第9話 初めての特別授業

「ようこそおいで下さいました。勇者学園の皆様」


 門をくぐった先には勇者達が使えるようになっている机や受付のカウンターがあるギルドの風景が広がっていた。そして、ギルドへとやって来た僕達を女性のギルド職員の方が出迎えてくれた。


「お越し頂きありがとうございます。早速ですが、今回のクエストの説明をさせていただきます。こちらへどうぞ」


 出迎えてくれた職員さんに受付のカウンターへと案内される。先生が言ってた通りここでは僕たちは学生とか関係なく一勇者として扱われる。ギルド登録とかはしてないから受けるクエストが指定してあったり、出迎えぐらいはしてくれるみたいだけどそれ以外は同じ。特別待遇はないし、クエストを受ける流れも同じで、カウンターでクエストの説明を受けて、契約書にサインしていざクエストへって感じ。


「今回皆様に受けていただくのはクエストはオーク討伐です」


 僕たちが初めて受ける特別授業の内容はオーク討伐。オークは二足歩行する巨体の豚。知能はそこまで高くないけど身体能力が高く、さらに生命力も強くて、繁殖力も強い。どの種族に関係なく繁殖を行ったりして、人間だけでなく他の魔物からしても厄介な存在。


「先日、移動しているオークの群れが確認されました。そして、その群れの進路にこの町が含まれており、町としては即急にオークの群れを討伐したいと考えております」


 オークが襲来するとなるとそれはその町の存続に関わる。雑食であらゆる物を食べ、種族関係なく繁殖するオークが町に来れば、町がどうなるかなんて簡単に想像できる。それを防ぐのが今回のクエスト。


「ふん、俺様にかかればあんな豚共ぐらうっ! ぐ、ぐはっ、ぐぐっ、ハァハァ。……よ、余裕だぜ……」

「その状態でよく言えたわね」


 町の存続より自分の存続に不安があるマルク君だけど、確かにマルク君の言う通りオークはそこまで手強くはない。耐久力もあって身体能力も高いけど知能が低いぶん罠を仕掛けたり、ちゃんと立ち回れば対処は難しくない。最低レベルの勇者でも一対一で勝てるはず。


「はい。通常の群れならば皆様、いえ、この町にいる勇者でも対処は可能です。しかし、今回の群れは百を超える大きな群れであり、さらに全ての個体が一回りぐらい通常より大きな強力な群れとなっております」


 なるほど。だから、僕らに回ってきたのか。先生は特別授業は難易度の高いものしか回ってこないって言ってたのに、オーク討伐程度なんておかしいなと思ってた。でも、百を超える大きな群れであり、一体一体が強力となると少しは難易度も上がる。


「群れは明日の昼頃にこの町に到着する見込みです。どこで戦って頂いても構いませんが、町の近くで戦われると町への被害も出かねませんので、この町から少し離れた草原や森などで戦われるのがよろしいかと」


 確かに町の近くで戦うと万が一ってこともあるしね。一匹たりとも町へいれる訳にはいかないし、少し離れて何かあってもすぐリカバリー出来るようにしとくべきだよね。


「これにてクエストよ説明は終了です。では、最後にこちらの契約書にサインして頂きます」


 そう言って差し出された契約書に僕たちはみんなサインし、今日はギルドの宿で休むことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る