七、魔王の産声


 掲示板666のログより――


 今週は何処いずこを侵略なさいましょう?


 そのレスを最初に見たのは、いつ頃だっただろうか?

 初めはただの冷やかしかと思っていた。

 あおってる連中と同じで不満のはけ口にでもしてるんだろうと。

 だが、それから少しずつ共感する者が増えて、いつの間にか眷属けんぞくを名乗る者が100人を超えていた。

 ここまで来ると、半信半疑だった自分の心が氷解されていくように、少しずつ、少しずつ、信じても良いのだろうかという思いが芽生え始めていた。


 いや、すまないと思っている。


 ここまでついて来てくれたことに感謝すると共に、諸君に詫びたいと思う。

 どんな思惑があってレスを返してくれてたかなど、小さい事を気にしていた自分が恥ずかしい。

 ただ、今は『魔王』として諸君と共に世界を変えていこうではないか!


 そして、トコ=ヨミックが名の元に、生けとし生けるもの全てを終焉へと導くのだ。


 魔王より――



 daemon72さんのレス

 おお、我らが王よ、なんと勿体無きお言葉。

 全幅の信頼をいただけたこと、大変痛み入りまする。

 お言葉、しかと心に刻みました。


 eble108さんのレス

 トコ=ヨミック!

 まさに魔王に相応しき立派な御名みなでございまするな。

 我ら、終焉までお供いたしまする。


 agares31さんのレス

 そのお言葉、お待ち申し上げておりました。

 今こそ、愚かな人間どもに思い知らせてやりましょう!


 yahnugfulltessさんのレス

 そんなところにいたんですね。

 随分探しましたぞ、我が王メアロード様。

 まず手始めに、このネイオス……終焉を迎え入れましょうか。


 marelord777さんのレス

 よく見つけた、ニグフルティス。

 これで準備は整った。

 我が眷属達よ、今こそ盟約の元に



 そのやり取りをが目にしたのは、鳥人間騒ぎがあった日の翌日のことであった。


 だからだろうか、その日に起った悲劇を、あたしは止めることができなかった。

 あたしが自室で『術式』を組み込んでいるその間、掲示板に書き込んだ生徒達が意識不明の重体で病院に運ばれていたことすら、知らずにいたのだから……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る