10/3 PM3:00~
なかなかにネットでの情報ってのは断片的に抜けていることが多く、背中に手が届かない状況でどうにも歯痒い状態である。
彼にメールを送った私は携帯電話を使って道端でネット検索していたが、このままでは通信量が制限量に達してしまうことを恐れ、ネットカフェに行くことにした。残念なことに家にパソコンはない。大学でPCのWordを使ったレポート提出もあるが、現状大学構内のPCルームで事足りているため買う必要はなかった。
ネットカフェは週末ということもあってか、多少の込み具合ではあったが、店に入ったときはなんなく入ることができた。
――1度ドリンクバーでもやってくるか。
入ってから黙々と調べていたため店の入口近くにあるドリンクバーの飲み物に手を付けていなかった。ゆっくりと腰を上げて個室ブースのドアを開け外に出ると、大柄な男性が隣のブースから同じように出てきた。視線があったので軽く頭を下げる。すると男性もこちらに頭を下げ、そのまま店の奥に入っていった。
私はドリンクバーの前に行くと、何を飲むか少し考えたが無難にお茶を選ぶ。ここで友人と来るとミックスドリンクを作って少しはしゃぐのかもしれないが、友人という存在がいない以上試しようがない。
大学に入ってからは友人はできていない、高校時代…………はどうだったろうか。今と同じで1人寂しく過ごしていたような気がする。どうやら私は記憶力が乏しいようだ、数年前のことすら思い出せない、私の脳はおじいちゃんのようにしわしわになっているようだ。
こぼれない程度に注がれたグラスを持ってブースに戻ると、先ほど男性が出てきたブースに小柄な男性が入っていく。
――友人と一緒に来ていたのか。
少し羨ましく思ってしまう。家族や友人と私も来てみたいものだ。彼を呼べば、疑似体験できるのだろうか、いや彼は静かな空間で何かをするような人間ではないから無理だろう。
――先生の近況でも餌にして近藤さんでも呼んでみようか、静かにしないといけない時点で無理か。
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痛くなった目をそっと瞑り、ゆっくりと息を吐く。ネットしか手段を持たない私はネットに頼りすぎた結果、重要な情報を得ることはできず、代わりに疲労感を得ることができた。
2時間以上のネットサーフィングによって得たのは先生から聞かされていない目撃情報と先生が言っていたことの裏を取ることくらいだった。
目撃情報があったんだから写真の1つや2つ出てくると踏んでいたが、オートフォーカス機能が働かずピンボケしていて笑われるから出したくない、そういった理由でネットに証拠写真は何一つなかった。不思議なところは写真を撮った人間みんながピンボケしているという理由だったが、ネットのことだから、大半は実際に撮ってなかったり、そもそも目撃情報が嘘だったりするのだろう。
結局のところ、ここに来る前と後で変わったことは目撃情報の場所が少しわかったくらいだ。
――しょうがない、明日は目撃情報のあった場所でしばらく様子を見てみるか。
私はゆっくりと立ち上がり、疲れ切った目を擦りながらブースのドアを開けて出た。
「あっ」
目を擦っていたため前が見えていなかったため、人とぶつかってしまった。
「すっ、すみません! 」
「いえ、大丈夫ですから」
慌てて頭を下げると、相手は困ったように返した。頭を上げてよく相手を見ると女の子だった。彼女は軽く頭を下げると、隣のブースに入っていった。
――黒髪ロングの女子高生か。週末にネットカフェで制服を着た女の子とはまた珍しいな。
次はしっかりと気を付けないと、心の中で反省しながら私は出口に向かった。
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