第6話 Sクラス校舎
「よし、次はプリント配るからな。それ各自で読んどけ。説明はしない。分からないところは無いはずだが、万が一あった場合はお前らで話し合って理解しろ」
自己紹介の後、先生らしい対応を全くしない先生から配られたプリントは今後の予定やカリキュラム、学園生活を送る上での注意事項などの新入生のためのこと書かれていた。
「こういうのって先生が説明するんじゃないんですか?」
「いいんだよ。それ全部本校用だからな。お前らには何一つ関係ない物だ。それに必要な説明はこれからしてやる」
あ、これ本校用なんだ。って言うか、本当に本校とここは別物になってるんだ。隔離、いや、特別待遇ってすごーい。
「お前らにする説明はここSクラス校舎と、これからの生活についてだ。知っての通りお前らにはこれからここで共同生活を送ってもらう」
へー。共同生活かあ。……共同生活!?
「ここは校舎であり、寮でもある。あとで実際に見にいくが、一階にはこの様な教室がある。二階には風呂や食堂などの共有スペース。三階にお前らの個室と俺の部屋兼職員室。ざっとこんな感じだ」
ここに住むの!? 確かに、寮生活になるってサタンから聞いてたけど、普通寮と校舎は別なんじゃないの? あっ、でも移動しなくていいのはいいかも。朝三階で起きて、二階でご飯食べて、一階に登校。登校がすごく楽なのはいい。一緒に住む人がまともだったら。
「俺はルールや門限を決めるつもりはない。決めたところで守りそうにねえからな。じゃあ、実際に見にいくぞ」
その後教室を出て、一階の説明を受けた。一階にはさっきまでいたメインの教室の他に、様々な専門的な物がある教室などがいくつかあった。この一階部分は全部勉強のための部屋になっていた。
「ここが風呂な。いつでも湧いてるから好きな時に入れ」
二階に上がってまずお風呂の説明を受けた。お風呂は男湯と女湯があって、どちらも中々広い脱衣所に湯船があった。五人しかいないのに広い。ゴードン君もゆったり入れるくらいに。
「次にここが食堂。前が調理場。後ろが食卓だ」
次に案内されたのは食堂、と言うより家庭科室。コンロと水道が一緒についていて、下には収納やオーブンがついた長方形の机が数個とでっかい冷蔵庫が部屋の前の方にあった。部屋の奥には数段高くなったところに床に草か何かを編み込んだ物が敷いてあり、先生曰く靴を脱いで座るんだそう。畳とかいうらしい。その畳の上には丸い大きな円状の低い机があり、前の調理スペースで作ってここで食べるらしい。
「朝はパンなどが送られてくる。昼は弁当が。夜は何も来ない。だから、自分作れよ。朝も昼も作りたきゃ自由に作れ。食材はあの冷蔵庫に欲しいものを打ち込めばすぐに送られてくる。パンと弁当はこっちのカゴに授業がある日は来る。休みはこない」
まさかの朝と昼のみデリバリー。朝と昼は時間がなくて忙しいからデリバリーだけど、暇な夜は自分で作れと。普通寮って三食作ってくれるんじゃないの? 休みは全部自分でどうにかしろと?
「よし! ルシェ君ちょっと待っててね! 今すぐおいしいハンバーグ作ってあげるから!」
ああ、そう言えばそんなことも言ってたなあ。でも、今はまだ説明だけど授業中だよ。後にしてね。
「おい、俺の分も頼む」
「先生! そこは注意して下さい!」
なんで自分の分も頼んでんの!? そこは授業中なんだから後にしろとかでしょ!
「いいじゃねえか。丁度昼だしな。少し早めのランチで、昼からハンバーグなんて豪勢でいいだろ」
「お弁当は!? お弁当送られてくるんじゃないんですか?」
「最悪捨てればいい」
「食べ物を粗末にしない!」
生徒は先生を見本にしてるんですよ! その先生がダメな方向に行ったら生徒みんなもそっち行っちゃうんですよ! 先生しっかりして下さい!
「冗談だ。冷蔵庫があるんだからそこに入れといて夜食べればいいだろ」
「それはそうですけど。じゃなくて、今授業じゃないですか!」
「ああ? じゃあ、授業終わり。昼飯タイムな」
「雑い!」
先生はもう靴脱ぎかけてるし、ミーティアさんは冷蔵庫で食材を申請してるし、マルク君に至ってはもう畳の上に寝転がってるし。違った。倒れてるだけだった。ちょっと、畳血で汚さないでよ。
「……師範殿」
各々好き勝手にして収拾がつかない時、それまで黙っていたゴードン君が口を開いた。
「昼飯にするより先に全部やるべきことを済ませてしまう方がいいのでは?」
「ああ? ああ……、まあ、めんどくせえことは先にやった方がマシか。よし、ランチは後だ。面倒だが先に全部終わらせるとするか」
おお、すごいなゴードン君。好き勝手やってた三人を見事にまとめた。さすが、Sクラス唯一のまともな人。頼りになるなあ。でも、今まで黙ってたゴードン君が突然口を開くとびっくりするよね。威圧感もあるし。先生も若干ビビってたし。
ゴードン君のおかげで説明は再開し、家庭科室もとい食堂を出た後、洗濯場や図書館などの二階部分の説明を受け、最上階の三階へと上がる。
三階に上がると、そこは校舎じゃなくて泊まるような場所、まさに寮って感じだった。この階だけ今までの教室の横に引く扉と違い、ドアノブを回して押して開けるタイプの扉になっていて、少し雰囲気がちがっていた。
「三階はお前らの個室だ。ここにある各自の部屋で生活してもらう」
いくつかの扉があって、その扉の前には名前が書いたプレートが貼ってあった。その中から自分のプレートがあった扉を開け、中を見てみると一人には広すぎるぐらいの立派な部屋だった。
「ベット、机、椅子は学園の備品だから壊すなよ。壊したら弁償な。トイレにシャワーもついてる。下の風呂場が嫌なら自分の部屋で済ませろ」
部屋の中にトイレにシャワーまで。すごく快適なワンルーム。ベットに机に椅子が置いてあるけど、まだ広さあるし。
「だいたいこれでここの説明は終わりだ。いいか。汚さない、傷つけない、壊さないの三か条は守って生活しろ。それ以外は許す。よし、説明終わり。飯だ」
雑ながらもこれから過ごすことになる校舎兼寮の説明を受けた。ここは意外と充実してて、ルールも何も無いから過ごすのは快適かもしれない。一緒に住む人たちさえまともなら。
説明の後、再び食堂へ戻り、ミーティアさんの作ったハンバーグを食べた。大きすぎて食べきれなくて、先生によく人のこと言えたななんて言われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます