔今の呪文は!?〕
つい最近聞いたような呪文。そこで生じた『ズォォォ』という低い音で思い出す。これはジョイルスの無敵艦隊を足止めした技。
〔粘性と密度を高める呪文だ!〕
羽から飛び降りた先にはディア・シデンがちゃんと待っている。ちょうど一撃離脱の形となって再びバハムートと距離を取る。
そこにディノのドラゴンが近付いてきた。
「ダン! 今のは?」
『まあ、見てろ……』
そう言いながら身体は右の拳を握り締めた。するとバハムートに異変が見られた。
ディノが叫ぶ。
「あれっ!? バハムートの動きが!?」
一定の速度で移動していたのが突如スムーズさを欠いた。そしてバランスを崩したバハムートは、まるでバナナの皮ですっ転ぶように仰向けに空中で半回転すると背中から落下していった。
ディノが驚いて尋ねる。
「ダン! いったい何をしたんだい?」
『左の羽だけに水を集中させた』
「水を……え?」
『只の水じゃない。だいぶん濃縮してあるからな』
「そっか! 凄い量の水を粘着させたわけか! それでバハムートは重さに耐えられなくなったんだね』
ディノに解説してもらうまでもなく身体の狙いは理解できた。バハムートの周囲に水を集めて固める。あの執拗な氷柱攻撃は、これの布石だったのだ。なる程、そういう使い方もあるんだなと感心する反面、だったら最初からそうしておけよとも思う。最初の水ドラゴンで体力を余計に使ってしまったのは何だったんだ…。
バハムートは、ゆっくりと落下しながら、もがき続け、やがて背中から地面に叩きつけられた。『ズシーン!』という轟音が森を揺らせる。
仰向けになって暴れるバハムートを見下ろしながら身体が言う。
『何をボヤボヤしている?』
そう言われてディノがきょとんとする。
「え? な、何が?」
『せっかく敵が仰向けになっているんだぞ。さっさと急所とやらを突け!』
「え、いや、だって、さっき……それにミディアさんが戻ってくるまでは……」
『一度弾かれたぐらいで諦めるのか?』
「でも封印を解かないと……」
『フン。力ずくで封印を解けばいいだけの話だ』
身体はそう吐き捨てるとディア・シデンの背中で立ち上がった。そして大きく息を吸い込んで剣を逆手に持ち替える。
『で、どこが急所だって?』
「右のわき腹。あの三日月みたいに見えるとこ」
『ああ。あのピンク色の部分か。よし。分かった』
「ちょっ、いくら君でも無理だよ! あの封印は……」というディノの台詞が終わる前に身体は飛び降りてしまった。
〔おいおいおい! 弱点を突けるのは光属性の攻撃だけじゃなかったのかよ!〕
高いところから飛び降りるのには、さすがに慣れてきた。これだけ無茶をしても最終的にはディア・シデンがキャッチしてくれるし、物語の展開上、転落死という結末は有り得ないと分かっていたからだ。
『ぬぉぉ!』
大剣に全体重を乗せるような形で身体はバハムートに向かって落下していく。足元より下の部分には剣先が見える。そして向かって行く先にはピンクの三日月がくっきりと……。
『喰らえ!』
渾身の突き! まさに全身を使っての攻撃だ。が、まるで見えない壁があるかのようにこちらの勢いが完全に遮られた!
『なに!?』と、身体が驚くと同時に下の方から途轍もない痺れが突き上げてきた。ガツーンとくる電撃! それが尻の穴から背骨を貫き、脳天に駆け上がる。
〔がああああっ!〕
……ヤバイ
これはさすがに……
なんか……真っ白?
これは死ぬって……
* * *
スイッチが入ったように意識が起動した。目を開けて考える。
(まだ生きてる……)
視界に入る天井は現実世界のものなのか漫画なのか判断がつかなかった。もう長いこと漫画の世界にどっぷり漬かっていたせいで目が慣らされてしまったのかもしれない。
長いこと天井を眺めて、ようやくまだ漫画世界にいることを理解した。
(やれやれ。やっぱりこっちか……)
おそらく気を失っていたのだろう。その自覚はある。とにかく最後に喰らった痛みは只事ではなかった。まるでカミナリをケツの穴にねじ込まれたような衝撃だった。だけど多分、痛みを感じたのは、ほんの2秒か3秒ぐらいで、すぐに痛みのメーターを振り切ってしまったのだ。
そこで気絶するまでの感覚を思い出してみる。あの時は本当に死を覚悟していた。敵の弱点を突いたつもりが封印だか何だかで弾かれてしまったのだ。
(助かったのはいいけど……あの後どうなったんだろ?)
試しに右腕を動かしてみる。うん。自分のターンだ。ということはバハムートとの戦いは終わったのだろう。そう思うと何ともいえない脱力感と喪失感が襲ってきた。
(酷え話だ……)
この『置いていかれた感』は何だろう? 一番盛り上がっているところで追い出されてしまったような疎外感。
茫然としていると人の気配がしたので入口の方に視線を移した。
「あら。目が覚めたみたいね」
そう言いながら室内に入ってきたのは女剣士だった。
女剣士ミディアはベッド脇の椅子に腰掛けてこちらの顔を眺める。
「ふざけんな」
思わずそんな言葉が出た。
「どうしたの? 随分、ご機嫌ななめじゃない」
「マジでやってらんないよ。もう止めたい」
「何怒ってんの? 助かったんだから良かったじゃない」
こちらの思いなど関係ないみたいな彼女の口調が憎らしく思えてきた。
「ちぇっ! 痛い思いをする身にもなってみろって。おまけに肝心なところで立ち会えないなんてさ。割に合わないよ」
それを聞いて女剣士はケタケタ笑い出した。なので余計にムッとしていると彼女が言い訳をする。
「笑っちゃってゴメンね。でもそれは仕方ないわ。だって、アナタ主役じゃないんだもん」
「んなこと分かってるよ。けど、納得いかねえ。あいつばっか美味しいトコ持っていきやがって」
「そう言わないの。アナタも頑張ったんでしょ? たぶん女の子の読者も喜んだと思うわ」
「そうかなあ」
人気がある作品には大抵、脇役キャラにもファンがついている。この身体がどれぐらいの人気なのかは分からないが…。
彼女は言う。
「主役ばかりモテるってワケでもないのよ。あのね。女の子って結構、良く見てるのよ。あんまり活躍してないような男の子でも、ちょっと良いとこがあれば、ちゃんと見てる子がいるものなの」
「そんなものなのか……」
何だかちょっといい話を聞いた。けど騙されないぞ!
「それはさておき、結局、どうやってバハムートをやっつけたんだ?」
「あ、そっか。アナタ気を失ってたから知らないんだね」
「そうだよ。すっげえ苦労したのに肝心なトコで退場させられちゃったからさ」
「そう。私もずっと見てたわけじゃないんだけど……」
彼女はそう前置きをして、足りない情報はディノから聞いた話で補完しつつ、あの後の展開について説明してくれた。
「アナタの攻撃は封印で弾かれちゃったの。で、弾き飛ばされた後、バハムートの爪で背中を引っ掻かれたのよ」
「ゲ! あんなので引っ掻かれたとか……よく死ななかったな」
「確かにヤバかったみたいよ。ディノが傍から見ててもダメかと思ったって」
「え? そんなに?」
「うん。凄い量の血だったらしいわ。血しぶきが背中からドバーって。蝶々の羽みたいに広がってね」
「そうだったんだ。背中の傷みはそれだったんかな?」
てっきり電撃を喰らったものだと思っていた。それぐらい全身に強い電撃を感じたのだ。
「ねえ、そんなに痛かったの?」
「痛いなんてもんじゃないって! 痛すぎてすぐに気を失ったからまだマシだったけど」
「なるほどね。それで意識が飛んじゃったんだね」
「うん。目の前が真っ白になって、なんだかポカポカしてた。ただ、なぜか温かかったんだよなあ。で、なぜだか知らないけど『ああ、これが死ぬってことか』って悟った」
「悟った? なにソレ?」
彼女は目をクリクリさせながら身を乗り出してきた。ちょっと可愛いなと思いつつ、話の続きを促す。
「いや。本当にそういう心境になるんだって。で、その後どうなった?」
「そうそう。でね……」
彼女の説明では、女剣士が連れてきた大法師様がバハムートの弱点を保護する封印を解くのに『ひと悶着』あって、その後でようやくディノの光攻撃が効いたのだそうだ。
「それが結構、大変だったのよ。なんでもその封印っていうのが攻撃する者のトラウマを投影するものらしくって、あの子にはその『人柱』が知ってる人間に見えたんだって」
「ヒトバシラ? 人柱って何?」
「生け贄のことよ。なんだか良くわからないけど、知らないオジサンがバハムートの背中にめり込んでて、その人を斬らないと封印が解除できないんだって」
「けど、知らないオッサンなんだろ? 遠慮なく斬っちまえばよかったのに」
「それがね。幻術って言うのかしら? あの子にとっては人柱が昔死に別れた大切な人に見えてしまったみたいよ。散々「ボクには出来ない」って大変だったの。だからほとんどの時間を封印の解除に費やしちゃったって感じよ」
「ああ、分かる気がする。あいつ、ヘタレだからなあ。多分、回想シーンとか葛藤とかでグダグダになったんだろうな」
ディノはサクっとバハムートを倒したわけではないのだ。それを聞いて少しは気が晴れた。漫画の主人公に嫉妬するのもどうかと思うが、それが偽らざる心境だ。
(美味しいトコを持っていかれてばかりじゃ堪らないからな……)
女剣士が「ふぅ」と一息ついてから説明を続ける。
「弱点を攻撃するまでが異様に長かったわ。だからかな。その分、バハムートが封印された時は呆気なく感じられたわ」
「随分あっさりしてたんだね。で、どんな風に封印されたの?」
「そうね。泡風呂の泡が排水溝に吸い込まれていく感じ、かな」
微妙な言い回しだ。
「うーん。想像できるような出来ないような……」
あの凶悪な巨体が渦を巻いて吸い込まれていく様を想像してみた。が、イメージが浮かんでこない。やっぱり、その最期を見届けたかったというのが本音だ。
そこまで話したところで急に彼女が話題を変えた。
「ね! そういえばさっき死にかけたって言ったよね? その時、何か変わったことはなかった?」
「いや……特には」
「前の世界に戻りそうになったとか、何か変わったものが見えたとかは無かったの?」
「うん。何も……」
それを聞いて彼女はがっかりした。
「ふぅ。そうなんだ……」
何だか彼女の期待に応えられなかったようで申し訳ない。
「ゴメン。本当に頭が真っ白で、気がついたらここだった。夢もみてないと思う」
「そう……それではヒントにならないわね」
女剣士はしばらく考え込む。その横顔をぼんやりと眺める。ふと、その真剣な表情に魅かれている自分に気付く。
(やっぱ綺麗な顔してるよな……当たり前か。漫画に出てくるぐらいなんだから)
そんな事を考えていると彼女が口を開いた。
「前にも言ったかしら。私達みたいにこの世界に来てる人の中に、死にかけた人が居たって話」
「そうだっけ? なんか聞いたような気もするけど、よく覚えてないや」
「やっぱり生き返るぐらいだから本当に死んだことにはならないのかな。でも、死んだ人に話は聞けないし。一人死んじゃったんだけどねぇ」
「そりゃそうだ。そんなの現実世界でも同じだろ。だから死後のことは誰にも分からないんだよ」
「そうね。この世界で死んだらもとの世界に戻れるかもしれないって思ってたけど、いまのところ何の保証もないのよね」
そこで前に考えたことを素直に口にしてみた。
「あのさ。なんで俺達ここに来ちゃったんだろ? 実は前の世界で死んじゃったんじゃないのかな?」
「それは私も考えたわ。何度もね。もしかしたらこれは死後の世界なんじゃないかなって思ったこともある。けど、アナタをはじめ同じ境遇の人達からこの世界が連載漫画の世界だって聞かされてから少し考えが変わったの」
「え? それってどういう風に?」
そう尋ねたところで背中に走る感触!
(うえっ、来た!)
肝心なところでコントロールを奪われてしまった。それは彼女も同様で、ピクンと身をよじらせた後で明らかに顔つきが変わった。
「アナタのおかげで何とか全滅は免れたわね」
『フン。おかげでこのザマだ。我ながら情けない。この国に義理があるわけでもないのにな』
「しばらくは安静にしてることね」
大事な話を中断されてすっかりストーリー・モードに突入してしまった。この世界の謎を解くのは後回しになりそうだ。
(まあ、焦っても仕方ないか……もう慣れちゃったし。こっちの世界に)
その時、ドタバタという足音を伴って兵士が室内に飛び込んできた。そして慌しく敬礼をすると一気にまくし立てた。
「失礼致します! 只今、グスト連邦の第7師団がポスト王国内に侵入したことが確認されました!」
それを聞いて女剣士の顔色が変わる。
「なんですって!? 場所は?」
「オーウェン地方の第4南区であります」
「嘘でしょ? どうやってルーニー関所を越えてきたの?」
「そ、それがまったく侵攻の形跡がありませんで。それにこれは未確認情報なのでありますが四天王の姿を目撃したとの報告も……」
「それはマズいわね! 分かったわ! すぐにポストに戻るわ!」
そこで身体が口を挟む。
『イマイチ状況が理解できんのだが?』
女剣士は険しい顔つきで答える。
「おそらく、グスト連邦の狙いは初めからポスト王国だったんだわ」
『どういうことだ? 説明しろ』
「分かったわ。これは推測なんだけど、グスト連邦はまずジョイルスをけしかけてサイデリアに攻撃をさせたんだと思う。でも、ジョイルスの無敵艦隊が壊滅して失敗したから、そこで手の平を返してジョイルスに宣戦布告をした。国際平和を守るって大義名分のもとにね。それなら他の国も文句は言えないから」
『ああ。大方それが真相なんだろう。グストにとっては2面作戦だ。上手くいけばサイデリアを制圧、最悪でもジョイルスへの支配を完全なものに出来る』
「もともとグスト連邦はアナタの祖国にちょっかいを出してきたものね」
『グストの連中が考えそうなことだ。だが、バハムートの件はどう説明する?』
「幾らグスト連邦といえどもアレを召喚する力は無いと思うわ。それにサイデリアを支配下に置くつもりならバハムートを使ったりはしないでしょ」
『焦土と化した国を占領しても意味が無い、ということか』
「ええ。だからアレはグスト連邦の意思ではないと思うの」
『だとすると答えはひとつ』
「闇帝……グスト連邦が闇帝の支配下にあることは確実なようね」
『だな。それなら奴等がポスト王国に侵攻した理由も分かる。これは世界大戦というよりも闇帝の世界征服が本格的に始まったとみるべきだろう』
「四天王が我々ポスト王国に現れたのもそれを裏付けるわ」
『やれやれ。のんびりしている時間は……グッ!?』
ベッドから立ち上がろうとして身体の動きが止まった。腰から下に力が入らない。
〔おろ? まだダメージがあんのか?〕
女剣士がふっと笑みを浮かべる。
「アナタは安静にしてて。これは私たちの国の問題よ」
『クッ……』
「とにかく私はすぐに国に戻るわ。じゃあね」
『気をつけろ。相手は四天王だぞ』
そこで思い浮かんだのはジョイルスの無敵艦隊と交戦した時に遭遇した、あの堅いヨロイを身にまとった大男だ。
〔あいつは強烈だぞ。大丈夫なんかな?〕
女剣士は軽く手をあげて部屋から出て行こうとする。
「またピンチの時はお願いね。力を貸して頂戴!」
簡単に言ってくれる。敵がどんだけ強力なのかは未知数だというのに。
〔次から次へと忙しいなあ……やれやれ〕
ケガ人として一旦、置いていかれることになりそうだが、相手が四天王となるとやはり無関係というわけにはいかないだろう。ヒーローは遅れて現れるというのはバトル漫画のセオリーだが……果たして?
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