第16話 贖罪
「おー、集まってんな。お前ら」
特別授業二回目も無事終え、二日間の休みを満喫しようと思ってた休み一日目の朝、僕たちは先生に呼び出され教室に集まっていた。前もこんなことあったし嫌な予感しかしない。
「今日は休みなのに何なのよ。せっかくルシェ君を一日中見てようと思ってたのに台無しじゃない」
「うるせえ、ごちゃごちゃ言うな。それにそれはいつもやってるし、今も出来るだろ」
「分かってないわね。休日ってことで無防備になってるオフのルシェ君を見たいのよ。そりゃ、今もいいけど、もっと無防備で、あんなことやこんなことをしてるルシェ君を……!」
休みに呼び出されてムカついてるのは同意するけど、他は同意出来ないな。でも、今日一日部屋の中にいるつもりだったのにどうやって見るつもりだったんだろう。……帰ったら部屋の中を色々確認しよう。
「あー、はいはい。それは勝手にやってろ。それより、喜べお前ら。贖罪のチャンスを得たぞ」
「? 贖罪のチャンスって、何か罪を犯すようなことしたっけ?」
そんなを罪を犯すことなんてしてないはずなんだけどなぁ。あっ、もしかして、イフちゃんが大地を燃やしちゃったことかな? あれでなんか言われたのかな? でも、それはイフちゃん、ひいてはミーティアさんの責任だからミーティアさんに責任取ってもらって退学してもらえば済むんじゃないかな。ねえ?
「しただろうが。ほら、あれだ、ドラゴン誘拐」
「ドラゴン誘拐? ……あれって先生が勝手にやったことじゃないですか!」
初めての特別授業の時、授業が終わった後、学園に帰らず遊んでたら先生が怒ってやっちゃったドラゴン誘拐。それを僕達が今日みたいに呼び出されて捕まえてきた。でも、誘拐したのは先生なんだから一緒にしないで欲しい。
「先生が勝手にやったことで、それの尻拭いを僕達がやったんじゃないですか! 僕達何も悪くないじゃないですか!」
先生が勝手にやって、僕達が尻拭い。僕達の罰のためとか言ってたけど、やったのは先生なんだから悪いのは先生だけのはず。それに、ちゃんと無傷で連れてきたし。誘拐犯から救出したんだから、むしろ、褒められるべきだよ。
「何言ってんだ。俺が連れてきたのをお前らが連れ去ったんだろ。言い換えれば俺が誘拐してきたのをお前らが更に誘拐した。ほら、お前らも立派な誘拐犯だ」
「曲解過ぎる!」
「知るか。お前らは俺と同罪だ。だから、罪を償わないといけない」
「理不尽すぎる! それに先生が僕達に連れて来いって指示したんじゃないですか!」
僕達は先生が書いた看板に従って連れ戻しきたんだから、罪を犯すようなことはしていないはず! 全ては先生が悪い!
「それなら、お前らは誘拐犯の指示に従ったってことだから共犯になるな」
「うぐっ!」
た、確かに、先生の言う通りそういう事にもなる。でも、全然納得いかない! 僕達は騙されたんだ! だから、悪いのは先生だ! でも、多分この言い分は無意味だ!
「分かったか? そういうわけだ。お前らはちゃんと罪を償え。俺はもう償った。次はお前らだ」
「うー、納得いかない……」
「納得しろ。
学園長の指示ならしかたないか……。先生の指示だったら嫌だけど。それに先生はあんなこと言ってるけど、担任してくる人はいるはず。だって、別に変なクラスじゃないもん。ちょっと、ドMなのと、ナルシなのと、己の正義が変なのと、魔王がいるだけだし。……嫌か。
「主人によく従う犬は餌を多く貰える。逆なら、餌を貰えず死ぬか、捨てられるだけだ。お前らも死にたくなければ、大人しく従え。この担任様にな」
なんて理不尽で最低な担任様なんだろう。でも、こんな人が居なくなると僕達が困るのも多分事実。納得出来ないけど、するしかないのか。
「犬……、餌……、首輪……!」
「首輪は言ってねえぞ、ゴードン」
ゴードン君はいつでも楽しそうでいいよね。僕達の罪まで被ってくれないかな?
「とにかく。お前らは黙って贖罪してこい。内容は未確認と思われる猿みたいな魔物を捕獲してこい」
「なんか曖昧な感じが……」
「しゃあねえだろ。本当に居るかも分からねえんだから」
「え?」
「なんか年老いた金持ちのジジィがそう騒いでんだと。無視する訳にもいかねえし誰かが行かないといけねえ。だが、そんなわけ分からねえことに付き合ってくれる勇者は居なくてな。で、暇なお前らに来たわけだ」
「ええ……」
これ金持ちの道楽に付き合わせるってこと? 面倒くさいなあ。
「まあ、最悪そこの二人を珍種の猿として差し出せばいいから、気楽に行ってこい」
「フウ! 儂人間扱いされておらん!」
「それでいいんだ……」
ゴードンとマルク君差し出すだけでいいんだ。じゃあ、今すぐにでも差し出したいなあ。
「ほら、とっとと行ってこい。行かねえと退学なんだからな」
先生に促され、しぶしぶ教室を出て、転移門のある教室に向かった。ゲートを潜る前に「冤罪……」って先生が呟いてたのが聞こえた。
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