第4話 カウントダウン その1

太三の先導でアットくんの家に到着。2階建ての一軒家。辰俊はちょっと待ってくれ、と両ひざに手を置いて息を整えた。運動部との体力差は大きいと痛感する。


いや待てない、悠長なことを言っている場合ではない、と一蹴し、太三は門を超えて玄関へと向かった。


チャイムを押すと圧徳の母親がすぐに出てきた。まるでドアの向こうで待機していたかのように早かった。化粧をしていなくていつか会ったときよりも老けて見えた。


「どうですか、連絡とれました?」


「いいえ、まったく……」ちからのない声だった。


「そうですか。あいつが寄りそうなところをかたっぱしから当たってみます。おばさんは警察の捜索の結果を待って、それから圧徳くんに電話をし続けてください」


「面倒をかけてごめんなさい」


「いいんですよ、友達なんですから」

そう答えて太三は親指を立てた。


だせえ! 吹き出しそうになるのを辰俊はグッとこらえた。気概(きがい)はわかる。太三は熱血漢だ。しかも『超』がつくほどの。毎日、努力努力汗汗努力をしている。部員仲間でも引く者がいるという。太三は義理と人情を地で行く男だ。しかしおしい、と辰俊は思う。顔が変なのだ、男らしい男の中の男だけど、どうにもこうにもゲジゲジ眉毛と四角い鼻と輪郭に笑いがこみ上げてくるのだ。

まっすぐで裏表のない性格。本当に、おしい。


さあ行こうか、と歩き出す太三。その背中に辰俊は質問する。


「当てはあるのか?」


「あいつ……漫才師を目指していただろ?」振り返りざま答える。


「知らねえよ」


え? とした表情のまま硬直する太三。まったく動こうとしないので辰俊は先を促した。


「で、相方は誰なんだ?」


「5組の成宗(なりむね)だよ」


「あのチビが? へえ、そうか。けっこう大人しいヤツじゃなかったっけ?」


「普段はな。しかし、舞台に立つと豹変するんだ」


「なるほどね。そういうひとっているよ、うん。じゃあ、これから成宗の家に行くのか?」


「いや、あいつもアットくんを探しに出かけている。見つけたら連絡することになっているんだけど、どうやらまだのようだ」


「じゃあ、どうするんだ」


「行ってみたい場所がある。まかせろ」


そう言って太三は親指を立てた。

だせえ!

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